恋
私があなたをどれ程好きか、あなたは全然分かってない。
こんなに態度に出てるのに、あなたにまるで伝わってない。
いくら言葉に出来ないからって、あまりに酷い仕打ちじゃない?
いつも一緒にいた私を差し置いて、別の娘を選ぶなんて。
私とあなた、子どもの頃から一緒だった。
いつも二人で無邪気に遊んだ。
あなたはいつまでも子どもじみていたけど、私は先に大人になって、あなたを深く愛していた。
あんな娘、全然可愛くないじゃない。
私みたいに華奢じゃないし、きらきらと輝く瞳や、可愛い声ももってない。身のこなしだって、私みたいに優雅じゃない。
あんな冴えない娘を好きになるなんて、あなたは随分悪趣味だよね。
いつの間に恋なんて知ったの? ついこの間まで、子どもだったくせに。
そんなあなたのことなんて、私だってもうどうでもいい!
なんて……
そんなこと言えたらどんなに楽かなぁ……
本当は、分かってる。
彼女を愛しながらも、私のことも大切に思ってくれていること。
かまって欲しくて擦りよれば、あなたは優しく私を抱き寄せ、甘いキスもしてくれるだろう。
「おまえはいつも可愛いよ」ちゃんと言葉で伝えてもくれるだろう。
酷い男だって、誰かに同情してもらえるかな?
そんなものが欲しいわけじゃないけど……
あなたがあの娘を連れて来た。
今日からここで暮らすんだって。
どういう神経しているの?
「今日から、どうぞよろしくね」なんて、気安く話しかけないで!
私の身体に触れないで!
意地悪心がムクムクと、私の心を支配する。
全身の毛を逆立てて、精一杯の抵抗をする。
どうせ私は、年老いた小さな猫よ。
あなたにどうこう言えるはずもない。
愛するあなたの選んだ人と、仲良く暮らしていくしかないか……
でもね。新参者なんだから、ちょっとは遠慮しなさいね。
「うにゃーーん《調子に乗るんじゃないわよ》」私がそう言ったのに、あの娘ときたら「きゃあ! 可愛い! よろしくって言ってるのかな?」だって!
バカみたい! 尻尾の形をよく見なさいよーー!!
ふぅ。まだまだ躾が必要みたいね……