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14.過去に別れを告げて

 数年後。



 久しぶりに日本に戻ってきました。

 これからは日本で生活をする予定です。


 私たち家族が乗っている車は懐かしい場所を走り抜けています。

 懐かしいといってもそれは私だけなのですが。


 それに今生では「懐かしい場所」ではありませんしね。

「そこ」はかつて鈴木家の本邸宅でした。

 本邸はあの騒動で跡形もなくなりましたから、今はただの駐車場となっています。


 鈴木家が保有していた土地屋敷は今では別の企業の所有物になっています。

 そのまま使用するのかと思っていましたがどうやら取り壊して新しい施設を建てるそうです。


 ある企業などは顧問弁護士から取り壊しを推奨されたからという理由で、建物を取り壊したそうです。

 なんでも「縁起が悪い」と言われたらしいです。

 あんな事件が起きた場所ですからね。

 縁起の悪い物件であることは事実だと思います。


 そういえば前の時も、取り壊していたことを思い出しました。


 今、鈴木家の人達がどうしているのか全くわかりません。興味もありませんし、知りたくもありません。

 社交界にも噂は聞こえてきませんから、一家離散ということもあるかもしれませんね。

 関係のないことですが。


 通り過ぎる景色に心の中で別れを告げると、私は新しい生活へと踏み出したのです。


『離婚してくれ』


 二度目に言われた時に一度目と違い冷静だった理由をなんとなく理解しました。

 私の彼への愛は一度目で枯れ果ててしまっていたのだと。


 もしも、四度目があればその時は――――



「被害者がでる前に潰してさしあげます」




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