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40.大樹side

 姉の娘が警察に保護されたと連絡があった。


 違法賭博の一斉捜査。

 その賭博場は売春と薬物売買も手広くやってたらしい。

 不良や家出少女がターゲットにされて薬で逃げられないようにしてから売春させていたそうだ。


 姪もその被害者の一人だった。

 警察病院のベッドで眠る姪はやせ細りボロボロだった。

 殴られたのか、顔が晴れ上がり、手当の跡がある。


「大樹!美咲が!!」


 病院で子供のように泣きわめく姉。数年ぶりに見た姉は昔とちっとも変わらない。


「美咲!大樹よ!」


 姉が姪を揺らす。

 子供の様に泣く姉と反応しない姪。


「美咲!!わああああああああああ!!!!」


 泣きわめく姉を、父が止める。


「止めなさい!」


「だって!」


「とにかく落ち着くんだ。美咲の事は私と大樹が見ているから、陽向は一度家に戻ってなさい」


「でも!」


「いいから、戻るんだ」


 父に説得され、泣く泣く病室を出て行く姉。

 待機していた弟達と共に姉は病院を出て行った。


「父さん……あの人は?」


「晃司君なら来ないよ。これないといった方が正しいな」


「鈴木グループの件だろ?」


「ああ。詳しくは話してくれないが大変らしい」


「そうか……」


 因果応報という奴だろう。

 悪さをすれば必ず自分に返ってくる。


 奥さんのいる男を好きになった姉。

 姉は奥さんから旦那を奪って結婚している。他人の不幸の上で成り立っていた幸せ。そんなものが何時までも続くわけがない。


 自業自得だ。


 俺は姉を昔のように『ねえちゃん』と呼ぶことができないでいる。


 憔悴している父は今どんな気持ちなんだろう。

 あの時、姉の結婚に反対すれば良かったと後悔しているのだろうか?


 結局のところ、悪いのは姉夫婦だけじゃない。

 見てみぬフリをした周りにも責任はある。



 父も姉夫婦の件に関しては目を瞑り、不倫関係だった過去を聞かなかった事にしたらしい。


 姉の幸せのために。


 そんな父に反発した俺は家を出た。


 姉に同情はしない。

 自業自得だ。


 それでも不幸を望んではいなかった。


 目覚めない姪。

 点滴を受けてベッドに横たわる姪の姿に俺は思わず目を逸らしてしまった。





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