15
「おい、起きろ!」
看守の声で目が覚めた。
「うう……」
「さあ飯の時間だぞ」
「ありがとうございます」
「今日はパンだけだぞ」
「はい……」
「よし、食ったらすぐ行くからな」
「はいっ」
アレックスは食事を終えた。
「じゃあさっさと来い」
「はい」
アレックスは連れていかれた。
長い廊下の先にまた扉があり、そこには小さな小部屋があった。
「よし、お前はここで待機していろ」
「はい」
ガチャリと鍵をかけられ、アレックスは一人部屋に残された。
「はぁーっ」
大きくため息をつく。
「こんなところで何日も過ごすのか……」
憂鬱になりながら、部屋の中を眺めていた。
すると、突然ドォンッ!と轟音が鳴り響いた。
「なんだ!?」
慌てて窓から外を見ると、そこには大きなドラゴンが立っていた。
「ドラゴン!?」
驚くアレックス。
「まずい!ここは俺に任せてくれ!俺は勇者、勇者アレックスだ!」
アレックスは必至になって部屋の入り口を叩いた。
しかし誰も来ない。
「くそっ!なんで誰もいないんだよ!」
焦るアレックス。
ドラゴンが周囲の人に襲いかかった。
「くっ!俺なら戦えるのに……」
必死にドアを叩き続ける。
「誰か気づいてくれ……」
その時、庭から声が聞こえてきた。
「はぁーっ!!」
ドラゴンの雄叫びと、剣を振りかざす音が聞こえる。
「あの女騎士は誰だ」
その女は素早い動きで次々と攻撃を繰り出していった。
そして、ものの数分もしない内に、ドラゴンは倒れてしまったのである。
「すごい……」
呆然と立ち尽くすアレックス。
「あんな凄い人がいるのに魔王は倒せていないというのか……」
絶望的な気持ちになる。
「はぁ……」
再び深いため息をつく。
しかしアレックスは投獄された身だ。
まずは刑期を終えなければならない。
なんとかして与えられた仕事をこなしながらチャンスを伺うしかない。
「とりあえず、今は大人しくしているか……」
アレックスはそう思い、窓の外を見ていた。
すると、ドラゴンの背中の上に立っている人物がいた。
「あれ?あの子って……」
よく見ると、ドラゴンの上で座っているのはソラリスだった。
女騎士と一緒になってドラゴンを解体しているようだ。
あれもソラリスの仕事なのか。
「元気そうだな……」
少しだけ安心するアレックス。
「そういえば俺の当面の仕事はゴミ処理だと言ってたな。ここで何をするんだろう」
アレックスは不安を抱えながらも、部屋の中でじっとしていたのであった。
一方ソラリスは、メイド長と共に皿洗いをしていた。
「メイド長さん、このお皿割れなくてよかったですね」
「ええ、本当に」
「でもここって高そうな食器多いですよね」
「ええ、おもてなしをするために取り揃えているのですよ」
「なるほど……でもこういう食器に触れていると心が和みます」
「そうでしょ、うふふ……」
それから数年が経ち、自分が何者であったかも忘れかけていた、ある日のこと、城内に激震が走った。
「勇者様がご帰還なされたぞーっ!!」
「勇者さまぁ~っ!!」
人々が口々に叫ぶ。




