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13.とある弁護士side

 クズ野郎はだんまりを決め込んで、そのまま帰らせた。これ以上話をする価値もない。


 自分の息子に芽がないと切り捨てようとした。

 その息子の代わりに私の甥を寄こせと言いたかったのだろう。


「一度捨てたものを拾い上げるには時間が経ちすぎている」


 結局、謝罪一つしなかった。


「あの男は本当にどうしようもない奴だな。……だが、一つだけ感謝するよ。お前が妹を捨ててくれたお陰で、妹は幸せになったんだからな」


 もしも、あの男と妹がそのまま結婚したところで妹は幸せにはなれなかっただろう。

 私も義兄弟になったのが、あの男ではなく、妹の夫でよかったと思う。


 あの男は妹が亡くなっていることを知らなかった。

 甥が学生の頃に病気で亡くなった。

 短い一生だったが、妹は最後の瞬間まで笑って過ごした。



 あの時は、妹をスキャンダルの渦中に巻き込むことを恐れて泣き寝入りするしかなかった。

 鈴木家はあれから急速に大きく成長した。そのぶん、周囲に傲慢な態度を取り続けて反感を買っていたがな。

 評判の良くない家として秘かに噂されていた。鈴木家は知らないだろうがな。


 今回のことがなくても遅かれ早かれ潰れていたことだろう。


 数十年かけて種をまき続けたきた甲斐があったというものだ。


 鈴木家のやり方を徹底的に調べ尽くした。

 親族が犯罪すれすれの行為を行っていたことも含めて、すべて把握済みだ。


 鈴木家の犠牲になった者。

 鈴木家に利用され捨てられた者。

 鈴木家に騙された者。


 被害者の数など計り知れないほどだ。


 それは法廷で役に立った。

 あの一族の連中を豚箱にぶちこむことが出来たのだから。


 男の妻。

 元妻か。

 元鈴木夫人。

 彼女に帰る家などもうない。

 かつて妹を嘲笑っていた女の実家はとうの昔に没落している。鈴木家が切り捨てたのだ。自業自得だな。



 一週間後、男は死んだ。

 刺殺されて。

 犯人は元妻。

 理不尽に離婚された元妻の犯行だと報道されている。


「因果応報だ」


 私は嗤った。愉快でたまらなかった。

 ああ、やっとすっきりした。長かった復讐が終わった。


 恨むなよ。

 私はなにもしていない。


 お前の元妻が弁護士事務所にきたのは偶然だ。

 私達の会話を偶然聞いていたとしてもおかしくないだろう?




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