表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/32

第四話:高橋さんの脚を盗撮しに行く

 今日は平日だがシフトの関係で警備員のバイトは休みだ。

 俺はあの万引きをした女性、高橋楓さんの家を見に行くことにした。

 キモイですね。

 

 まあ、スカートの中をスマホで撮影とかじゃなくて、脚を外から撮影するってことだけです。

 後、出来れば胸とか腰とか。

 やっぱりキモイですか。


 けど、ご本人が気が付かなければいいじゃないですか。

 え? ふざけんな、バカ、それがキモイんだよって? おまけに立派な犯罪行為だって?

 すんません。


 さて、実は俺は盗撮をするのは初めてである。

 盗撮童貞だった、俺がついに盗撮デビュー! イエーイ! フォースと共にあらんことを!


 今までは盗撮なんぞには全く興味を抱かなかった俺は、まことに健全な変態であった。

 全く法律に触れたるようなことをしたことがない模範的変態市民であったのだ。


 では、なぜ今回盗撮にトライしようと思ったのは高橋さんの脚があまりにも美しすぎるからである。これは芸術活動ですよ。それで、脚をどうやって撮影すればいいかと考えたのだが、簡単な方法があった。単にスマホの動画で撮影すればいいだけのことだったのだ。写真だと撮影した時点でシャッター音が鳴るけど、動画なら事前に撮影開始のボタンを押すと音が鳴るけどご本人が遠い場所なら気付かれない。ライト機能はオフ。さりげなく撮影して離れたらまたボタンを押す。撮影終了。また音が鳴るけど撮影対象の高橋さんは離れて行ってしまっているので、やはり気付かれないと。これで良し。


 完全犯罪成立。


 あれ、これ犯罪だっけ。いや、明らかに犯罪か。

 どれくらいの罪になるんだ。ネットで調べておけば良かった。

 まあ、いいや。捕まらなければ良いだけだ。


 さて、昼食を自宅で食べて、いざ出発。一応、つばが広い野球帽を目深にかぶってサングラスをかける。高橋さんは俺の顔を覚えている可能性もあるからな。まあ、警備員なんてモブキャストはすっかり忘れていると思うけどね。


 さて、スマホで地図を出して住所を確認。俺の自宅から十分ほど歩いた場所にあった。近いですね。徒歩で歩いて、到着。高橋さんのご自宅を見学。なんてことはない普通の二階建ての安っぽいアパートだ。アパートの隣は空地になっている。家賃も安そうだな。このアパートの一階の一番奥の部屋にお住みだそうで。


 しかし、現在、無職ならずっと家に居る可能性があるな。いや、もしかしたら、万引き事件を起こしたので、今は母親の家に居るかもしれない。精神薬を飲んでいたので、いわゆる引きこもりの可能性もある。それにしては、なかなかかっこいいミニスカート姿だったけどなあ。病んでる感じはしなかった。まあ、精神的な病気は外見からはわからないようだけどね。だから、本人はより苦しむらしいな、周りの理解を得られないから。


後は高橋さん本人の生活行動をどうやって知るかだよなあ。今、居るのかなあ。外出しているのか。わからん。しかし、ずっとアパート前にいたらストーカーみたいだもんな。と言うか、すでにストーカーだな、俺は。何度も思うが女性からしたらキモイだろうなあ。


 迫る! 恐怖の盗撮男!


 いや、これは芸術のためなのだよ、諸君! わかってくれたまえ。わかるわけないか。アパートの高橋さんの部屋の扉の前でしばし佇む。表札には「高橋」とだけある。まあ、多分、一人暮らしだろうなあ。


 うーむ、しかし盗撮はやはり犯罪だよな。一応、法律順守の変態を目指しているのだ、神聖変態帝国皇帝の俺は。ここは、いっそ、ドアチャイム押して、「すんませーん。脚撮らせて下さーい」なんて直球で頼んでみてはどうだろうか。って、そんな事したら即行で警察に通報されるって。


 アパートの前の道路に出て周囲をうかがう。おっと、約百メートル先に交番があるではないか。

 これは要注意だな。


 さて、いい方法がないかと、ふと道路を挟んだアパート前の住宅を見ると、けっこう大きい建物があって玄関近くにけったいな像が置いてあるぞ。なんとなく北米先住民が作る彫刻トーテムポールを想像させられた。なんかの宗教団体かな。それとも住んでる人が芸術家か。


 しかし、これは別の意味でラッキーだ。もし、高橋さんが来たらあの像の動画撮影を開始。ヘンテコな像があるので面白がって撮影している一般人にしか見えないだろう。高橋さんが通り過ぎたら、彼女にカメラの焦点をずらす。そのまま綺麗な脚を撮り続け離れたら撮影終了。完璧な計画だな。もし本人に何か言われても、「いや、あの像を撮影してたんですよ」ってすっとぼければいい。しかし、いつあの女性に会えるのか、それが問題だ。ああ、会いたいなあ、お話したいなあ。


 ふう、なんだか疲れてきた。いつ帰って来るのか、すでにアパートの部屋に居るのか、もう実家に帰ってしまったとか、わからんもんなあ。やっぱりあきらめるか。盗撮は犯罪だもんなあ。いや、しかし、高橋さんの顔が見たい。会いたい。話するだけでもいいぞ。

 

 うーむ、悩む。

 まあ、とりあえず今日は帰るとするかと道を戻ろうとすると、遠くに女性の姿が見えた。なんと高橋さんがやって来るではないか! コンビニの袋を持っている。よっしゃー! これは千載一遇のチャンスだ! ネトゲのガチャで一発で最強のキャラを当てた気分だ。盗撮の神様が俺に与えたご褒美じゃないか。ニートをやめてバイトを始めたご祝儀か。盗撮の予感~きっと誰かを見ている~盗撮の神様この女性でしょうか~♪ なんだかわけのわからない歌が俺の頭に浮かんでしまう。


 俺は予定通り動画の撮影を開始した。

 ヘンテコな像に向かってスマホを向ける。


 よし、ミッション・インポッシブル開始。レッツ・ゴー! 動画スイッチオン! しばらくすると高橋さんが俺の横を通り過ぎた。今日は残念ながらミニスカートではなく、ひざ丈のレンガブラウンのフレアスカート。しかし黒いストッキングを履いている。OK! ナイス! よーし、それでいいんだ! 上はベージュ色のセーターで胸が盛り上がっている。これもグッド! さりげなく高橋さんを目標にカメラを移動。静止画でもいいが動いている脚も素敵だ。本当は前方向から撮りたかったのだがなあ、胸も撮影できるし。仕方がない。後ろ姿で我慢する。


 とは言え、後ろ姿も最高! と思っていたら、自動車がやって来た。こりゃまずいな。勝手に女性を撮影していると思われるかもしれない。うむ、自動車と高橋さんを一緒に取るしかないか。動画撮影画面を縦から横に変換! 俺は今、自動車を撮影しているんだとアピール。別にめずらしい自動車じゃないけどな。画面の半分が自動車、もう半分が高橋さんで埋まる。そのまま高橋さんがアパート前まで行ったところでスマホを逆方向に向ける。最後はもう一度、ヘンテコな像を撮影。しばらくして動画スイッチオフ。ミッション成功! ヒャッホー! ありがとう、トム・クルーズ!


 動画を確認してみる。けったいな像の後にスカート姿の女性が歩いている姿が完璧に映っている。

 但し、画面の半分は自動車。この無粋な自動車め。芸術活動の邪魔すんなよ。後でパソコンの動画作成ソフトを使って消去してやる。


 しかし、素晴らしい脚線美。まあ、出来ればミニスカート履いていてほしかったなあ。

 けど、これで満足だ。

 サンキュー、盗撮の神様!

 

 と、俺が喜んでいると、突然、背後から話しかけられた。


「あのー、すみません。何を撮影してんですか」


 俺が仰天して振り向くと、目の前に高橋さんがいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ