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群像  作者: 碾貽 恆晟
1/1

未練

あらすじにもありますが一応

*当作品はフィクションです

*当作品には不快に思われるシーンがあるかもしれませんが、予めご了承ください。

 


 煌々と、LEDが室内を照らす。


 無機質な白の光が眩しい。


 感情の抜けきったような光だと思った。


 そんなことはないというのに、次第にそのように感じてきた。


 何もかもが白黒に見えてくる。


 退廃した世界のようだ。


 ザラザラとした椅子、服、己の肌。


 全てが同じ感触のように感じられる。


 食べ物は水としらたき、こんにゃくを混ぜ合わせたような、無味無臭の何か。


 芳香剤の匂いも感じられないほどに狂った嗅覚。


 自分に問題があるのか、それとも世界の方が狂ってしまったのか。


 昼間、外に出ると、当たり前のように散歩をして遊んでいるものばかりであるから、少なくとも狂ったのは自分であることが判断できる。


 唯一、違うものもある。


 画面から見た世界だ。


 匂いや味覚など感じることはできないが、画面に映るその世界だけは自分の目にこれまで見えていた当たり前の世界を映し出してくれる。


 没頭した。


 自分がまともに色のある世界を体験できる唯一のツールに、そして、ゲームに。


 それから、何年経っただろうか。


 今でも、それを続けている。


 両親が死んでなお、働きもせずに。


 何をやっているのか、自分でもわからない。


 仕事に、最低でもバイトを始めた方がいいことはわかっている。


 けれども、それをするという一歩ができない。


 自分に何ができるというのだろうか、五感のほぼ全てが狂っている自分に。


 怠惰な私は、全てを諦め、両親から相続した僅かな財産を食い散らかしていった。


 そして、今手には5000円しか残っていない。


 それでもなお、私は働こうという気にはならない。


 むしろ、ここまで生きたのだからもういいのではないかという自分がいる。


 生きる理由もなく、ただ惰性に生きた私にはお似合いの結末ではないだろうか。


 目障りになるほどに光が乱舞する画面の光景を眺めながら、ゲームを閉じる。


 これで、ゲームの画面を開くこともなくなるし、もう一人の自分とも言ってよい“メモリ”のアバターを見ることもなくなる。


 そうと考えるとくるものがある。


 ただ、0と1の膨大な羅列からなるソレに魅せられていると考えると自分が滑稽にも映る。


 そんな思考を振り払い、パソコンを終了させて立ち上がる。


 コンセントを抜き、机の上に放っておいた5000円札をポケットにクシャリと突っ込んで、玄関へと赴く。


 その足取りは重く、どこか後ろ引かれるているのかもしれない。


 何に、と言われても自分にはわからないが。


 ただ、何か、なんとも言えない恐れとか、悲しみとか、憂いといった、そういったものであろう。


 階段を下り、まっすぐ玄関へと続く廊下を歩む。


 それなりに広い玄関で、新品の同様の靴を履き、外へと出る。


 人っ子一人いないような田舎。


 街灯はなく、草がぼうぼうに生えた道はとても暗く、黒と白だけの景色を見る私では、光が当たり、仄かに灰色の部分があるだけ。


 その道は、なぜか、まるであの世へ続く道のように感じられた。


 もちろん、ただの気のせいであろう。


 そんな、道を歩くだけで人は死ねないのだから。


 本当に、この道があの世へ続くなら、その方がいいのではなどという考えが頭をよぎったが、残念ながら、この世界はそんな甘くはないということを、自分は良く知っている。


 考えるのを止めて、私はその道を歩き出した。


 目的地はあるが、その足取りは重かった。



 ◇◆◇◆◇◆◇



 コンビニの蛍光灯の光が室内を照らす。


 野菜、肉に魚、缶詰、飲み物、菓子袋の全てが白と黒。


 美味しいのか美味しくないのか、見た目では判断がつかない。


 けれど、味覚の酷い自分がどれほど美味しいものを、高いものを食べても意味はないのかもしれない。


 最後の晩餐が如く、パンとワインにでもすればいいのであろうか。


 それならば、味がなくとも高尚な雰囲気を味わうことができるであろう。


 という事で、パンがこれでもかといろいろな種類が置いてある。


 ピザパン、カレーパン、メロンパンなどといった言葉が袋に書かれている。


 だが、少なくとも西暦1世紀頃にピザパンがあったとはとてもでは思えないし、最後の晩餐の時に出たのは無酵母パンと葡萄ワインだと聞くので、それらしいものをとってみる。


 レーズンもなければ、バターも入っていないただの丸いパン。


 残念ながら、無酵母パンとは言えないが、いわゆるどこにでもありそうなパンである。


 三つ入りのそれをカゴの中に入れる。


 さてと、次は順当にするならば葡萄ワインなのだろうが、どれが葡萄のワインなのかは皆目見当がつかない。


 とりあえず、手に持ち、ラベルを見て確認する。


 一発目から葡萄ワインであった。


 味を感じることができない自分にはどれも同じものだと、手に取ったものをそのままカゴの中に。


 レジまで行きカゴを置く。


 ピッ、ピッと音が鳴り、店員さんが「計2430円です」と言う。


 5000円札をそのまま取り出し、カルトンの上にポンと置く。


 「5000円からお預かりします」と、相変わらずの定文を口にして、ピッ、ピッ、ピッとレジを叩き、「2570円になります」と言ってカルトンにお金をのせてこちらへ突き出してきた。


 もちろん、向こうにそのような気があるわけではないようだが、突き出してきたようにしか見えなかったのだ。


 少し苛立ちを覚えるも、残金をポケットにしまい、袋を引っつかんで店を出た。


 外に出たとたん、生暖かい夜風が頬を撫でた。


 そろそろ、初夏を過ぎ、本格的な夏に入るころ。


 街灯の光で道がよく見える。


 これで色があったら、そんなことを考えてしまう。


 だからだろうか、『どこで、道を誤ってしまったのだろう』などと思ってしまった。


 現在歩いている道の話ではない。


 私の人生、という点での道だ。


 何も働きもせず、ゲームに現を抜かし、親の脛を齧って早数年。


 一体、自分は何をしていたのだろう。


 何のために生きていたのだろう。


 果たして、私にはあるのだろうか?


 生きる価値が、生きる理由が、自分の存在意義が。


 自分はなぜ生まれてきてしまったのか?


 この世界で最も唾棄すべき存在の一人となった私は、どうして生きているのだろうか?


 この答えの結論は出ているのに、何度も考えてしまう。


 父が、母が、望んだからに決まっている。


 自分ではない。


 自分たちの子供というのを欲したのだ。


 生まれたのが私でさぞがっかりしていることだろう。


 いや、もしかしたら恥だと思っているかもしれない。


 自分たちの人生最大の過ちと思っているかもしれない。


 あぁ、悲しいことだ。


 憐れなる私。


 誰にも私の存在を許容する者はいないだろう。


 いや、あの子はしてくれるかもしれないが、それも私という個人を必要としているわけではないだろう。


 変わりはいくらでもいるのだから。


 ただ、見つけることが難しいだけだろう。


 つまりは、私という個人を、愛してくれる人は私一人だけということだ。


 茶化して言えば、世界も私を愛しているのかもしれない。


 世界に意思があれば、世界(じぶん)の一部であり、世界(じぶん)の中で生きる私という存在を愛してくれるだろう。


 ただの願望かもしれないが、黒白の世界でさえ輝く月の光を見ていると、そんな気がしてならないのである。


 そう、それもあるのだろう。


 私は今日、世界の一部となる。


 自意識を持つ一人の存在ではなく、世界の一部分となるのだ。


 気分が高揚しているのが分かる。


 もしも、あの世があるなら、私は絶望するだろう。


 しかし、あの世の存在は立証されていない。


 そして、私自身、心のどこかで信じているかもしれないが、私の理性ではないという考えが占めている。


 そんなことをつらつらと考えていると、いつの間にか自宅の前にいた。


 鍵も掛けずにおいたので、余計な手間もかからず家に入る。


 リビングまで行き、机の上にレジ袋を置く。


 そして、晩御飯の準備を始めようとしたところで、ふと、とある考え方が頭を過ぎった。


 果たして、今買ってきたパンとワインの意味があるのだろうか。


 私はキリスト教の信者ではないし、今日は日曜日でもない。


 天国に行きたいとも思っていない。


 しかし、これらを捨てることは憚られて、机の上に並べて置いておくだけにした。


 晩御飯を食べることはあきらめ、机の上にあった新品のナイフを手に取り、風呂へと足を向ける。


 風呂釜にはたっぷりと温水が張ってある。


 私は、ここで死ぬ。


 左手首を眺める。


 そして、右手に持ったナイフを見遣る。


 ナイフを風呂釜の上に置き、左手を風呂にいれる。


 そして、右手を振り上げ、左手に刺す。


 すぐに、ナイフを抜き、風呂釜に体を預ける。


 痛みはない。


 いつも通りだ。


 血が流れでいるのだろうか、白の水に黒の液体が流れ出ているのが見える。


 自分でも口元がにやけているのが分かる。


 けれど、次の瞬間その笑みは一瞬にして消え失せた。


 色が、色彩が戻ってきたのだ。


 あ、と思ったときには遅かった。


 体中を貫くような痛みが襲い掛かってきた。


 え、


 あれ、


 痛い。


 痛い


 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いなんで痛い痛い痛いなんで痛い痛い痛いなんで痛い痛い痛いなんで痛いなんで痛い痛い痛い痛いなんで痛い痛いなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで痛いなんでなんでなん痛いでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで痛いなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで痛いなんでなんでなんでなんでなんでこれまで痛くなかったのになんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえない痛いありえないありえないありえないありえない痛いどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして痛いどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして今になってどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてこれまではそうじゃなかったのにどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いおかしいおかしいおかしいおかしいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどい惨め惨め惨め惨め惨め惨め惨め惨め惨め惨め惨め惨め惨め惨め惨め惨め惨め惨め惨め惨めいつも都合の悪い時だけあの時だってそうだったあの時いたくなかったら耐えられた私は私でいられたし引きこもることもなかったしこんな惨めな死に方なんてしなかった悪いのはあいつ等これを知っても笑って私のことを見下して酒の肴にでもするに決まっているどうしてこんな時だけ痛いのこんなこと思い出したくなかったのに痛みがなかったら私はこの世界の一部になって嬉しかったのに私はいつも幸せになれない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくないこんな死に方は嫌だこん、な——————


 


 はっきり言って、ネトコン11に何かあげたくなったからのっけただけ。

 文字数制限ないっていいですよね。

 『群像』は他の作品もありますが、今一つ自分的には納得いっていないのでのっけませんでした。

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