16
「えっ!?」
ソラリスは驚き、急いで城門へと向かった。
そこには大勢の人が集まっていた。
「あれが勇者様……」
「おお、なんて凛々しい姿だ……」
「ああ、勇者様にならこの国を任せられるわ……」
人々は勇者を讃えていた。
「すごい人気だな……」
「ええ、さすが勇者様です」
ソラリスは横にいた人に聞いてみた。
「あの、あれが勇者様ですか……」
「きみは誰だい?」
「あっ、すみません、私はここで働いている者です」
「ふむ、なるほど」
「ところで、勇者とはどういう方なんですか?私はあまり詳しくなくて……」
「そうか、知らないのか、まあいいだろう、教えてやろう」
「お願いします!」
「では教えよう。勇者というのはだな、魔王を倒したという伝説の男だ」
「ふむ……」
「この世界を脅かす魔物たちを次々と退治し、人々を救った英雄なんだ、そして今は王都で凱旋パレードの準備が進められているはずだ」
「そうなんですね」
「だが、私はその男に会ったことがあるんだ」
「えっ!?」
「私が子供の頃の話だ、ある街が盗賊団に襲われていてな、そこに颯爽と現れたのが勇者だった」
「それでどうなったの?」
「もちろん盗賊は全滅したよ、それも一瞬のうちに……信じられるか?あんなに強い男が今までどこに隠れていたのか、不思議でしょうがないくらい強いんだ」
「へぇ〜……」
「そして勇者はこう言った、『俺は勇者だからな!』ってな!」
「ははは……」
「私も子供だったが感動してな、今でも覚えているよ、あの時の勇者の顔は忘れられんな!」
「あの……」
「なんだい?」
「その話……本当なんでしょうか?」
「当たり前じゃないか!私は嘘なんかつかないぞ!」
「……」
「それじゃあ私は行く、また会おう」
「はい……」
ソラリスはその場を離れた。
(まさか……)
ソラリスは思った。
(でも……そんなこと……あるはずが……でも……確かめる方法は……ひとつしかない……)
ソラリスは部屋に戻り、自分の荷物の中からあるものを取り出した。
それは小さな水晶玉。
そしてそれを手に取りじっと見つめた。
すると……
「うそ……でしょ……!?」
水晶に映った勇者は、ソラリスがよく知っている顔ではなかった。
「アレックスさん……」
間違いなかった。
水晶に映し出されたのは、紛れもなくアレックスではない他人の姿であった。
「これは……いったい……?」
ソラリスの頭の中に様々な疑問が浮かんでは消えていった。
しかし結論はひとつしかなかった。勇者はアレックスではない。
魔王を倒したのはアレックスではなかったのだ。
ソラリスはその事実を胸に秘め、城で働く日々を過ごすことに決めた。
「もう迷わない」
そう自分に言い聞かせて……。
「くそぉ、こいつらゴミばっかり捨てやがって!」
アレックスは街中のゴミ拾いに明け暮れていた。
もう何年もこの活動を続けている。
アレックスは今、城の近くにある街の清掃活動をしていた。
次々と捨てていくゴミを拾い集めるアレックス。
しかしアレックスには考えがあった。
実はこの活動は足腰を鍛える鍛錬であると認識していたからだ。
そして自分の活動を知らしめることに繋がると考えた。
アレックスはこれを利用しようと考えた。
アレックスは毎日のようにゴミを集め続けた。
そしてある日、ついに城からの使いが来た。
「アレックス・モーガン殿、貴殿は街での評判が良いと聞きました。そこで、ぜひ我が国の清掃活動団体の理事になっていただきたいのですが……」
「えっ!?」