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こうして勇者と僧侶は魔族が住む世界へと旅立つことにした。
まずは魔界への扉を開くために鍵を手に入れる必要がある。
魔界への扉を開く方法はいくつかある。
そのひとつが魔王城から少し離れた場所にある『魔王の塔』と呼ばれる建物にある。
魔王城へ続く道の途中に存在する塔だ。
勇者たちは魔王城を目指さず、先に魔王の塔へ向かうことに決めた。
魔王城は山を越えた先にあり、かなりの距離があるからだ。
なので勇者たちは、魔王の手下である魔物たちを倒しながら塔を目指した。
道中、何度も魔物に襲われた。
魔王城に近付くと強力な魔物と遭遇するようになり、時には危険な目に遭うこともあった。
それでも勇者と僧侶は二人で力を合わせて乗り越えていった。
勇者アレックスは戦士としての素質があったが、魔法使いのいない二人にとって物理攻撃の抵抗を持つ魔物は非常に厄介で、僧侶が魔法で援護してくれたおかげでなんとかなった。
僧侶ソラリスが使える呪文は主に光の属性魔法で、回復と祝福を使っていたのだが、それは勇者との相性もよかった。
しかしその程度の魔法で本当に魔界で通用するのか不安になった僧侶は、新たな仲間を探した方がいいのではないかと考えた。
そこで勇者は街へ立ち寄り、大賢者とまでいかなくとも、それなりに攻撃魔法の使い手を探してみることにした。
そうして一ヶ月が経過した頃、勇者は少し大きめの街にたどり着いていた。
「勇者様、お昼ご飯にしませんか?」
「ああ、ちょうどお腹が減ってきたところだ」
「では、こちらのお店に入りましょう」
ふと見ると、一軒の小さなレストランを見つけた。
看板には『ラビット亭』と書かれている。
入り口にはウサギの耳をモチーフにした門があり、綺麗に花が添えられていた。
「ここがいいかな」
「ええ、きっとおいしいと思いますよ」
店内に入ると、中はそこそこ賑わっていた。
店内に入ると店員の女性が出迎えてくれた。
「いらっしゃいませっ!!」
元気よく挨拶する女性。
「何名様でしょうか?」
「二人です」
「かしこまりました。二名様ご案内します」
席まで案内される二人。
「どうぞ、こちらです」
「ありがとうございます」
勇者は椅子を引いてくれたので座った。
「メニューはこちらになります」
「どうも」
渡されたメニューを眺める勇者。
「どれにするかな」
「どれもおいしそうですね、勇者様は何が食べたいですか?」
「俺は何でも大丈夫だ」
「そうですか……」
少し考える僧侶。
「じゃあ、私はこれとこれにしましょう」
僧侶はハンバーグとサラダを指差した。
「では、私はこれで」
勇者はオムライスを頼んだ。
数分後、飲み物と料理が運ばれてくる。
「お待たせしました。まずはドリンクからお持ちいたしました」
女性のウェイトレスはコップに入ったオレンジジュースを持って来た。
「勇者様、どうぞ」
僧侶はコップを差し出した。
「ありがとう」
受け取り、一口飲む勇者。
「うむ、うまいな」
「そうですね」
僧侶も一口飲んだ。
「では、次はメインディッシュをお持ちいたします」
「お願いいたします」
「少々お待ち下さいませ」
女性は一度下がった。




