4、
よろしくお願いします
ー身体が痛い
へそに手を突っ込まれて、ハラワタごと引き裂かれそうな痛みだ
身体が動かない、目も開かない
なのに何故か知覚できる、自分の身体が目の前にあると
何もない暗闇の先に自分がいる事が、なんとなく、しかし確実に分かる
手を動かして、へそを庇いたいが、動かせている気がしない
口を動かして、やめろと叫びたいが、音になった気がしない
脚を動かして、この場から逃げ出したいが、地面を踏んでる気がしない
目を開いて、何が起きているのか確認したいが、一点の光も存在しない
身体を動かし…身動ぎもできない
激痛に喘ぎ、泣き喚…涙も出ない
恐怖に狂い、意識を…無理解にも逃げられない
怖い恐い恐い怖い
ふと、へそから感じる痛みの中に先程までとは違った感触が混ざる
意識をへそにのみ向けて、全神経が集中すると、いつの間にか痛みは消えていた
しかし、今度は別の何かが痛い
へそ以外な気もするが、へそが痛い気もする、腕も足も心臓も脳も肺も、何処も痛い気がするが、いまいち違う
さっきよりは全然マシな痛みだが、何か、力の抜けるような痛みだ
肘を角にぶつけたような、力が入らない痛みに苛まれたまま、暗い世界に光がさして…
ーーーーーーー
目を覚ませば、昨日と同じ薄暗い森の中だ
へそに痛みはないし、脱力するような痛みもない
しかし、それは夢ではなかったのだろう
ズボンはまだ湿っており、地面には引き摺った跡
そして、何かを引き摺った後に散ったであろう赤い液体
なんとなくだが、自分の血だと思う
服とかちょっと裂けてるし、前面に血がべっとりついているんだ
身体に違和感なない事に、違和感しかないのだが
分からないことを考えても仕方がない
今日も太陽に背を向け歩いて行こう
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頭の中でアニソンを流しながら歩き続けたら、30曲目くらいで木の間隔が広がっているように感じた
少し先には、陽射しが射し込んでいる場所もある
そこからは、明るい方へと向かって歩いていき、ついに木のない場所にまで辿りついた
昨日ぶりの直射日光だ、一日だけとはいえ、なかなかに辛かった
森から抜けた事で気が緩むと、小腹がすいてきた
残ったグミと水筒の中身を飲み干して…
「…やっぱり、ない?」
カバンの中には、いつも通りの物が入っている
逆に言うと、いつも通りの物しか入っていない
「御守り」がなくなっている
二時間も並んで買った御守りが…
思い出すと、森で目覚めた時にはもう無かったはずだ
そうなると、異世界転移に準ずるこの謎の現象は、御守りが原因なのでは?
あの御守りが、何を祈願したものなのかは知らないが、何も描かれていない真っ白な御守りだった
〜祈願とも、柄もなく、高級感のある金の糸も使われていなかった
諸悪の根源である可能性が高い、思い出そうとするも、異質なまでに真っ白だった事しか分からない
とりあえず、森は出たし真っ直ぐ進むか
どこかで道とぶつかるだろう
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道……に辿りついたが、ここは相当田舎みたいだ
雑草が生い茂る中に、土が露出しているだけの道
まあ、日本にもあるだろうね、山とか田舎には
どちらに進もうか、道の先を注視してみると、左にはうっすらと建物のようなものが見えた
ようやく人に出会える
まずは、ここがどこだか教えてもらおう
そんな事を考えながら、道なりに歩いた
ーーーーーーー
近づくにつれわかったが、見えたのは大きな壁
進〇の巨人に出てくる程の高さはないが、10mくらいはありそうだ
衛兵みたいなのは立っていないが、入口らしきものはある…勝手に入っていいのだろうか…?
入口をくぐろうとすると、人が出てきた
「あるとぬぼれべみのこゆりぃだん?」
…いや、どこの何語だよ
一応、日本語で話しかけてみるか
「あの、ここってどこですか?」
……
……
お互いに「?」が浮かんでいる
身振り手振りで状況を伝えておくか
剣、怖い顔、友達、死んだ、俺、逃げる
(盗賊に襲われて、仲間が殺された、俺だけ逃げてきた)
勿論、カバーエピソードだ
目が覚めたら電車と共に森の中にいた
なんて説明できないし信じて貰えないだろう
衛兵も、なんとなく話がわかったようで、可哀想なものを見るような目で俺を見つめている
結局、壁の中には入れて貰えそうだが、ちょっと待ってろとジェスチャーされた
どうやら偉い人が来てくれるっぽい
しばらく待っていると、ガラガラという音が聞こえてきた
その音が止んだら、馬の鳴き声が…これは馬車か?
案の定、衛兵が呼びに来てくれた
偉い人とのご対面か…言葉が通じないとはいえ失礼のないようにしないとな
ヤバい、かなり緊張してきた
馬車のもとにまで案内されて、一番偉そうな人を探してみと
どう見ても異質な人がいる
騎士の甲冑を着ている人、衛兵の同僚らしき人、馬車の御者などの中に、若い女の人がいる
どう見てもシスター服を着ている
ここは教会の権力が強いのだろうか、少し…いや、かなり嫌な予感がする
やっぱり、ここは日本ではないだろうね
ありがとうございました