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37.美咲side

 母の一番は父だ。

 それは昔から変わらない。

 他の何よりも夫である鈴木晃司を第一に優先して愛する。たとえ、実の娘が困っていようと泣いていようと関係ない。風邪で寝込んでいても父が帰ってきたら娘の対応なんておざなりだった。

 私は父から可愛がられた記憶なんて無い。

 ただ、父が時々淀んだ目で私を見るのがとても嫌だった。それは父方の祖父も同じ。子供の頃はどうしてそんな目をするのか分からなかった。


 成長するにつれて祖父と父が何故あんな目を向けてくるのか段々わかった。


 私は両親にちっとも似ていない。

 なら祖父母に似ているのかというとそうでもなかった。


 疑われてるんだ。

 私は父の子じゃないのかもしれない。

 漠然とそんなことを考えるようになっていた。


 家に居ても落ち着かない。

 学校も同じ。


 イライラして。

 ムカムカして。

 モヤモヤして。


 ある日、どんくさい同級生にぶつかった。

 ちょっとした意地悪だった。見ていてイライラしたから。いつも俯いて暗い顔をしているのが気に食わなかったから。ただそれだけ。でも何だかソレをしたらスッキリした。そう。私はスッキリしたんだ。

 それから苛つく度にその子を虐めた。


 最初はちょっとしたイタズラ。

 でも段々とエスカレートしていって。

 気付けば私以外の子達も同じようにその子を虐めてた。別に暴力は振るってない。物を隠したり、悪口を言ったり、無視したり。皆に隠れてこっそりと。

 そうする度に少しずつ少しずつ溜飲が下がっていったから。


 なのに、その子はいつの間にか転校していた。


 一身上の都合で、なんて説明が担任からあった。



『逃げたんじゃない?』


『え~~っ。それ大丈夫なの?あたしたちの事、あの子、親にチクったんじゃない?』


『いいじゃん。別に。教師にチクられるよりマシだって』


『そりゃそうだけど……』


 その話を他人事みたいに聞いていた。


 別にどうでもいい。ただ、イライラが増えた。

 モヤモヤする。

 モヤモヤしてイライラしてムカムカする日々が続いた。


 そんなある日、友達の一人が彼氏に振られたって騒いでた。

 面白そうだから詳しく聞いてみたら、彼氏は他に好きな子がいるらしくてそれを理由に振られたみたい。へー。あんなにベッタリだったのに意外な理由だと感じた。


 それが一変したのは文化祭の時。


 ミス・コンテスト。

 その舞台で彼女が優勝した。

 私は準優勝。


 ムカつく――――


 調子に乗ってる。

 心の中で黒い感情が渦巻いて、次第に大きくなっていった。

 一言文句を言ってやろうと思って放課後の体育館裏に呼び出した。


 私が呼び出したのに。

 私がきてあげたのに。


 そこで彼女は告白されているのを見た。相手は学年一のイケメン。


 へー。そんな奴から告白されるんだ。

 ムカムカする。苛つく。モヤモヤする。


 ムカつくムカつくムカつく!


 気付いたら友達に愚痴ってた。

 そうしたら彼女は虐めの対象になってた。



 前の子より結構酷かったと思う。

 まあ、指示を出したのは私だけどね。

 指示と言っても「こうなってくれたらいいな」とか「ああなればいいのに」とか漠然としたモノだけ。

 正直、何もしなくてもあの子は虐められていたと思う。だって、大半の女子から嫌われていたから。


 もっとも、彼女も半年後くらいに転校していった。


 転校する前に何週間も不登校になってたけど。


 彼女が転校してから噂がかなり飛び交った。


 虐められていたという噂じゃない。なんでも彼女が暴行されたとか何とか。

 何人もの男子に襲われて妊娠したんじゃないかって。

 襲った男子達は彼女に手酷く振られた生徒じゃないかって。

 噂は更に尾ひれがついて彼女が中絶したとかいう話にもなってた。真偽の程は分からないけど。


 どうでもいい。


 その後も虐めのターゲットはコロコロと変わった。



 虐めの終焉を迎えたのは私達が訴えられた時だった。




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