13
「待ってください!」
「何じゃ?」
「俺はまだ戦える!」
「無理だ、諦めろ」
「嫌だ!!」
「聞き分けのない奴め……」
「俺には守らないといけない人がいるんだ、この国の人たちの未来を守る為に俺は戦うんだ!」
「いたぞ、こいつだ!引っ捕らえろ!!」
ぞくぞくと近衛兵たちが集まってきた。
「なにっ!?」
「さて、わしは退散するとするか」
「ちょっと!?」
「さらばだ」
大賢者は霧のように消えていった。
「くそっ!!離せ!!」
アレックスは捕らえられていた。
「アレックスさん!」
ソラリスが駆けつける。
「ソラリスちゃん!助けてくれ!」
「はいっ!この人は悪くないんです、悪いのは向こうの方で……」
「なんだ、この女は」
「ええいっ、うるさい。こいつもまとめて引っ捕らえろ」
「はっ!」
「くそっ、俺はまだ戦えるのに……」
アレックスは牢屋に入れられてしまう。
それから数日後……。
「おい囚人」
兵士がアレックスを呼ぶ。
「誰ですか?僕は無実だと言ってるじゃないですか!」
「いいから出なさい」
「どうして……」
アレックスは兵士に連れられ城の謁見の間に向かう。
「アレックスさん!」
そこにはソラリスも一緒に連れて来られていた。
「俺たちは無罪だ!帰してくれ!」
「残念だがそうはいかない」
「なぜ!?」
「君たちが暴れたせいで多くの怪我人がでている、このままでは我が国は滅びかねない、だから……」
「だからなんだと言うのです!」
「アレックスさん、ここは私が……」
「ソラリスちゃん……」
「私はアレックスさんの味方ですよ、だってあなたは私の命の恩人で、それに私にとってかけがえの無い存在なんです」
「ソラリスちゃん……」
「アレックスさん、お願いします」
「わかった……」
ふたりはまっすぐ前を向いた。
「それでは判決を言い渡す、被告人アレックス・モーガンを死刑……」
「なん……だと……」
「待ってください!」
「まだ何かあるのか?」
「私の命と引き換えにアレックスさんだけは解放してください」
「なにっ!?」
「何を言って……」
「アレックスさん、聞いて下さい、アレックスさんはあの時、私を助けてくれた、そして今もこうして一緒に旅をしている、私はその事がとても嬉しいんです、でもこんな形で終わってしまうなんて……」
「ダメだよ!僕のせいで……僕がもっと強ければ……」
「いえ、アレックスさんは強かったです、ただ相手を間違えただけです」
「そんなこと……」
「アレックスさん、最後に一つだけ、私のわがままを聞いてくれますか?」
「うん、なんでも聞くよ!」
「生き延びてください」
「うう……分かったよ……」
ソラリスは再び前を向き、はっきりと言った。
「お願いがあります。私の生涯を捧げますので、この人の命だけは助けてあげて下さい」
「ソラリスちゃん……」
部屋がざわついている。審議しているようだ。
「……それでは判決を言おう」
「はい……」
「被告人ソラリスの願いを聞き入れ、アレックス・モーガンを懲役二年、奉仕活動三年の刑に処する」
「ありがとうございます……」
「そしてもうひとり、ソラリス・フリックを身代わり刑に処する」
「……」
「また自らの申し出があったことから、宮廷侍女として迎え入れることとする」
「えっ!?」
驚くアレックス。
「感謝致します」
ソラリスは深々と頭を下げた。
「その身を捧げて奉仕するがよい」
「さあ行くぞ、二人とも」
二人は連れていかれた。
「そんな……」
「アレックスさん、大丈夫です、きっとすぐに出てこれます」
「そうだね、また二人で冒険しよう」
「はいっ!」
「じゃあまたあとで」
「はい、また後ほど」
ソラリスとアレックスと別れ、それぞれ城の中の一室に連れていかれた。