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第11話

道場までの車中でジャスミンさんからこんな事を言われました。


それは日本のマンガのことで、ある青年が異種族との文化交流という名目でルールシェアをするという内容なんですが、その異種族というのがいわゆるファンタジー的なゲームに出てくるモンスターの姿をしていて、皆さんが女性なんだそうです。ケンタウロスとかミノタウルスとかゾンビとか?の女性たちとちょっとエッチなハプニングがある日常を描いたドタバタコメディらしいんです。そういうマンガがあるのを初めて知りましたよ。それで、そこに台湾出身のキョンシーが出てくるそうなんですが、それがどうやらお気に召さないっぽいんですよね。


「いいデスカー?台湾のキョンシーならモーマンタイ(無問題)は言わないデスヨ。メイウェンティ(没問題)と言うデスヨ。モーマンタイは香港とかマカオとかで使う広東語デスネ。台湾は北京語使いマスヨ。これはおかしいデスヨネー」


ということらしいんです。日本のアニメやマンガはオリジナリティがあって、背景や街並みにリアリティがあって、ストーリーや人物の描写が繊細で、ジャンルが幅広く大人も子供も楽しめるのに、ナゼ!!話をまとめるとこんな感じになるんでしょうかね。おかしいデスヨネーと言われてもですね...あはははーと苦笑いしか出ませんでしたよ。一応作者と出版社に成り代わりまして、日本を代表(?)して謝っておきましたけども。そういえば、ある関西の人気漫才コンビの小さい方の人がそんなタイトルの香港映画に出てたような記憶がありますけど、それに影響されたんでしょうかね。それにしてもなんでそんなマニアックな作品を知ってるんですか、もっと有名な、例えば海賊のーとか忍者のーとか巨人が攻めてくるーとか錬金術師のーとかいろいろあるじゃないですか。あ、そっちは当然のように翻訳されたものばかりか日本のコミックも所蔵しているそうです。


道場に到着すると同期の皆さんが待っていてくれていたので早速荷物降ろしを手伝ってもらい、ジャスミンさんのために用意した部屋へ運びます。もちろんキャスターでコロコロ移動なんてできません。


「オー、その大きいのは道場へ置いてクダサイヨー」これは別なんですね、それにしても重いな、一体何が入ってるんでしょう、工藤さんと二人掛かりで移動させます。

ジャスミンさんはスタッフの方と上田さんと何やらお話をしています。今後のスケジュールの確認でしょうか。お話が終わる頃に堀田さんがスタスタと近づき何か話しかけています。ん?日本語じゃない?もしかして中国語(北京語)話せるんですか?


「ジャスミンさんこんにちは。私の名前は堀田晶です。日本にようこそ」

「あら、ありがとう。あなたは中国語が話せるのね」

「はい。私は台湾に5年住んでいたことがあります。私は日本で芸能の仕事をしています」

「そうですか、あなたの中国語は流暢ですね。お互いに頑張りましょうね」

「はい、ありがとうございます」


こんな感じでお話をしているんでしょうかね。堀田さんも芸能人だから、顔や名前を覚えてもらったり少しでもお近づきになりたいんでしょうね。私も後でサイン貰っちゃおうかしら、なんちゃって。

ジャスミンさんは明日一日ゆっくり休んで、次の日から練習に参加して週末の大会から試合をすることになるそうです。


「カコン、カコカコ、カコカコガコっ!」

一日経って次の日、目が覚めると道場の方から何やら怪しい物音が聞こえてきました。工藤さんもそれに気づいたようで急いで着替えて下に降りると立野さんと山田さん、堀田さんが既に着替えて道場の方を覗いています。その場で話し合って様子を見に行くことになりましたが、何かあるか分からないので各自一応用心のために何かを持って行こうということになり、フライパンやパイプ椅子などを手に持って道場に向かいます。あ、上田さんかスタッフの方に連絡をした方がいいかな?


道場の鍵は開いていて、そこからカコン、カコカコ、カコカコンとリズミカルな音が響いている中をそっと中に入ると、そこにはトレーニングウェア姿のジャスミンさんが木の柱から何本か棒が飛び出しているモノに向かって手のひらや腕を絡めたりしながら左右に動いています。なんだ、ジャスミンさんか、もう脅かさないでくださいよー、泥棒と間違えちゃったじゃないですか。でも良かったですよ上田さんに連絡しなくて。


なんの事件性がないことに安心して落ち着くと、ジャスミンさんが使っているものに見覚えがあることに気づきます。これってどこかで見たようなことあるんですよね。なんだっけ?


こちらに気づいた様子もなくひたすら木の柱に向かい、今度は手のひらや拳を、さらに踵を打ち付け始めました。その度に木の柱からガコガコッと音がしますが滑らかに動くその姿はまるで踊っているようで、とても力強くも美しくて感じて思わず見入ってしまいました。それにしてもあれって手とか痛くないんですかね。


一通り終わったようでジャスミンさんがこちらに気づいたようです。

「オー、ザオシャンハオ!ニーメンチーチュワンラマ?」(※1)

ん?なんて言いました?中国語?私は堀田さんを見るとジャスミンさんが言ってくれたことを翻訳してくれました。

「(みんなおはよう、起こしちゃった?)だって」だそうです。


そこからそれぞれ簡単に挨拶をして、何をしていたのかを聞くと

「おー、これデスネ。これは木人椿といいマスヨ。私の鍛錬のために持ってきましたネ」

どうりで見たことあると思ったら木人でしたよ。おじいちゃんに観せてもらった古い香港アクション映画で使ってましたね。あの大きな荷物はこれが入ってたんですか。

その後で少し木人の使い方を見せてもらいながら実際に使わせてもらうと、やっぱり手のひらが痛くなりましたし絡ませた腕や手首も痛くなりました。ジャスミンさんは痛くないんですか?

「毎日これで鍛錬していたらもう痛くないデスヨー」


デモンストレーションのようにゆっくりと見せてくれます。棒を手首に絡ませながら反対の手のひらで柱を叩いていると山田さんが何かに気づいたようです。


「もしかしてですが、相手の攻撃を避けながら攻撃しています?」

「トエトエトエ(※2)!そうデスヨー。よく分かりましたデスネ!」

「現役の頃に知っていたら組み手争いがもっと楽になったかもしれませんね」


何やら悔しそうにつぶやいましたが、山田さんの戦乙女の炎がメラメラと燃え始めちゃいましたよ。熱心にジャスミンさんの手元を見て覚えようとしていますしジャスミンさんも「ここでこうするとこうなりマスヨー」と説明しています。すっかり2人だけの世界ができちゃいましたね。呆れる立野さんに苦笑いしながらフライパンやパイプ椅子を集めている工藤さん、途中から堀田さんも翻訳しなくなっちゃいましたね。でもまあ、痛くなくなるまで鍛えた手で叩かれたらさぞかし痛いだろうなー。


せっかくだからと朝食を一緒に食べてから後片付けを手伝ってもらい、先輩たちがやってくるのを一緒に待ちます。そんなことまでしなくていいって言ったのに本人がやりたいっていうのでそのままにしていましたが、堀田さんがかなり恐縮しているのがちょっとおかしかったです。


そして皆さんが道場に集まった時に上田さんが経緯を説明して、ジャスミンさんは自己紹介と挨拶をしてから練習に参加していきます。ちなみに、日本でプロレスの試合をするときはジャスミン・リーとは名乗らずに李永春り・えいしゅんと名乗るそうです。胸元まであるストレートヘアーにキツくない程度にキリッとした瞳、私たちよりちょっとシュッとしたスレンダーな体型がクールビューティーといってふさわしい姿ですね。


ジャスミンさん(呼び方はそのままでもいいことになりました)は準備運動、基礎練習をそつなくこなすと萩原さんを相手にスパーリング中心の練習を始めます。日本に来る前は役者の仕事だったりファッションモデルの仕事が大半だったので体がなまってる、みたいな事を言ってましたが、私よりも素早い動きで萩原さんに肉薄し技をかけたり返したりしているのを見るとなまっているようには思えなかったんですよねー、でも体力的にはキツそうで長い時間は苦しそうですね。こんなことで試合をするのって大丈夫かな?なんて思ってしまいますが私が気にしている場合じゃないですよね。


しばらく休憩した後にサンドバックに向かいパンチやチョップ、キックなんかを打ち込んでいると、大森さんがそっとそれを見ています。大森さんはキックが得意だから少しでも参考にしとうとしているようです。

ちょっと見ては真似をして、ちょっと見ては違いを直したりして自分に取り入れようとしています。大森さんも立野さんと山田さんに負けて、ついこの間も工藤さんにも負けてしまったので自分なりにいろいろ試行錯誤して練習に打ち込んでいる、と渡辺さんが言ってました。苦手な寝技よりも得意なキックをさらに鍛えてるようです。松本さんのことじゃないけどこれで渡辺さんのグチが減ってくれたらいいんですけどね。


※1 早上好,你們起床了嗎?と表記します

※2 對對對 と表記します(そうそう、そうです みたいな意味です)

台湾出身のため中国語繁体字で表現してみました。

google翻訳を参考に使用しています

次話は3月15日を予定しています

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