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33.晃司side

 なんだ?

 気のせいか?

 最近、秘書の俺への風当たりが厳しいように感じる。


 何なんだ?

 仕事がやりにくいにも程がある。

 だが、勤務態度は完璧だ。淡々と仕事をこなしていく。なのに俺を見る目が以前と全く違う。何と言うか……フォローがないというか……気遣いがなくなったというか……。どうもやりにくい。まあ、会社がこんな時だからな。彼女も余裕がないんだろう。



 中小企業の鈴木グループ離れは痛手だった。

 あれだけ良くしてやったと言うのに!何が不満なんだ!?恩知らず共が!!



 最近、イライラが収まらない。

 回らない仕事。

 離れていく企業達。

 子会社の連中が煩い。

 クレームが増えたとの報告がひっきりなしにくる。


 疲労の回復も遅くなった。




「鈴木様、申し訳ございません。こちらのクレジットカードはお使いできないようになっております」


「使えない?機械の故障か?」


「いいえ、クレジットカードに問題がございます」


「問題だと!?」


「はい。鈴木様のクレジットカードは使用停止となっています」


「……はあ?」


「使用停止です。大変申し訳ございませんが、対処していただけますでしょうか?」


 何だ?これは!?一体何なんだ!?なぜこんな事に!?クレジットカードを止めた覚えはない……じゃあ、一体何故!?……まさか父親達か?くそっ!

 抗議の意味を込めてアポを取らずに実家に戻ると、待っていたのは意外な事実だった。





「漸く帰って来たか。この馬鹿息子が」


「お、お父さん……これは一体……」


「見て分からんか?」


「いえ……」


 どう答えていいのか分からない。

 ここは本当に自分が生まれ育った家なのだろうか?庭は雑草で生え放題。手入れを全くしていない状態は酷い。自宅の筈なのにまるで幽霊でも出たような荒れた有様になっていた。


 それだけじゃない。

 なんだこれは?

 使用人が一人もいない。

 家具も全くない殺風景な状態になっていたのである。



「これは一体どういうことですか?お父さん」


「どうもこうもない。誰のせいでこうなったと思っている」


「え?」


「晃司、我々は鈴木グループの経営から退くことになった。もうグループはない。使用人達には退職金と共に暇を出した。この屋敷も抵当に入ったので全て処分する事になった」


「……は!?」


 今なんと言った?父は何を言ってるんだ!?訳がわからない。


「どういう事ですか!?会社を辞めたと言うのですか?」


「辞めたのではない。退陣させられたのだ」


「嘘だ!あり得ない!!」



 父が退陣!?

 馬鹿な!!



「株主総会で満場一致で退陣が決まった。お前の……お前があんな女と結婚したばかりにこのザマだ」


「ちょっと待ってください!一体どういう事なんですか!?」


「言葉通りだ。私を含め、鈴木家の人間は全員退任し会社から身を引く事になったんだ」


「そ、そんな!」


「お前があんな女と結婚したばかりに今まで付き合いのあった家からも苦情が相次いでいる。今後は一切の付き合いを断られた。社交界でも居ないものとして扱われ、雑誌ではスキャンダルの内容ばかりだ。株価も著しく下がっている。このまま創業者一族に居座られると倒産するしか道はなくなる、と筆頭株主に言われた。次期会長が醜聞まみれの嫡男では会社のイメージに悪いとも言われてな。ははっ。その通りだ。信用できない会社と誰が一緒に仕事をしたいと思うものか!いつ裏切られるか分かったものじゃない、とまで言われた。反論すらできない事実だな」


「なっ!?」


「お前のせいで鈴木グループは何百億という損失をだした」


「なら取り返せばいいだけの話です!」


「出来もしない事を口にするな!!!」


 父の激昂に思わず口を噤む。


「た、大変申し訳ございません!!」


 会社を任された自分は社長の自覚があると思っていたのに!父から罵倒されて体が震えた。いつ以来だろう?鈴木家の誰もが自分に意見する事すら怯えるようになったというのに……父だけには何時までも頭が上がらない。だが何故こんなに威嚇されるのか理解できなかった。いや……本当は解っている。それでも理解する事を脳が拒否しているのだ。


 



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