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5.プロポーズ

「僕と結婚して欲しい」


 彼からプロポーズされた時、私は小刻みに震えました。それは嬉しさと恐れからくるものでした。


「私はシオンさんよりも7歳も年上ですよ?」


「歳なんて関係ありませんよ。桃子さんはいつまでも若々しくお綺麗だ」


「私は……私には子供を産むことも出来ませんわ」


「夫婦生活に子供は絶対に必要、という訳ではないでしょう」


「そ、それはそうですが……」


「子供がいる事だけが愛の形でもない。夫婦二人っきりで生活しているご夫婦も近年は増えていますからね」


 シオンさんは冷静に言ってくださいました。


「僕が貴女を妻にしたいんです。一緒に人生を歩んでほしい」


 彼の言葉に私は何も言えませんでした。何も言う必要がないと思えたのです。彼は私を必要としてくれる。私が何よりも欲しかった言葉を言ってくださったのですから。

 なにより、彼となら穏やかな夫婦生活を送れると思ったのです。

 私は覚悟を決めるよりも先に悟ったのかもしれません。「この人と結婚したら、幸せになれる」と――――


 こうして私は彼のプロポーズを受け入れたのです。

 私達の結婚を家族や友人達は祝福してくださいました。篤子は我がことのように喜んでいましたわ。


 結婚後、直ぐに妊娠した時は衝撃的でした。

 子供は諦めていましたから。


「おめでとうございます。可愛い女の子ですよ」と看護婦さんからは嬉しそうに告げられ、夫は私以上に喜んでくれました。


 長女の出産後、再び妊娠したのです。

 私は三人の子宝に恵まれました。

 愛する夫と可愛い子供達に囲まれ、私は幸せを肌で感じていました。




 そう、今この瞬間でも――――





 

 目の前で元夫が顔色を酷くして私を見つめていますわ。

 ええ、驚き絶句しているのでしょう。分かりますわ。散々、私を「石女」と呼んで蔑んでいましたものね。その私に三人の子供が存在する事自体、彼にとってありえない現実なのでしょう。ですが、残念ながらこれは現実です。貴男との間に子供ができなかった原因は私にはありませんでした。娘を妊娠できたことを奇跡だと思っていましたが、そのすぐ後にきちんと調べましたわ。

 私には何の問題も無かった事を。

 つまり、不妊の原因は貴男だったという事を。




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― 新着の感想 ―
[一言] ちょっと時代設定が分からないというか…… 一昔前なら不妊を全部妻のせいにすることはあったでしょうけど、今時そうなるかな? 妻の実家の方が格上なのに石女呼ばわりするなら、両方調べた上じゃないと…
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