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第四章 詩穂、おかまと同居する

ある日、高校時代の男子不良の一人がレスリングジムに私を訪ねてきた。

「今日はどうしたの?何か用事ですか?」と訪ねてきた要件を聞いた。

「先日偶然に会って喫茶店で雑談した時に、貞一が警察学校の一日教官を依頼していました。その時に俺も頼もうと思いました。しかし皆の前で言うのは、ちょっと気が引けて言えなかったものですから・・・」と何か言いたそうでした。

「何が言いたいの?今なら問題ないでしょう?」と何を言いたいのか知りたそうでした。

「笑わないでくださいね。」とモジモジしていた。

「笑わないから、言ってよ。」とモジモジして、とイライラしていた。

「じつは、私、オカマなの。それで、オカマバーに努めているのよ。」と恥ずかしそうに説明を始めた。

私は自分の耳を疑い、思わず吹き出した。

「笑わないと言ったじゃないですか。」と不満そうでした。

「ごめん、ごめん。予想もしない事だったので、思わず吹き出してしまったのよ。高校時代、暴れ者の不良がまさかね。でも、あなた童顔だから、きっと美人なのでしょうね。」と意外な様子でした。

「私、女より男が好きで、不良グループリーダーの貞一に一目惚れしたのよ。いつも一緒にいて、彼の指示には逆らえなかったのよ。」

「まさか、彼との間を取り持てとでも言うの?そんなの、本人同士で話し合いなさいよ。」と変なゴタゴタに巻き込まれたくない様子でした。

    **********

「いいえ違います。貞一は晴美と付き合っていて、私が入る隙間はないわ。それで相談ですが、最近やくざが店に来るようになり、セックスチェンジ手術を勧められているのよ。私もそこまでは踏ん切りがつかずに、店の同僚や店長に相談したのよ。すると、以前も同じような事があり、セックスチェンジ手術後、その人は行方不明らしいのよ。相手はやくざだから、海外に売られたとの噂があるらしいのよ。断れば拉致されそうで困っているのよ。助けて。」と泣きつかれた。

「だったら、なぜ警察に行かないのよ。」と確認した。

「見張られている気がして、警察に向かえばその途中で襲われそうで警察には行き辛いのよ。」と怯えていた。

「だったら、電話で通報すればいいじゃないの。」と指摘した。

「被害届を提出に来てくださいと言われればどうするのよ。ドラマなどでも、警察に出頭途中に襲われるケースもあったわよ。」とかなり怯えている様子でした。

ドラマはあくまでもドラマだと思いましたが、あまりにも怯えていたので可哀そうになり、「わかったわ。知り合いの警察関係者に相談するわ。」と助ける事にした。

「お願いします。」と携帯番号を交換してその日はわかれた。

警視庁の高木刑事に相談した。

「それはやくざの収入源ですね。考えてもみてください。セックスチェンジの手術費用は誰が負担するのですか?当然健康保険の対象外だから高額ですよ。数百万程度ですかね。やくざが負担するのであれば、その元を取るでしょう。女性として、どこかに売られた可能性があります。」

「だったら、なぜ最初から女性を襲わないのですか?」と不思議そうでした。

「女性が拉致されればその目的は見当がつくでしょう。警察の捜査で追い詰められる可能性があるからですよ。オカマとはいえ男性だから、そのような捜査はしないでしょう。少し時間をください。調べてみます。それまで、その返事は思案中だと延ばして下さい。」と捜査する事にした。

    **********

数日後、高木刑事が若い女性を連れてプロレスジムを訪ねてきた。

「詩穂さん、わかりましたよ。詩穂さんの知り合いのオカマから聞いた男性は、確かにセックスチェンジの手術をしていましたが、別に売られていませんでしたよ。やくざに監禁されていて、風俗店への送り迎えをして、強制的に風俗店で働かされていました。そのやくざを監禁罪で逮捕して、彼なのか彼女か知らないが救出しました。しかし、再びやくざに拉致される可能性があるために、ここで働かせて頂けませんか?詩穂さんの知り合いのおかまも狙われているのでしたら、仲間がいたほうが安心出来ると思いますので、可能であれば一緒に働かせて頂けませんか?」と連れてきた彼女を紹介した。

「オカマバーで働くにしてもここで働くにしても、勤務時間中は一人ではないので襲われないでしょう?襲われるのは、通勤時やプライベートの時間でしょう。そこまではフォローできないわよ。どこで働いても同じだと思うわよ。それに一度に二人も採用は無理よ。」と高木刑事の考えを否定した。

    **********

そこへ母が来た。

「何、勝手に決めているのよ。責任者は私よ。詩穂も冷たいわね。家に下宿すればいいじゃないの。詩穂、あんた男っ気がないから男性を紹介してもらいなさいよ。」と無視されて不愉快そうでした。

母の性格からして、無視すれば必ず否定すると思ったわ。作成成功。でも家に下宿させるとは思わなかったわ。と満足していたが、藪蛇にならないか一抹の不安はあった。

「えっ!?こんな美人の家に下宿できるのですか?聞いたところによると、彼女は高校時代、男子生徒のあこがれのマドンナだったらしいですね。」とニヤニヤしていた。

高木刑事が、「お前、オカマじゃないのか?女性に興味があるのか?オカマじゃなく普通の男性ではないのか?彼女はレッドデビルで母親はピンクデビルだ。変な気を起こして手を出せば殺されるぞ。」と変な気を起こさないように忠告した。

母は、「変な気、大歓迎よ。私が寝技で押さえるから、詩穂を女にしてやって。」と笑っていた。

「それが母親のいう事か!」と切れた。

    **********

「なんか変な方向に話が逸れていますが、私はセックスチェンジしているので、詩穂さんを女にはできません。詩穂さんがあまりにも美人だったので、つい口が滑ってしまっただけです。詩穂さんの知り合いのおかまはまだ男性ですが・・・」

「そうですか、それは残念ですね。」と笑っていた。

「そこは残念がるところじゃないでしょう。安心するところでしょう。母親とは思えないわ。」と不愉快そうでした。

高木刑事は、「そんな話はあとでゆっくりして下さい。彼女を下宿させて頂けるのですか?」と話が横道に逸れたので元に戻した。

「いいわよ。詩穂がやくざに注意しながら詩穂の友達のおかまも一緒に通勤しなさいね。男を紹介してもらう事も忘れないでね。」と決めてしまった。

「ちょっと、勝手に決めないでよ。なぜ母ちゃんが一緒に通勤しないのよ。それと付き合う男性や結婚相手は自分で捜すわよ。」と乗り気ではありませんでした。

「私はお父さんを送り出して、あと片付けをしてからになるから、一緒に通勤できないわ。それと彼氏を捜すって、近くに男がいないのに、どうやって捜すのよ。まさか一目ぼれした男性がいて、偶然の出会いをしようと考えているの?だったら協力するわよ。」とどんな男性なのか気になっている様子でした。

「大きなお世話よ。母ちゃんに協力してもらえばろくな事にならないわ。」とその場から逃げるように離れた。

私がいない間に、引っ越しなど色々と話し合い、来週から私の家に下宿して赤黒レスリングジムで千代子の部下として働く事になったようだ。

翌日千代子が、「やくざに見張られている可能性があり、引っ越し準備をしている事に気付かれると危険ではないかしら。」と自分の部下の心配をしていた。

母が、「そうね。詩穂、あなたの部屋に下宿するのだから、ボディーガードを兼ねて詩穂が手伝いに行きなさいよ。」と提案した。

「私の部屋に下宿するってどういう事?まさか同室じゃないでしょうね。空き部屋が一室あるじゃないの。なぜ、その部屋を使わないのよ。」と嫌な予感がした。

「そのまさかよ。空き部屋は、詩穂の友達のおかまが使うわ。セックスチェンジしていないから男性でしょう?男性と女性は同室にできないわよ。詩穂と同室の元男性の彼女は、女性でも男性の体よ。男性の体に慣れる準備段階ね。」と笑っていた。

「男性と女性は同室にできないと言っても、父ちゃんと母ちゃんは同室じゃないの。」

「夫婦は別よ。」

いろいろと抵抗したが、母には敵わず無駄な抵抗だった。

数日後、母が、「彼女は、今日からうちに下宿する柴田祥子さんです。部屋は詩穂と同室です。明日もう一人来ます。詩穂の知り合いの男性で、彼は準備した空き部屋を使用します。」と紹介した。

私は母には何を言っても無駄だと受け入れた。

父親が、「布団とかはどうするのだ?空き部屋に来る男性の布団しか準備してないぞ。」と布団がなかったので確認した。

「詩穂と同じベッドで寝ればいいじゃないの。」

「ちょっと待ってよ。」と慌てた。

母は主人に聞こえないように小さな声で、「セックスチェンジしたとはいえ、体は男性の体よ。男の体に慣れなさい。」と忠告した。

私も小さな声で、「私と一緒のベッドに寝て、男性に目覚めたらどうするのよ。」と内心不安でした。

「セックスチェンジしているから、たとえ男性に目覚めて襲われても妊娠しないわ。男性に慣れる絶好のチャンスよ。」

「母親とは思えない発言だわ。」と最初母を無視してこの話を断ろうとした事が、ここまでもつれこむとは予想もしていなかった。

「そんなにいやだったら、早く彼氏を見つけてお付き合いしなさいね。そうすれば、彼か彼女か知らないけれども出て行くわよ。」と助言した。

翌日、私はブラックデビルに不満をぶちまけて現状説明した。

心配したブラックデビルが母に確認した。

「父から引き継いだプロレスジムを、私と詩穂の代で終わらせる事はできないわ。詩穂の子孫を作らないと、私も安心して引退できないわ。」と打ち明けた。

「無理に男とくっつけて、相性が合わずに夫婦喧嘩になったらどうするのよ。乱暴者のレッドデビルが本気で怒ったら、その男、下手すれば殺されるか障害者になってしまうわよ。」と無理しないように説得した。

「そのへんは詩穂も心得ているわよ。素人相手に無茶しないわよ。ところで詩穂、誰か心に決めた人はいるの?高校時代、デートした事があると聞いたわよ。晴美ちゃんに聞けば知っているかしら。」


レッドデビル特別編はこれで終了です。

今まで、ご愛読ありがとうございました。

次回の投稿は、読み切りの短編小説を予定しています。

投稿予定日は、8月4日を予定しています。


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