表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/130

20.浅田理事長side

「お嬢さんのお話は大変参考になったわ」


 え?!

 アレが参考になったのか?

 どう聞いても惚気以外の何物でもなかった。

 それとも大場夫人にとっては違ったと?何かを感じたのか?母親の勘とかで?


「じゃあ!私達の仲を認めてくれるんですね!!」


「認める以前の問題だわ」


「え……?」


「ああ、勘違いしないでね。私は、()()()()()()()()()()()()()()を反対している訳じゃないの。結婚したいのならすれば良いと思うわ。勿論、お嬢さんが()()()()()()()()()を産みたいと望むのならそうすればいいわ。でもね、残念ながらお嬢さんが言う“大場家の息子”に“久志”という名前の男の子はいないの」


「…………は?」


「だから、お嬢さんが“大場家の嫡男の嫁”にはなれないわ」


「な、なにいってるの……おばさん?変なこと言って……()()()()()()がいるのよ?ここに……。おかしな事を言って煙に巻こうっている気?そんなことしたって……」


()()()?」


「そうよ!」


「ふふっ」


「何がおかしいの!!」



 妙だ。

 夫人の言い回し。

 ()()()()()()()を廃嫡する気か?

 それとも絶縁した後なのか?だから本人がこの場にいない……と?



「だって、おかしいんですもの」


「何がおかしいって言うのよ?」


「お嬢さんはさっきから『私の孫がお腹にいる』と言うんですもの」


「実際、いるの」


「あらあら。それじゃあ、お嬢さんは犯罪者ね」


「なんですって!!?」


「だって、“私の孫”ならお嬢さんは()()()()()()()()、という事になるわ。それは“私の息子”に性的虐待したということ。つまり犯罪者になるの。お分かり?」


「…………な、なに……いって……」


「“私の長男”は今年4歳。お嬢さんのお腹の中の子供の父親が“私の長男”なら私は今すぐ警察に通報しなければならないわ。でも、どうやら別人のようね。それにしても不思議なものだわ。だってそうでしょう?“私の夫”の母校から()()()いる筈のない“高校生の息子”の事で速達状が届いたんですもの。それも保護者宛てとご丁寧に書かれていたわ。不思議ねぇ。二人いる息子の一人(長男)は幼稚園児でもう一人(次男)はまだ幼稚園にも通っていない二歳。上の子(長男)は夫の母校ではない、別の幼稚園に通わせているのに。私、最初は新手の詐欺かと思ってしまったわ。でもね、学校に問い合わせたところ、『大場家の御子息で間違いございません』と返答されたのよ。本当に何を言っているのかと困ってしまったわ」



 にこやかに笑いながら言う大場夫人に大人たちは絶句する他ない。

 夫人の言葉が本当なら我が校に在籍している“大場家の嫡男は偽物”という事になる。校長も二の句が継げぬ有り様だ。どういうことだ?大場久志は間違いなく在籍していて、大場家の息子だ。保護者の欄にも大場の名前があるし……まさか……あいつ……。


 俺は咄嗟に保護者用の欄を確認する。

 名前の記載は、大場宗久。

 間違いなく大場の奴だ。

 だが父親の欄だけにしか記載がない。つまり母親の欄は空白……偶々か?

 いや、そんな筈はない。だが学園の保護者欄の記載は必ずしも両親を書く必要はない。片方だけで十分だという暗黙の了解がまかり通っている。だから学園側は基本父親の記入されているのを確認した時点で「問題はない」という見解になる。母親は空白でも特に気にしない。だがこれは……。この場合果たして「問題ない」といえるのか?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ