表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「離婚して欲しい」と言われましたので!  作者: つくも茄子
~番外編 鈴木夫妻の被害者~
102/130

10.中島秀一side

 離婚している奴なんて珍しくない。

 再婚している奴だってごまんといる。

 なのに何で俺だけ非難されないといけないんだ?おかしいだろ?


 ゴシップネタのように話されるのも腹立つが、それ以上に他の社員の好奇の視線に俺は嫌気がさしていた。

 最近、営業部の連中の目も厳しい。仕事がやりにくくなった気がする。部長や専務に目を掛けられているから直接何かを言われる事はない。ただ、玲子をよく知っている奴らからは憐みの視線を向けられることも多かった。


 当時、29歳で係長になった玲子は出世頭。将来を嘱望されていた。それを蹴って寿退社したんだ。俺と結婚してからも、俺は上司として部下を度々家に招いていた。その度に玲子は彼らをもてなしていた。玲子の良妻賢母ぶりを彼らはその目で見ている。



 評判の高かった玲子を裏切っての再婚。

 それは俺が思っていた以上の影響力を持っていた。

 同僚や部下の俺への風当たりが強くなったのは無関係ではないはずだ。



 そんな中で産まれた子供が生まれた。娘だ。里香(りか)と名付けられた娘を可愛がる義両親。


「私一人で子育てなんて無理だわ。パパがベビーシッター代を出してくれるっていうから、来週からマンションに来てくれることになったわ」


「は?ベビーシッター?生まれてすぐだぞ?」


「だからよ。だって私ひとりじゃ絶対に無理だもん」


「いや、お義母さんに来てもらえばいいだろう?」


「え~~~っ!それはもっと無理だよ。だってママも仕事あるし……。秀一は育休取ってくれないんでしょう?」


「……今、忙しい時期だからな」


「だったら良いよね?」



 最後は言い切られた。

 既に予約制のベビーシッターの枠もおさえてあるという。

 勝手に決められて事後報告だけと言うのはどうかと思うが、だからといって俺が子育てを手伝う訳にはいかなかった。課長になったばかりだというのもある。昇進したばかりで育休なんかとれば、休みの間に俺のポジションは他の奴らに奪われてしまうのは確実だ。出世にだって響くことは間違いない。義父からも「家事育児は他者に任せておけばいい」と言われていた。ああ……そうか。他に任せろというのは自分の娘じゃなくて雇われた人間に、という事だったのか。今更ながらにそれに気づかされる羽目になるとは。確認を怠った事を恨めばいいのか、それとも子育てを完全に他人にゆだねる精神に思い至らなかった自分の浅はかさを恨めばいいのか。


 香織は、玲子と違って出来ない事が多い。

 それが良いと思っていた。

 ちょっとしたことでも直ぐに「凄い」と目を輝かせる香織が好きだった。


 結婚してから玲子は小言を言うようになった。

 それが煩わしかった。

 何も出来ないお嬢様育ちの香織にはソレがない。


 なんでもそつなくこなす玲子と違って香織は俺の自尊心を満たしてくれた。


 結婚して子供を産んでもソレは変わらない。

 娘よりも俺を優先する。

 玲子とは違う。


 それが良いと思ったのに。何かが違うと心が警鐘を鳴らしている。

 浮かれていた頭が冷えていくようだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 日本の会社で浮気や不倫をした人間が白眼視される理由を理解してないね。 人間社会を生きる中で、信用や信頼がトップクラスに重要な結婚と言う契約を蔑ろにする人間を信用出来る訳が無いのにな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ