17.離婚後1
元夫――鈴木晃司様が再婚したそうです。
結婚式は殆ど身内ばかり。一般家庭出身のお相手に配慮した形で行われたせいではないかと噂されています。それと同時にお相手が既に『おめでた』だから急いだのではないかとも囁かれていました。
女性の方から結婚を早めるように催促したのではないか、鈴木グループの御曹司は女狐に良いように転がされている――とも噂されています。自ら醜聞を広めるなど悪手でしかありません。
「スピード結婚が、スピード離婚にならないと良いがね」
「まぁ、お兄様ったら。お口の悪い」
「本当の事だろう?」
「お相手の女性をそこまで想っていたという事ではありませんの?」
「不倫相手の女性か。あまりいい噂は聞かないな」
「あらあら。お調べになりましたの?」
「当然だろう?」
「それで?どうでしたの?」
「まぁ――。評判通りの女性だよ、ある意味ね」
「うふふ」
お兄様は、相手の女性に嫌悪感を抱いている御様子。ですが、私としては楽しみなのです。
あの元夫が再婚したという事を。
鈴木グループの会長夫妻は経営者としては優秀ですが一人息子には甘いのです。何だかんだと、息子のワガママを許してしまう程に。それが例え非難される行為だと理解していても――
彼らのその後を想像をするのが最近の楽しみの一つとなってしまいましたわ。
元夫と不倫相手である女性は一体、どんな生活を送っているんでしょうね?
「それはそうと……桃子。それは何だい?」
「まあ!お兄様。見て分かりませんか。旅行鞄ですわ」
「いや……それは分かるが……」
「私、暫く日本を離れようと思いますの」
「なに!?」
「この事をヨーロッパにいる友人達に話したところ、とても怒っていましたわ。私を気遣ってくださって、気分転換に遊びにいらっしゃい、と誘ってくださったのです。有難い事ですわ。ですから、私、暫く友人達の元に行ってきますわ」
「…………聞いていないぞ」
「今、言いましたから」
その後、お兄様から『報・連・相』の大切さを懇切丁寧に教えられました。酷いですわ。私、何も黙って旅行に行くわけじゃありませんのよ?ちゃんと、お母様の許可は取っていますのに。本当に失礼ですわ。何も今すぐに出発する訳ではありません。まだ日はあるのです。全く、もう!




