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――それから一か月後。
勇者と僧侶は、魔王が復活したという報告を受けたのだが、勇者はまだ魔王と戦うだけの力が無かった。
勇者アレックスと僧侶ソラリスはもっと強くなるため旅に出た。
その辺りの草原で弱いモンスターと戦うだけでは魔王には到底敵わない。
「はぁ~」
大きな溜息をつく勇者アレックス。
「勇者様。元気を出してください」
「はい……」
「私たちならきっと大丈夫ですよ」
「そうでしょうか……」
落ち込む勇者アレックス。
「まだ諦めるのは早いです」
「でも……」
「何か不安なことがあるんですか?」
「実は、勇者と戦士はそんなに違わないのではないかと思うのです」
草原に座り込み、草を抜き風に飛ばされる様子を見ながら話すアレックス。
「どういうことですか?」
「勇者と戦士の違いって何でしょう?」
「うーん。それはやっぱり、勇者の方がレベルが高いとか、剣の技が得意だとか、そんなところじゃないですか?」
「そうなんですよ! それなんです!」
「えっ!?」
「どうして勇者だけが特別扱いされるのですか? 同じ人間なのに……」
「……」
黙り込んでしまう僧侶ソラリス。
「どうして勇者は選ばれたのでしょう? どうして他の人はダメなんだろう?」
「それは……」
「勇者は魔王を倒すために特別な能力を与えられているのかもしれません」
「それは分かりますが、でも、それだけで本当に魔王が倒せるのかな……」
「魔王を倒すためには、それ相応の力が必要なはず。でも、今の僕たちには力が無い」
「はい」
「勇者は凄い力を貰っているのに、僕は何も持っていない」
「そんなことありませんよ」
「僧侶さんは優しいですね」
「いえ、そんなことは……」
顔を赤くする僧侶ソラリス。
「僕は悔しかった。自分が情けなかった」
「……」
「だから、強くなりたいと思った」
「はい」
「だけど、どれだけ修行しても全然成長しない」
バンバンと地面を叩く。
「それは仕方がないと思います」
「なぜですか!?」
声を荒げる勇者アレックス。
「だって、普通の人よりも早く成長しちゃったらおかしいじゃないですか」
「えっ!?」
「勇者は最後に魔王を倒せばいいんです。普通より少し遅いくらいが丁度いいんじゃありませんか?」
「なるほど、最後を飾ればいいと」
納得した様子の勇者アレックス。
「確かに、今のままじゃ魔王どころか雑魚にも勝てないだろうし、もっと努力しないといけませんよね」
「はい」
勇者と僧侶の二人はさらに旅を続けていた。
魔物を倒しながら山を越え、谷を渡り、砂漠を越えて進んだ。
途中何度も困難があった。
道に迷ったり危険な目に遭ったりしながら進んでいった。
それでも二人の力は確実に成長していた。
特に勇者アレックスは別人のように変わっていた。
以前は自信なさげな表情を浮かべていた彼だったが、今は堂々とした態度でいる。




