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ペコリと頭を下げる僧侶。

「許してくれないと、困ります」

「……」

無言になる人々。

やがて一人の男性が前に出てきた。

「まあまあ、落ち着けって」

男は言った。

「俺たちは別にあんたらが悪いと思ってるわけじゃない。ただ、この街には貴重な素材を扱う店もあるし、冒険者ギルドだってある。もしここで暴れられたら、迷惑するのはこっちなんだ」

「そうか……悪かったな」

「だから損害賠償をしてもらうことにした」

「賠償金……だと?」

「ああ、金貨十枚払ってもらおうか」

「き、金貨十枚……」

アレックスは絶句した。

「さあ、早く出せ!」

男が催促してくる。

「わかった……すぐに用意しよう」

勇者は財布を取り出した。

「俺が出す」

「アレックスさん?」

「悪いのは俺だしな」

勇者は懐から袋を取り出すと、その中から金貨を一枚取り出し、男に手渡した。

「確かに受け取った」

「では、これで失礼する」

「まて、残り九枚の金はどうするつもりだ?」

「今は無い。後で払う」

「そうはいかんね」

「何?」

「残りの九枚分は、これから働いて返してもらおうか」

「どういうことだ」

「つまり、お前さんたちにはしばらく街に滞在してもらう。その間、毎日街のために働いてもらうからな」

「街のためだと?」

「ああ、例えば食堂の皿洗いとか、街の清掃活動とか、ゴミ拾いとか、あとそっちの娘さんはウェイトレスとして働いてもらおうか……」

「待ってください。この方は勇者様で、魔王を倒すために旅立たなければならないのです」

「いや、これは俺が悪い。指示に従おう」

勇者が答えた。

「そうですか……」

こうしてアレックスとソラリスはしばらくの間、街で暮らすことになった。

「お待たせしました」

ソラリスは笑顔で料理を持ってくる。

「こちらが、当店の名物・焼き肉定食になります」

「おお……」

テーブルの上に並べられていく。

「では、ごゆっくりどうぞ」

ソラリスは一礼すると去って行った。

「いただきます」

客たちは目の前に置かれた鉄板を見る。

ジューッ!! 美味そうな音を立てている。

「ソラリスちゃん、今日も可愛いねぇ」

「ありがとうございます」

ソラリスは愛想よく応じる。

「ところで、ソラリスちゃんは何歳なんだい?」

「十六歳です」

「そうかい、若いのにしっかりしてるんだねえ」

「いえ、そんなことありません」

「そういえば、この間の大会で優勝して賞金もらったんだろう?あれで何か買ったのかい?」

「いいえ、特に何も」

「もしかして、まだお金が余っているのかな?だったらおじさんがいくらかあげようか?実はちょっとだけなら持ってるんだよ」

「いいんですか!?」

「ああ、もちろんだよ。ほれ……」

男は財布の中から数枚の硬貨を取り出し、ソラリスに差し出した。

「どうだい?結構な額だろう?」

「はい、とても助かります」

ソラリスはにっこりと微笑む。

「それじゃあ、また来るよ」

「はい、お待ちしております」

男は店を後にした。

「はぁー……疲れるなぁ」

アレックスはため息をつく。

「すみません。私があんなことをしてしまったせいで……」

「いや、君のせいじゃない。悪いのはあいつだ」

「でも、私のせいで……」

「気にするなって」

アレックスは積み上げられていく皿を必死に洗いながら言う。

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