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「いかがでしょうか?」
「えっと……」
アレックスが戸惑ってると、後ろから声が聞こえてきた。
「いいじゃないですか、アレックスさん、引き受けましょう!」
「ソラリス!?」
ソラリスはにっこり微笑みながら言った。
「きっと素晴らしい社会貢献になりますよ!」
「そうだね、よし、やってみよう!」
こうして二人は清掃団体の設立に関わることになった。
それから数ヶ月後、設立式典が行われた。
「みなさま、ご静粛に願います」
司会進行を務める大臣の声が会場内に響き渡る。
そして式典が始まった。
「それではこれより、清掃団体『クリーンアップ』を設立いたします。代表にはアレックス・モーガン氏が就任することとなりました。なお、この団体は国民の皆様の協力により運営されています。今後とも国民一人ひとりの意識向上に努め、より良い環境作りを目指して参ります。よろしくお願い致します」
拍手喝采の中、式は終わった。その後、役員による挨拶があり、解散となった。
「お疲れ様です、アレックスさん」
「ああ、ありがとう、ソラリスのおかげだよ」
「いえ、そんなことはありません、全てはアレックスさんの人徳によるものです」
「はは、そうかな」
「そうですよ」
二人の間に笑いが起こった。
「それでは行きましょうか」
「うん」
二人は並んで歩き出した。
「それにしても、本当にすごいですね」
「えっ?何が?」
「この国の人達はみんな笑顔で溢れてますよね」
「ああ、ほんとだね」
「これも全部アレックスさんのおかげですね!」
「いやいや、俺なんてまだまださ」
「ふふふ、謙虚なところも素敵」
「あはは、ありがと」
「こちらこそ」
二人は楽しそうな会話をしながら歩いて行った。
「今日は良い天気ですね」
「そうだね、絶好のゴミ拾い日和だ」
「ふふ、そうかもしれませんね」
―――――エピローグ―――――
ここはとある街にある一軒家。
その家の一室。
「ねぇ、ママ」
「なぁに?」
「どうしてあのおじさんはゴミを拾っているの?」
「それはね、誰かが困っていたら助けてあげるためよ」
「じゃあ僕もゴミを拾えば、誰かを助けられる?」
「もちろんよ」
「わかった!じゃあ、行ってくる!」
少年は元気よく家を飛び出した。
そして街の中へと駆けて行く。
そこには、たくさんのゴミが落ちていた。
「あった!」
そしてそのゴミを拾い始めた。
「これ……持って帰ってもいいんだよね……」
少年は不安げに呟く。
その時だった。
「大丈夫、持っていきなさい」
一人の老婆が優しく語りかけた。
「いいの?」
「ええ、いいのよ」
「やったー!」
嬉しさのあまり、少年は大きな声で叫んだ。
すると……
「うるせぇぞガキぃ!」
怒号が響いた。
「ごめんなさ〜い」
慌てて謝る少年。
「まったく、最近の若い奴らはマナーがなってないぜ」
そう言って男は去って行った。
「うう、怖かった……」
「あなた、大丈夫?」
先程の老婆が話しかけてきた。
「う、うん、平気」
「そう、良かったわ」
「ねえ、おばちゃん」
「何かしら?」
「僕、ゴミを拾ってるんだけど、これで正しいのかな?」
「ええ、間違っていないわ」
「そっか、よかった!」
「でも、一つだけ注意することがあるの」
「なんだろう?」
「ゴミをたくさん集めることよりも大切なことがあるの」
「へえ、どんなこと?」
「自分の気持ちを大切にすることよ」
「自分の気持ち?」
「そう、あなたのやりたいことをやるの」
「僕のしたい事……」
「それがきっと、一番大事なことよ」
「分かった、やってみる」
「頑張ってね」
「うん、ありがとう、おばちゃん」
「どういたしまして」
そう言うと、老婆は去っていった。
「よし、やってみよう!」
少年は意気込んで、再びゴミ拾いを始めた。
「あら、いい子がいるじゃない」
その様子を見ていた女性がいた。
女性は微笑みながら、少年を見つめている。
「あの子はきっと、いい大人になるでしょうね」
そう言い残し、女性の影は消えていった。