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学内カーストトップの美少女が嘘告してきたけど、実はネットゲームのフレンドでさらに両親が再婚して義兄妹になって恋に堕ちました…という恋愛をしてみようとするから手伝えと隣の席の美少女を口説いてみる。

掲載日:2020/10/17

ちょっと長めですが連載するには短いと思い短編にしました。

よろしくお願いいたします。

俺は赤塚あかつか烈火れっか

高校2年生。


名前とは裏腹に陰キャな性格だった。


しかし!

俺は様々なネット小説を読んで目覚めたのだ!


教室で最後列窓際は主人公の席!(←勘違い)


陰キャな男はモテる!(←大いなる勘違い)


特に美少女に!(←盛大なる勘違い)


そしてその恋の定番と言えば、『嘘告から付き合い始める』『ネットゲームのフレンドに現実出会ったら知り合いで、そのまま恋に落ちる』『互いの両親が再婚して義兄妹になって同居してイチャラブする』の3つだ!


俺はこれを現実にするっ!



「というわけで、朝霧さん。手伝ってほしいんだ」

「な、何よ急に?」


俺は下校時刻になってみんなが帰っていき、他に誰も居ないのを見計らって、隣の席の朝霧あさぎりはるかさんに声をかける。


「俺とネットゲームを一緒にしてフレンドにならないか?」

「え?」

「それから1年くらいしたら、俺に嘘告してほしいんだ」

「は?」

「それからオフ会で実はネットゲームの知り合いが現実の知り合いだと驚いて」

「え?」

「それからお互いの両親を再婚させて義兄妹になって」

「ええっ?!」

「それから恋に堕ちたいんだ」

「馬鹿なの?!」


一蹴された。


「どうして駄目なんだ?」

「まず、いきなりすぎて訳がわからないから!」

「そうか?」

「それから、あなたって私どころかクラスの誰とも話したことないわよね?」

「うん。陰キャだからね」

「自分でそれ言うの?!」

「でも陰キャは本当はモテるんだ」

「そんなわけないわよ!」


何でそんなに否定するんだ?


「じゃあ、『小説家をやろう』のサイトで・・・と・・・と・・・を読んでみろ!」

「何で私が読まないといけないのよ!」

「朝霧さんが一番美人だから頼んでるんだ!」

「え゛?」


少しほほを染める朝霧さん。


「その長くて艶やかな黒髪。大きい目と吸い込まれそうな黒い瞳…あれ?青い?」

「あなた、私の瞳の色も知らないで褒めようとしてたの?!」

「ごめん!隣の席だけど、じっと正面から見たことなんて無かったから」

「それにしてもいい加減過ぎない?」

「じゃあ、じっくり正面から見ていい?」

「やめてよ、恥ずかしいから!」

「だって、すごい綺麗な青だよ。あれ?朝霧さんって日本人だよね?」

「お母さんがフランス人なの!」

「お父さんは居なかったよね?」

「何で知ってるの?!」


驚いた顔をしながらちょっと引き気味の朝霧さん。


「1年生の時にお父さんのお葬式で早退したでしょう?」

「あっ、そっか」


ストーカーみたいに調べたわけじゃないからな。


「それで朝霧さんの唇は…」

「もう十分よ!どこまで褒める気?」

「あと可愛い耳と綺麗な肌とうなじと…」

「まさか…」

「引き締まった腰と安産型のお尻とすらりとした足を褒めたかったのに」

「胸はっ?!まさか私の胸はスルーなの?!」


どんっっと大きな胸を張って主張する朝霧さん。


「だって胸を褒めたら『この変態!』って言うよね?」

「勝手に先読みしないで!」

「じゃあ言うよ。大きいだけでなく形も良くて母性を感じさせてくれる胸が素晴らしい」

「この変態!」

「ほら」

「あっ…だって、普通そう言うわよ!」

「だからやめておいたんだけど」

「むうう」


むすっとする朝霧さん。


「というか、何?あなたってこんなに話しやすかったの?」

「むしろ俺もこんなに朝霧さんが話しやすいと思わなかったけど」

「もしかして…ううん、そんなわけないし。でも、ううう」

「どうしたの?」


何かごちゃごちゃ言い始めたぞ。


「とにかくもう帰るから!」


ぷんすかという感じで朝霧さんは帰って行ってしまった。


あーあ。だめだったか。

そう簡単に小説のようにはいかないもんだなあ。






○遥視点〇


初めて話したけど赤塚くんってあんな性格だったんだ。


それにしても、あれ何?

私の事口説いてるの?

それとも小説の内容を体験したいだけ?


本当に意味わかんないんだけど。


でも話しててちょっと楽しかったかも…ちょっとだけね。


だからもしかしたら相性良いのかもって思っちゃったのよ。


まあ、これからちょっとお話くらいはしてもいいわよね。




さて、明日は1学期の期末テスト初日だから頑張らないと。



ちょっと休憩しようかしら。


私は本棚からお気に入りの小説を取り出しかけてその手を止める。


「そういえば赤塚君が言ってた小説って、ネットで読めるのよね」


私はその小説をスマホで探してみる。


…これね。


まあまあ面白いじゃないの。



ううう。やっとお互いの想いに気づいたのね。


はっ?!

今何時?


もう少しだけ。切れ目が付くまでもうちょっとだけ…










○烈火視点〇


「あれ?遥どうしたの?」

「ん…ん…うん?なに?」

「眠そうね。夕べそんなにテスト勉強頑張ったの?」

「まあ…ね」

「また成績トップは確定ね!」

「それならいいけど…ふわあ」


なんて隣の席で朝霧さんと友達が話している。




テストが始まった。


ころん


あっ!消しゴム落とした!

しかも隣の朝霧さんの席近くまで転がってしまった!


こういう時は自分で拾わないように言われている。

カンニング防止のためだ。


しかし俺は見てしまった。


朝霧さんが鉛筆を持ったまま眠っているところを。


いかん!


俺は消しゴムを拾う振りをしてわざと頭を朝霧さんの机にぶつけた。


ゴンッ


「きゃっ!」


朝霧さんの声を聞きつけて先生が飛んでくる。


「赤塚!何をやってる!」

「消しゴムが転がったので」

「先生に言えと言ってあるはずだ!」

「ごめんなさい」

「お前の答案用紙は没収だ」


そう言って俺の答案用紙を回収してしまう先生。


はあ、まだテスト始まったばっかりなのに。


まあいつも赤点ギリギリだけどな。


このテストは確実に赤点だから、夏休みの補習は覚悟しておくか。



テストを強制終了させられたからもう彼女の方を見ていてもいいよな。


かりかりかり


真面目にテストに取り組む朝霧さんも綺麗だな。


かりかりかり

かりかりかり

かりか…


ん?


うつらうつら


またかっ!



俺は消しゴムを小さく千切ると、先生が横を見た隙に朝霧さんの顔に弾き飛ばした。


「んぅ?!あっ!」


目を覚ましてまたテストを再開する朝霧さん。


よしよし。


それにしてもいつもあんな風なのか?

それでよく1年生の時からずっと学年トップ取れてるよな。





休み時間。


「これ」


朝霧さんからメモを渡された。


『RINE交換して』


え?


見ると、コードを表示させたRINEをこちらに見せている。


しかもキョロキョロして周りの視線を気にしているようだ。


幸いみんな次のテストの勉強に忙しくて、最後列の俺たちのやり取りには気づいていない。


俺はコードを読み込んで友達を追加すると、さっそくRINEが送られてきた。


『ありがとう。消しゴム拾おうとして私の机にぶつかったのって、起こしてくれるためだったのね?』

『気のせいだよ』

『正直に言って。だって、そのあともうとうとするたびに、私に消しゴムの切れ端ぶつけて来たよね?』

『気のせいだって』

『一発、私の胸に当たったんだけど。スケベ』

『ごめん!そんなつもりは無かったんだ!朝霧さんの目が覚めればいいと思って!』

『やっぱりね。うそよ。胸には当ってないわ。でもテスト取り上げられたのは私のせいよね』

『気にしないで。どうせいつも点数悪いから』

『赤点が1科目だけなら補習じゃなくて、プリント提出で済むって知ってる?』

『もちろん』

『大丈夫そうなの?』

『今日の残り科目は大丈夫だろうけど、明日以降のテストであと1科目くらいは赤点になるかも』

『それなら、一緒に勉強しない?』


「え?」


思わず声を出して隣の朝霧さんを見てしまう。


すると隣で朝霧さんはにこっと微笑んでいた。


『帰りに園芸部の部室で待ってるね』


園芸部は朝霧さんが所属するクラブだけど…。


『園芸部に部室ってあるの?』

『あるわよ!屋上手前の倉庫ね』


え?


立ち入り禁止の屋上の手前に、倉庫なんてあったっけ?






俺は放課後屋上への階段を上った。


屋上への扉はもちろん施錠されている。


そしてその手前に倉庫があるが…あっ!


『園芸部』と書かれた札がドアにぶら下げられている。


コンコン


「ノックは3回よ」


そう言ってドアを開けてくれる朝霧さん。


「じゃあ、俺たちってもう親しい間柄ってこと?」

「え゛?」

「ほら見て」


俺は『ノックの数』でネット検索した結果を見せる。


2回はトイレの在室確認。

3回は家族、恋人、友人など親しい間柄。

4回以上は礼儀が必要な場所。


「何これ?ただの知り合いとか初対面とかが書いてないわ」

「3回でいいってことは恋人…」

「友達よ!」


よし、ただのクラスメイトから友達に昇格したぞ。


園芸部の部室は元々倉庫だっただけあり、窓は小さく、中は蒸し暑かった。


「こんな暑いところでするの?」

「扇風機があるから大丈夫よ」


ぶーんと扇風機を回してくれる。


「それにしても今日はどうしたの?あんなにうとうとして」

「あなたのせいよ」

「まさか俺の事を一晩中考えて眠れなかったとか」

「はあ?!」


『ジト目』というのを初めて見たぞ。


「じゃあ何なの?」

「あなたが教えてくれた小説を読んでいたら寝られなくなったのよ!」


そっちか!


「『学内カーストトップの美少女が陰キャな俺に嘘告してきたけど、いつの間にか本当の恋人になりました』ってのを勉強の合間に読んでいたら、止まらなくなったのよ!」

「それはネット小説あるあるだな」

「しかも何?これって完結してないの?!続きがすごく気になるんだけど!」

「え?200話くらいあったよね?」

「全部読んだわよ!」


どれだけ速読?!

いや、それ以前に寝てるの?

そもそもそれで勉強できたの?


「夕べ何時間寝た?」

「机に突っ伏して朝を迎えたわ」


それはあかんやつや。


「俺に勉強教えるより寝たら?」

「いいわよ。あなたの成績のほうが心配だから」

「いや、これって結局全部俺のせいじゃないか。だから自業自得だよ」

「いいの!私がいいって言ってるんだから!」


手を掴まれて、無理やりベッドに座らされた。


ひんやりしてるけど、柔らかい手にドキドキさせられる。


…って、なぜベッド?


「机って、そこだよね?」


床にちゃぶ台みたいな机と座布団が敷いてある。


「私、床の上に座るの苦手なの!」


そう言って、折り畳み机を運んできて、俺の前に設置する。

そして、朝霧さんも俺の隣に座る。


「これで勉強できるでしょう?」


確かに。


「ところで、なんでベッドがあるの?」

「これは元々保健室にあって、廃棄するはずだったものらしいわ」


なるほどね。


とりあえず勉強を始める。



「おお」

「何が『おお』なのよ」

「朝霧さんの説明ってわかりやすいな」

「そ、そうかしら?」

「うん。先生よりずっとわかりやすい」

「本当?!」


ぱああっと表情を輝かせる朝霧さん。


「私ね!将来先生になりたいの!それも塾講師!」

「どうして?」

「お父さんがそうだったの。聞いたことない?『朝霧親分の古文』って」

「え?万台予備校の?」


ちょっといかつい顔の塾講師だ。

そのせいで付いたあだ名が、教えているのが古文(子分)だけに『朝霧親分』。


塾のCMだけでなく、テレビにもたまに出ていた有名人だ。


「そうよ。あれ、私のお父さん」

「すげえ有名人じゃないか!参考書が書店でいつも目立つところにあるよね!」


俺もそれを1冊だけ持っている。


「俺は予備校行ってないけど、本に書いてある説明とかすごくわかりやすかったよ」

「そう?みんなそういってくれるの。でもお父さん…ガンだったんだ」

「え?」


ガン宣告されてこのままだと余命1年と言われていた。


手術による入院を勧められたが、『生徒たちが俺を待っているんだ!』と言って抗がん剤による治療だけで塾講師を続け、ついには末期がんに。


それでも死ぬ直前まで痛みに耐えて講義をしたという。


「ひどいお父さんでしょ?塾の生徒の事だけ考えて、残された家族の事なんて考えてないんだから」

「でも、朝霧さんは本当はひどいお父さんって思ってないんでしょう?」

「どうして?」

「だって、本当にそう思っているなら、塾講師になろうなんて思わないよ」

「…そうよ。だって、塾で教えているお父さんを見たことがあるけど、すごく生き生きとしていたの!そして授業を聞いている生徒たちもみんな真剣で、そして授業が終わるとみんなが口々に『先生!ありがとうございました』『すごくよくわかりました』って言ってるのよ。その時の満足そうなお父さんの顔を見たから…」


ぽろぽろと涙をこぼす朝霧さん。


「『入院するより授業をしたい』なんて言われて、止められるはずなかったもの…うう…」


涙が教科書を濡らしていく。


「本当にひどいのは私なの!お母さんは『入院して!』って言ったのに、私は『お父さんの好きにさせてあげて』って言ったから!私が!私がお父さんを殺したの!」

「手術をしたら絶対に助かったのか?」

「ううん、五分五分だって言われてた」

「それなら…お父さんが最後まで自分の信念を貫くことができたのは、朝霧さんのおかげだよ」

「私のおかげ?」

「きっとみんなに反対されたら決心が揺らいだかもしれない。それで手術をして助からなければ、さらに後悔したまま…」

「それでもっ!生きる可能性はあったのっ!なのにっ!だからお父さんを死なせたのは私の『罪』なの!これをずっと背負っていかないといけない『罪』なの!」

「それなら、半分俺に分けろ!」

「え?」


きょとんとする朝霧さん。


「俺も朝霧親分の本で勉強したから、もし『朝霧親分が病気で引退する』なんて言ったら、きっと『俺たち受験生のためにやめないでくれ!』って言ったと思う。だから俺にも半分その罪をよこせ!」

「な…なによそれ。無理やりすぎるわよ」


ハンカチで涙をぬぐうと、もう涙は止まっているようだ。


「赤塚君には全然責任ないでしょ?それにきっと赤塚君なら『やめないでくれ』なんて言わないわ」

「いや、言う。絶対に言うから、俺にも朝霧さんの『罪』を分けろ!」

「どうやって分けろって言うの?」

「このことで悩んで辛くなったら俺に話せ。それで二人で一緒に苦しんで慰め合うんだ」

「…あなたって本当に訳の分からないことばかり言うのね。そんなことできると思うの?」

「やってみないとわからないだろ?」

「そうね…」




○遥視点〇


本当に無茶苦茶な思考してるわ。


私の『罪』を半分分けろだなんて…。


うっ…だめ。

また泣いてしまうわ。


だって…嬉しいじゃない。

そんなこと言ってくれるなんて。


ちょっとだけ見直したかも。


「ねえ、赤塚君」

「何?」

「そろそろ休憩しようか?」

「そうだな」


私も赤塚君もスマホを取り出す。


赤塚君はゲームをしているのね。


そして私は赤塚君に教えてもらった2つ目の小説『ネットゲームのフレンドとオフ会をしたら、難攻不落と言われる隣の席の美少女でした』を読むことにするわ。


ふうん。

まあ、こういう偶然は小説だから許されるわよね。


え?そんな葛藤が?


ええっ?!そこでどうして逃げるの?!


あああっ!だめ!そこは相手を信じてあげないと!


「…さん。朝霧さん」

「え?あ?赤塚君、何かしら?」

「そろそろ勉強再開しない?」

「そ、そうね」


いけないわ。

ついのめり込んでしまったわ。




そして1時間後。


「休憩取りましょう」

「そうだね」


そして私は素早く小説の続きを見る。


これ300話以上もあるのね。

今日中に読めるかしら?


ああっ、もどかしいっ!

もう!さっさとこの二人くっつけばいいのに!


え?ここで新しいヒロイン投入?!

作者ふざけてるの?!


過去にそんなことが?!

あの伏線がこんなところで?!



…そろそろ勉強しないといけないのに、また止められないんだけど!


赤塚君はゲームしてるみたいだけど、切れ目とか付くのかしら?


ん?


RPGっぽいゲームに見えたけど、何か文字を打ち込んでる?


こそっと覗くと、ゲーム内のチャットで会話をしているっぽい。


≪レッドフレイム≫いいな、社会人はテストが無くて。

≪AKV47≫うふふ、がんばりなさいよ。それが終われば夏休みでしょう?

≪レッドフレイム≫ちなみに今、友達と勉強会してる。

≪AKV47≫男友達と?女の子も居るのかしら?

≪レッドフレイム≫ううん、女の子一人だけ。

≪AKV47≫ええっ?!

≪レッドフレイム≫しかもすごい美人。


すごい美人って私の事?!

美人とか可愛いとか結構言われ慣れてるけど、どうしてこんな文字で書かれたのを見ただけで照れくさくなるの?


赤塚君だから?


「ん?」


覗き込んでいる私に気づいたのか、いきなりこっちを向く赤塚君。


顔、近い、近いからっ!


「な、何?」

「あ、あのね。そろそろ勉強しない?」

「そ、そうだな」


赤塚君も顔が近くてちょっと赤くなってる。




赤塚君、私と小説みたいな恋愛したいって言ってたわよね。


つまり私の事が好きってことよね?


それとも『小説みたいな恋を体験したい』ってだけ?


美人だってまた言われた…というか書かれたし。


私は赤塚君の事を…


「…ってどういう意味?」

「え?わ、私はまだ好きとかじゃなくて」

「え?いや、こっちの訳。『私は好きではなくむしろ嫌い』のあとのやつ」

「あっ、それなら『でも嫌いなままではいられない』よ」


うっかり自分の気持ちを話しちゃうところだったわ!






そして夕方まで勉強会をしてから下校した。



夜ご飯。


お父さんが死んでも遺してくれた貯金だけでお母さんと二人で暮らしていけるくらいだったけど、お母さんは仕事を辞めていない。


しかも泊りがけの出張が多いから、夕食は私ひとりきり。



一人寂しいので食事をしながらテレビを付けていると、どこかで見たようなCMが流れていた。



『夏が近づき、精霊たちは海辺で宴を繰り広げる。今なら500連ガチャ無料!』


いつも興味を持たないソシャゲのCM。


こんな時間にエッチな格好をした女性キャラが出るゲームのCMなんてしないでよと思っていたけど…。


「今の画面、赤塚君がやっていたゲームと同じ?」


私は思わずスマホを取り出して、それをインストールしてしまう。


って、ダウンロード長いわよ!

チュートリアルも長いし、それが済んだらまた追加のダウンロードがあるの?!


え?ここでやっと名前入力?


朝霧だから『モーニングミスト』とか?


駄目だわ。すぐバレちゃう。

『レッドフレイム』みたいに名前からもじったのは駄目よね。


≪ミス・モーニング≫


これだわ!


…やっとガチャが引けるのね。

って、500連って50日連続ログインした場合じゃないの!


どれがいいキャラなのかさっぱりわからないけど…あっ、男性キャラもあるのね。

結構かっこいいの引いたかも。


え?ここでフレンドを登録するの?


誰がいいとか全然わからないけど適当に…。


今度は『ギルド』に加入?


ギルドって何?

ヘルプ機能で…ふんふん。


えっと、どこに入ればいいのかしら?


そういえばチャットがあったわ。


≪ミス・モーニング≫どなたか、おすすめのギルド教えてください。


反応は…わっ!すごいっ!


≪あめば≫ミスって女の子?

≪対価の会心≫女の子でも安心のうちのギルドに!

≪AKV47≫うちは初心者大歓迎よ。


あああああっ!

この人、赤塚君とチャットで話していた人だ!


≪ミス・モーニング≫AKV47さん!ぜひ入れてください!

≪AKV47≫では私の名前の所をタップして、ギルド名を選択して申請をしてください。



こうして私はAKV47さんのギルドに入りました。


ですけど…。

思わずギルドチャットでつぶやいてしまったんです。


≪ミス・モーニング≫レッドフレイムさんってこのギルドに居ないんですか?!

≪AKV47≫え?彼の知り合いなの?


あっ!しまった!


≪ミス・モーニング≫いえ、間違えました。


危ないところでした。

危うく私が彼を探しているのがバレてしまう所でした。


ん?

何でしょうこれは?


AKV47さんから個人チャットの申し込み?


≪ミス・モーニング≫はい。何の御用でしょうか?

≪AKV47≫あなたはレッドフレイムくんの知り合いなの?

≪ミス・モーニング≫いえ、知らない人です。勘違いでした。

≪AKV47≫もしかして、レッドフレイムくんと一緒に勉強していた美人さんかしら?

≪ミス・モーニング≫別に彼が言うほどの美人じゃないですから。

≪AKV47≫ええっ?そっちを否定するの?


ああっ!しまった!

人違いですとか言うんだったわ!


≪ミス・モーニング≫お願いです。彼には黙っていてください。

≪AKV47≫いいわよ。でもまさか彼を追っかけてこのゲームにねえ。

≪ミス・モーニング≫ゲームしているのを後ろから見て、名前を覚えたので。

≪AKV47≫それで私と会話していたのを見て、私と同じギルドだと思ったのね。

≪ミス・モーニング≫はい。というか、そもそもギルドって何かも知らなかったです。

≪AKV47≫え?こういうゲーム初めて?

≪ミス・モーニング≫はい。

≪AKV47≫すごいわね。それで、どうしたいの?

≪ミス・モーニング≫どうしたいって?

≪AKV47≫ここに来た目的よ。

≪ミス・モーニング≫レッドフレイムさんとゲームで仲良くなって、実際に会って驚かせたいなって。

≪AKV47≫そんな小説みたいなこと、本気でやるの?

≪ミス・モーニング≫面白そうだから。

≪AKV47≫それで恋に落ちるのかしら?

≪ミス・モーニング≫え?

≪AKV47≫そういう目的じゃなくて?

≪ミス・モーニング≫小説を読んで、ちょっとそういう体験したいなって思っただけです。

≪AKV47≫どんな小説?

≪ミス・モーニング≫『ネットゲームのフレンドとオフ会をしたら、難攻不落と言われる隣の席の美少女でした』ですけど。


あれ?返事が無いわ。



まだかしら?


≪AKV47≫ごめんね。ちょっと急ぎのRINEが来てたから、そっちに返事してたの。

≪ミス・モーニング≫いえ、気にしないでください。

≪AKV47≫ねえ、レッドフレイムくんと仲良くなれるようにしてあげようか?

≪ミス・モーニング≫本当ですか?!


こうして私はAKV47さんとフレンドになった。


さて…今夜はこれ以上ゲームをしていられないわ。


小説の続きを読みたいけど我慢して、勉強してからきちんと寝ないと。





○烈火視点○


2日目のテストが始まった。


おお、いい調子だ。


昨日の勉強の成果が出ている。


そして朝霧さんも今日は眠くなっていないみたいだな。





「お疲れ様」


何と朝霧さんがテストを終えた俺に声をかけてくれた。


「え?」

「今、朝霧さんが陰キャの赤塚に話しかけた?」

「嘘だろ?」


注目が集まり、自分が何をしでかしたか気づいてあたふたする朝霧さん。


「あ、えっと、みんなお疲れ様!明日もがんばろうね!」


クラス全体にそう言う朝霧さん。


「え?あ、はい!」

「おう!頑張ろうぜ!」

「そうね!がんばりましょう!」


「がんばるぞ!」

「「「「「おー!」」」」」


何だか急にクラスが一丸になっている。


やっぱり俺なんかと朝霧さんは住む世界が違うんだな。


ピロン


ん?朝霧さんからのRINE?


『ごめんね。私と噂になると迷惑だと思ったから』


俺と噂になって迷惑なのはむしろ朝霧さんのほうじゃないのか?


『気にしてないからいいよ』

『それなら、今日も一緒に勉強するよね?しよう。して。するべし』


何?この活用してからの命令形は?

古文でもこんな変な活用無いよね?


『してほしいの』

『よろこんで!』


どこぞの酒場の従業員並みの条件反射で返信していた。


『してほしいの』とか可愛すぎるだろ!






そして今日も園芸部の部室で勉強をする。


「じゃあ休憩ね」

「うん」


俺はいつものようにスマホのゲームを起動してダンジョンを自動周回させつつ、フレンドと会話する。


≪レッドフレイム≫勉強会なう

≪AKV47≫今時『なう』じゃないわよ。勉強はかどってるかしら?

≪レッドフレイム≫うん、彼女は教え方うまいから。

≪AKV47≫彼女ねえ(ニヒヒという感じのスタンプ)

≪レッドフレイム≫恋人って意味の彼女じゃないからな!

≪AKV47≫はいはい。

≪レッドフレイム≫ところで今回のイベントはフレンドとペアを組まないといけないだろ。だから俺と…




○遥視点〇


赤塚君に勧められた2つ目の小説はまだ読みかけだけど、切れ目がいい所にしてあるから、3つ目の小説を先に読もうかしら。


えっとタイトルでグールグル検索して…


『100人振ったと言われる鉄壁美少女が両親の再婚で義妹になりましたが、家では無防備すぎる上に『お義兄ちゃん♡』と甘えてくる』


検索結果は…あったわ!


あら?2つあるわ?


『【やろう版】100人振ったと言われる鉄壁美少女が両親の再婚で義妹になりましたが、家では無防備すぎる上に『お義兄ちゃん♡』と甘えてくる』

『【ノリターン版】100人振ったと言われる鉄壁美少女が両親の再婚で義妹になりましたが、家では無防備すぎる上に『お義兄ちゃん♡』と甘えてくる』


どっちなの?

えっと…ノリターン版っていう方は30話しかないわ。

やろう版は100話以上あるわね。


時間が無いからとりあえず、少ない方を読むことにするわ。





いよいよ両親が再婚して初めての顔合わせね!


やっぱり驚くわよね。


ヒロインはぶっきらぼうに挨拶して、すぐ部屋に閉じこもって…。


どうやって仲良くなっていくのかしら?


えっ?お風呂を出てからブラ無しの大きなシャツ1枚で家の中を歩き回ってるの?!


しかも義兄おにいちゃんの前でかがんで、シャツの中とか見えそう?!


ちょ、ちょっと無防備どころじゃないんじゃないの?


しかも見られてるって気づいても無視するの?

鉄壁の表情のままってどういうこと?


『どうやら以前の家ではこういう生活をしていたらしい』って、異性と一緒の家に住むようになったらそんなことしないって!


とうとう学校でもお義兄ちゃんのことが気になり始めるのね。


鉄壁の表情が崩れて甘えんぼうになっていくのが面白いわ。


二人っきりで留守番?


ベッドに並んで座って、『スマブル』って対戦ゲームをし始めたわ。


お義兄ちゃんは容赦なく勝ってるわね。

ちょっとやりすぎじゃないかしら?


『暑いわねえ』


義妹が脱いだわ!またシャツ1枚よ!


ああっやっぱり横目で義兄ちゃんがチラチラ見ててゲームにならないじゃないの。


勝った妹が大喜びして後ろに倒れて、負けた義兄ちゃんも後ろに倒れて…


ベッドの上で見つめ合うの?!

ま、まさかこのままキス?!


え?

う?

ちょっと?

そ、それはいくらなんでもやりすぎ…


「いやああああああっ!」

「どうした?朝霧さん!」

「赤塚君の馬鹿!エッチ!変態!」

「え?」

「赤塚君が勧めてくれた小説!エッチな小説じゃないの!」

「え?そんなはずは…」

「これよ!」

「しまった!R18のほうもあったんだ!」

「え?」



どうやら、作者が全年齢版だけでなく18禁版も書き始めていたらしくて…


私にはその区別がつかなくて、18禁版の方を読んでしまったみたい。


「ごめん。『ノリターン』はエッチな小説のサイトだから違うって先に言っておけばよかった」

「い、いいのよ別に」


そういえば…今の状況って、さっきの話に似てない?


ベッドの上で横に並んで座って…


わ、私が制服を脱いでシャツ一枚になって、それからベッドに倒れ込んだら赤塚君はどうするのかしら?


やらないけどっ!


「何だか今日は扇風機かけてあっても暑いな」


そう言っていきなりカッターシャツを脱いでTシャツになる赤塚君。


どきどきどきどき


わ、私もすごく暑くなってきたみたい。


「そ、そうね」


私も夏服のボタンをはずし…脱…脱…脱…脱げないっ!


胸元のボタン1つが精一杯だわ。




勉強再開。



「これが…で…」

「うん…」


あれ?


赤塚君の視線が…教科書じゃなくて私の胸元に?


あの角度だと…まさかブラ見えてる?!


やっぱり赤塚君はスケベだわ!

で、でも、ボタン外したのは私よね。


こういう時、どうしたら…。


ちらっ


今度は前かがみになった赤塚君の胸元からシャツの中が見える。


あああっ!見えてはいけないものがっ!

乳首は見えても、男の子だからいいのよね。


で、でも、ううん、考えたら駄目!


勉強勉強!





「はい、これで明日のテスト範囲は終わりね」

「終わったーっ!」


思いっきり伸びをして、ベッドに仰向けに倒れ込む赤塚君。


男性が先に倒れ込むって、私がさっき見ていたシーンと順番が逆よね。


私は…


「うーん、おわったわねー!」


と伸びをしながらその隣に倒れ込んでしまった。


「……」

「……」


ベッドで並んで寝ている二人。


お互いに天井を見ている。


「……」

「……」


何も言えない。


もし、相手の方を見てしまったら…どうなってしまうかが怖い。


まだゲームでフレンドにもなってないし、両親を再婚させてもいないし。


いや、そこまでする気はないけど、そうなったら面白いのにと思ってしまう私がいる。


「……」

「……」


そろそろ起き上がらないと。


私は手をついて体を起こそうとする。


ぎゅっ


「えっ?!」

「きゃっ!」


私と同じタイミングでベッドに手をつこうとした赤塚君の手が、私の手を押さえつけるように重なってしまう。


ばばっ


二人とも慌てて手をどける。


「ごめん!」

「ごめんね!」


同時に謝って相手の顔を見てしまう。


ベッドに寝たまま、目の前に相手の顔がある。


「……」

「……」


見つめ合ったまま動けない。




「も、もう帰ろうか」

「そ、そうね」


二人とも意気地無しでよかったわ。




家に帰ると急いで全年齢版の小説を読む。


ベッドに二人で寝転ぶシーンでは…


『しばらく二人は顔を見合わせていたが、どちらからともなく顔が近づいていく。しかし、キスの直前に下校の鐘がなる』


このシーンは義兄妹になってからだからキスしようとしたのよね。


まだ私たち、友達でしかないから。


…べ、別に義兄妹になったらキスしてもいいなんて思ってないからね!



コンコンコン


「遥。ちょっといいかしら?」


珍しくお母さんが私の部屋に来た。


「あのね、ちょっとお話があるの」

「なあに?」

「実は…ずっと黙っていたんだけど、私、お付き合いしたい男性が居るの」


まさか?!


「ごめんね。去年あの人が亡くなったばかりなのに…」

「ううん、もう一周忌も過ぎてるし…お母さんも一人だと大変よね」

「遥がいい子だから手はかからないんだけど、自分一人だと色々ね…」

「それで、相手はどんな人なの?」

「名前を言ってもわからないと思うけど、横山さん」


赤塚さんじゃないのね…。


「…か赤塚さん」

「『か』って何よ!二股なの?!」


とか怒りつつ、赤塚さんという名前を聞いてドキッとする。


「違うわよ!同じ会社の同僚で、前から仲良くしてるのよ」

「それで、相手はバツイチなの?」

「横山さんは私と同い年だけど結婚したこと無いそうよ。赤塚さんは私より2つ年上でかなり前に奥さんが亡くなられているそうなの」

「ふうん」


それ、きっと赤塚君のお父さんだよね。



「それでね、二人からほとんど同時に結婚を前提に付き合ってほしいって言われて…」

「嫌なの?」

「ううん、正直二人ともいい人なのよ。だけど…結婚するなら遥の意見も聞きたくて」


赤塚さんにして!という言葉を必死に押さえる。


「自分が好きな人を選べばいいんじゃないの?」

「同じくらいなのよねえ。でも、赤塚さんはお子さんが居るそうなのよ。確かあなたと同い年くらいじゃなかったかしら?」


やっぱり?!


「名前は…」

「名前は?」

廉也れんやくんよ」

「れんや?聞き間違いじゃなくて?」

「間違いないわ。良くできた息子って自慢してたから」


…ああっ!


赤塚廉也って、1年生の時に私に告白してきた人だわ!

イケメンだけど何だか女ったらしぽくって断ったのよね。

実際にそうだったんだけど。


「却下です!そっちは駄目っ!」

「え?知り合いなの?」

「う…うん」

「何だか嫌そうね。何かあったの?」

「まあ、ね」

「じゃあやめておくわ」

「はあ、烈火じゃなかったのかあ」



私のそのつぶやきをお母さんは聞き逃さなかった。


「え?烈火?まさか赤塚くんところの?」

「『くん』?」

「うちの会社に赤塚くんって呼んでる子が居るのよ。私の後輩で5つ年下よ」

「その人の息子さんって烈火って言うの?」

「そうよ。あら、知り合いだったの?」

「同じクラスだから」

「赤塚くんかあ。ここ数年、仕事以外の話とかしてないわね」

「そうなの?」

「まあ、知り合いではあるけどね」


がっかりね。

せっかく小説みたいなことが起こるかもしれないと思ったのに。


「じゃあ、赤塚さんはやめて横山さんにするわね」

「うん」


5つも年下の赤塚くんにしてなんて言えないわよね。


はあ、やっぱり現実ってこんなものよね。







○烈火視点○


あやうくキスしてしまう所だった。


って、できるわけないよね。

単なる友達だし。


どうしよう。

RINEで朝霧さんと話すのがなんか怖い。


とりあえずAKV47さんに相談しよう。

あの人は本物の女性かオネエかわからないけど、頼れる感じがするんだよな。




≪AKV47≫やあ!

≪レッドフレイム≫やあ

≪AKV47≫あれ?何だか元気ないわね。

≪レッドフレイム≫ちょっと悩み事があって。

≪AKV47≫そうなの?ところで、紹介したい人が居るんだけど。

≪レッドフレイム≫誰?

≪AKV47≫始めたばかりの新人がうちのギルドに入ってきたのよ。

≪レッドフレイム≫それでどうして俺に紹介するんだ?

≪AKV47≫今度のイベント、『ペアマッチ』でしょ?

≪レッドフレイム≫そうだな。ペアを組んで、イベントをクリアしていくんだけど…あれ?俺と組んでくれるんじゃなかったの?!まさかその人と組むの?!

≪AKV47≫逆だよ。その子と組んでほしいんだ。

≪レッドフレイム≫え?どうして?

≪AKV47≫私は他の人と組むことになったから。どうしても断りきれなくて、ごめんなさい!

≪レッドフレイム≫それなら仕方ないよ。でも新人かあ。

≪AKV47≫何も知らないみたいだから、手取り足取り教えてあげてね。

≪レッドフレイム≫え?そこまでの新人?

≪AKV47≫ソシャゲそのものを昨日始めたばかりだそうよ。

≪レッドフレイム≫マジか。

≪AKV47≫いいじゃないの。今CMでも大勢新規プレイヤーを呼んでいるし、新人とペアを組むと特別なアイテムもらえるでしょ?

≪レッドフレイム≫それがあったか!

≪AKV47≫え?知らなかったの?

≪レッドフレイム≫試験勉強中だから忘れていたよ。

≪AKV47≫試験は明日までよね?

≪レッドフレイム≫うん。何だか明日もいい点が取れそうだよ。

≪AKV47≫それは勉強会のおかげ?

≪レッドフレイム≫うん。

≪AKV47≫美人の彼女に感謝しないとね。

≪レッドフレイム≫そうなんだけど…。


俺は今日の出来事をAKV47さんに話した。


≪AKV47≫もう両想いなんじゃないの?

≪レッドフレイム≫そうなのかな?まだ仲良くなって3日目だよ

≪AKV47≫普通、そこまでして脈無しとかありえないわ

≪レッドフレイム≫そうかもしれないけど…教室でさ…


俺と仲良さそうに見られるのを嫌がった朝霧さんの事を話した。


≪AKV47≫それは照れただけかもしれないわよ。

≪レッドフレイム≫そうかな?

≪AKV47≫自信持ちなさいよ。自信を失ったらおしまいなんだから。

≪レッドフレイム≫わかったよ。ありがとう。

≪AKV47≫じゃあ、うちのギルドメンバーから『ミス・モーニング』さんを選んで、声をかけてね。


ミス・モーニング?


モーニングと聞いて、俺は霧さんを思い出した。


俺は赤塚烈火だから、赤い烈火で、『レッドフレイム』。


朝霧遥さんだと…モーニング・ミスト・ファーラウェイ?


制限は8文字までだよな。


モーニングミストで8文字か。


ミス・モーニングってそれと近すぎる気がするけど…。


それこそありえない偶然だよな。

小説じゃあるまいし。



俺はミス・モーニングさんにフレンド申請を出す。



おっ、受理されたな。


≪レッドフレイム≫フレンド受理ありがとう。

≪ミス・モーニング≫初めまして。私はミス・モーニングです。よろしくお願いいたします


うわあ、めっちゃ固いぞ。


≪レッドフレイム≫緊張してる?

≪ミス・モーニング≫いえ。大丈夫です。

≪レッドフレイム≫ゲーム始めたばかりなんだって?

≪ミス・モーニング≫はい。

≪レッドフレイム≫10連やってみた?リセマラは?

≪ミス・モーニング≫リセマラ?

≪レッドフレイム≫あっ、それも知らないのか。じゃあ星5って出た?

≪ミス・モーニング≫はい。

≪レッドフレイム≫ええっ?!


10連で出たの?!

まさか課金?!


いや、リセマラも知らないような初心者だから課金とかしないか。

それともうっかり課金したとか?


≪ミス・モーニング≫『カグツチ』っていう格好いいのが出ました。

≪レッドフレイム≫10連で?

≪ミス・モーニング≫はい。


すごい強運だな。

それ、最初に手に入る中ではベスト5に入るやつだぞ。


≪レッドフレイム≫今日の10連は回した?

≪ミス・モーニング≫まだです。

≪レッドフレイム≫じゃあ、回してみて。

≪ミス・モーニング≫はい。


そろそろ終わったかな?

同じギルドなら『星5○○が当たりました』って表示が出てわかるんだけど違うギルドだからな。





≪ミス・モーニング≫終わりました。

≪レッドフレイム≫どうだった?

≪ミス・モーニング≫星5は出ませんでした。


だよなあ。

そんなに甘くないって。


≪ミス・モーニング≫組み合わせとか、どれをどうしたらいいんでしょうか?

≪レッドフレイム≫ちょっと所持している『精霊』の一覧を見せてもらうよ。

≪ミス・モーニング≫お願いします。あの、ところでお時間はいいんですか?

≪レッドフレイム≫え?

≪ミス・モーニング≫AKV47さんから、レッドフレイムさんは学生さんで、今テスト期間だと聞いてますけど。

≪レッドフレイム≫気分転換だからいいよ。

≪ミス・モーニング≫テスト大丈夫ですか?

≪レッドフレイム≫うん。友達に教えてもらったからね。

≪ミス・モーニング≫友達ですか?

≪レッドフレイム≫すごく美人の女友達で、二人で勉強会したんだよ。

≪ミス・モーニング≫そうですか。

≪レッドフレイム≫彼女、すごく教え方うまいから、明日のテストもきっと大丈夫だよ。

≪ミス・モーニング≫それは良かったですね。


話しながら、ミス・モーニングの精霊を見ていたらとんでもないものを見つけてしまった。


≪レッドフレイム≫…ああっ!星4の『闇落ちアテナ』が居る!

≪ミス・モーニング≫え?そんなに驚くようなものですか?

≪レッドフレイム≫星4でも闇属性は貴重なんだよ!しかもこれはめったに出ない奴!

≪ミス・モーニング≫あげましょうか?

≪レッドフレイム≫トレードはできないよ!って、なんでそんなに簡単にあげようって言えるの?

≪ミス・モーニング≫私には価値がわからないので。

≪レッドフレイム≫それなら俺が教えるから。

≪ミス・モーニング≫よろしくお願いします。


こうして、俺はミス・モーニングというド素人にこのゲームの楽しみ方を教えていくことになった。



○遥視点○


赤塚君とゲームでのフレンドになって2か月経った。


彼には全然バレていないみたい。


そのうちみんなでオフ会しようかなんて話も出て来た。


でも最後の1つのピースが埋まらなかったのよね。


コンコンコン


「遥。ちょっといいかしら?」


珍しくお母さんが私の部屋に来た。


「あのね、ちょっとお話があるの」


何だかデジャブ感あるわね。


「私、再婚することにしたの」

「そう」

「驚かないの?」

「前に聞いていたから」

「そう。じゃあ、いいのね?」

「それはお母さんが決めることだから」

「わかったわ。それなら『赤塚くん』にはオッケーの返事をしておくわね」

「うん…え?え?え?ええええええっ?!」


聞き間違い?

今、『赤塚くん』って言ったわよね?


「横山さんじゃなかったの?!」

「あの人なら、付き合ってすぐに色々合わなくて別れたのよ。それから話題になった赤塚くんが気になって、会社の飲み会で話し掛けて、それから意気投合して…付き合うことになったのよね」


何それ。


「赤塚くん真面目でいい子だし、何より息子さんを遥が気に入ってるみたいだから」

「ちょっとおおおっ?!」


な、何それ?!どういうこと?!


「『はあ、烈火じゃなかったのかあ』」

「やめてえええ!真似しないでえ!」

「ふふふ。でも遥のおかげですごくいい人と結婚できることになったわ」

「はあ。言っておくけど、ただの友達よ」

「はいはい。それで、再婚してもいいのよね?」

「どうぞご自由に」



部屋で一人になってからドキドキが止まらない。


これで、私が彼に嘘告して、オフ会で顔を合わせて、さらに両親が再婚すればいいのよね。


お母さんの再婚までに一気にイベントを進めるわよ!





○烈火視点○


テスト期間でもないのに、朝霧さんに園芸部の部室に呼び出された。


「何の用だった?」

「あのね、大事な話があるの」


何だろう?

次のテストのことかな?

もっと早めに勉強会しようとか?


それだと嬉しいな。


「あのね、私…私…赤塚君のこと、好きなの!」






「あの…赤塚君?大丈夫?」

「あ、うん」


何?

告白?

俺に?


多少仲良くなったけど、遊びに行ったりもしてないし。


いや、遊びに行くならこれからだよな。


「それで、付き合ってほしいの」

「お、お、俺で良ければお願いします」

「う…」

「う?」

「嘘告なのよ。だから、その、だから、嘘なの」


え?

嘘?

何で?

だって俺の事好きって…。


「ま、待って。あのね、この前嘘告してほしいって言ってたから、ね。ちょっと試しに言ってみただけだから、ね」

「あっ、そうなんだ。冗談なんだ。あははは」


そっか、俺ってそんなこと頼んでいたよな。


それを覚えていてくれていたんだ。


「これからも、いつも通りでいいよね?」

「うん、お願いします」


良かったあ。この関係が壊れるかと思ったよ。




○遥視点○


あああああっ!


大失敗!


嘘って言ったら、この世の終わりみたいな表情されて、とても『冗談でやった』なんて小説のようなこと言えないわよ!


でも一応イベントその1は終了よね。


次はオフ会でいきなり出会って驚かせないと。


もちろん私もしっかり驚かないといけないわよね。





○烈火視点○


半月後。


俺はとあるファミレスに来ている。


いつもやっているゲームのオフ会だ。


初めてのオフ会だけど、ミス・モーニングさんは良く話をしているから多分大丈夫。


でも、なんで二人きりのオフ会しようなんて言ってくれたんだろ?

もしかして女の子じゃないのかな?

知らない男性と二人っきりで平気なのかな?



ゲームのチャットでは『一番奥の席に座ってます』と書いてある。


そこで奥の席に行くと…おじさんが座っていた。


やっぱり男性だったのか。


「あ、あの、どうも俺、レッドフレイムです」

「は?」


え?何その表情は?

こんな学生だったのが意外なのかな?


「こっちよ!」

「え?」


振り向くと、朝霧さんが座っていた。


「私がミス・モーニングよ!」

「ええええええっ?!」





○遥視点○


何でおじさんのほうに行くのよ!


一番奥は二席あるけど、女性は私だけなんだから気づくわよね?


何で違う人に挨拶してるのよ!


「どうして俺がレッドフレイムってわかったの?」

「自分で名乗ってたでしょ?」


名乗ってなくても声かけたかもしれないから危なかったわ。


「まさか朝霧さんだったなんて」

「そ、そうね。私も驚いたわ」


せっかく赤塚君を見た瞬間に驚くパターンを何通りも練習したのに台無しだわ!




それから他愛ない話をしてそのまま別れたわ。


だって、恋人でもないのにカラオケボックスで二人きりとか、小説みたいな展開になるのは無理よね。


あれ?

二人っきりとか勉強会でとっくにしていたわ…。



と、とりあえずイベントその2もクリアだわ。




「ねえ、お母さん。前に言ってた再婚相手との顔合わせっていつ?」

「次の日曜日よ」

「えっ?もう?」


今度こそ驚くパターンの練習成果を出させてもらわないと!




○烈火視点○


日曜日。


お父さん、急すぎるだろ。


何が『再婚相手が見つかったから家族の顔合わせをしたい』だよ。


そんなのもっと前から言えってんだ。


で、この辺ではちょっと有名な料理店の一室でお父さんと相手を待っている。


ガラッ


ふすまが開いて女性と女の子が入ってきた。


…え?


「あ、あああああっ!」


俺を指差して驚いているのは朝霧さん。


俺は声も出ない。


「何で赤塚君がここに居るの?!」

「あ、朝霧さんこそ、どうして?」


ようやく声が出た。


あれ?どうして朝霧さん、小さくガッツポーズしてるの?

そんなに嬉しかったのかな?


俺も嬉しいけど。




○遥視点○


良かった!今度はちゃんと驚けたわ!


思わず少しガッツポーズ出ちゃった。


嬉しくて話している内容が頭に入ってこないわ。

食べてるものの味もわからないし。




「…というわけで、あとは若い二人だけでごゆっくり」

「支払いは済んでるからね」

「「お見合いか!」」


思わずハモる私と赤塚君。


で、何でメインの2人が先に帰るのよ!


本当にお見合いみたいで間が持たないじゃない。



「あ、あのさ、朝霧さん」

「なに?」

「俺が前に言ってたこと、まさか本当に全て実現すると思わなかったよ」

「そ、そうね。すごい偶然ね」

「それでね。最近読んでいる小説あるんだけど」

「どんなのかしら?」

「これなんだけど」


赤塚君はスマホの画面を見せてくれた。


『義理の妹がいつも冷たいのだけど、いつの間にか俺の下着が無くなっている件に付いて』


「私に何をさせる気なのっ?!」

「あとこれとか」


『18禁版。義妹調教日誌』


「…」

「あっ、間違えた」

「間違い、よね?」

「う、うん」

「ブックマーク済みたいだけど?」

「あ、うっかり押したみたい…」

「ちょっとブックマーク見せてもらっていいかしら?」

「え、そ、それは…」

「拒否権は無いわよ」

「わかりました」


うやうやしく差し出されたブックマーク一覧を全て私のスマホで撮影して確保する。






家に帰って撮影したものを全て自分のブックマークに登録する。


「さてと。何からしてみようかしら?」





○烈火視点○


両親が再婚して1か月。


同じ家に朝霧さん…じゃなくて遥さんが住んでいる。


でも、ほとんど会話とか無いし、そっけないんだよなあ。

今日だって両親が留守で二人きりなのに、特に何もなく終わるんだろうなあ。



「お義兄ちゃん」

「え?」


廊下で呼ばれて振り向くと、メイド服を着てネコミミとネコしっぽを付けた遥さんが居た。


「お義兄ちゃん、今日は遥がいっぱいご奉仕するにゃん」

「にゃん?」


見ると遥さんは手にムチとゲーム機のコントローラーを持っていた。


「ゲームに負けたらお仕置きにゃん」


え?ご奉仕じゃないの?!


「べ、別にお義兄ちゃんの事好きなんじゃないし、でも、膝枕してもいいから」


ツンデレ膝枕っ?!


「それであとはお風呂を沸かしておくから先に入っててね」



○遥視点○


ブックマークがたくさんあったから一度に3つ4つやらないといけないわね!


18禁は却下だけど、ラッキースケベくらいは許すわよ。

でも触れるのはもっと先ね。


ふふっ、小説のような出来事を実行するのってすごく楽しいわ!


お兄ちゃん、これからも楽しみにしててよっ!








…ところでこのサキュバスってどうやったらなれるのかしら?

お読みいただきありがとうございました!

感想以外にも、小説の長さについてなどの助言ありましたらお教えください。

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