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第9話

そして二ヶ月後。


私は薄いグレー地のパンツスーツに水色のストライプのクレリックシャツ、ヒールの低いパンプスと黒いトートバッグでプロレス団体「ドリームファクトリー」へ向かっています。今日から入団しプロレスラーとしての第一歩を踏むわけです。デビューするまでは練習生とういう扱いだけどもうドキドキワクワクが止まりません。足取りも軽く鼻歌を歌いスキップしそうな勢いです。入団テストに合格した二ヶ月前は不安でいっぱいだったのにね。このスーツだってお母さんが乗り気でない私を私を引っ張り回して買ったもの。私は「いいよ〜スーツなんて」って言ったけど、入団の際に提出する雇用契約書に保証人のサインをもらおうと出したところ態度がコロッと変わって「あんたはこれから新しく社会に出るんだから初めてくらいはちゃんとしなさい!」ってことでいわゆるリクルートスーツ「新社会人出発の門出4点セット」を揃えるハメになりました。まあお金を出したのは私じゃないんだけどね。


プロレスラーになりたいって相談した時は猛反対だったのにいざとなったら私のこと応援してくれるんだもんなー。「だってしょうがないでしょ。家族の反対を押し切って本当にプロレス団体のテストに合格してきちゃうんだもの。そのくらい学校の勉強も頑張って欲しかったわよ。まったく、誰に似たのかしらねえ。」とかなんとか言いながらも荷造りまで手伝ってくれて、もうウルっときちゃうじゃないの。ただ、反対してたのはお母さんだけだったってのは言わない方がいいかな。

そうそう、荷物は事前に団体の方に送らせてもらったので今日は書類とか判子とかお財布とかバッグに入るものだけなのでラクラクです。


建物に着くと入団テストの時と同じように受付を済ませて中に入ります。今日はリングの前にパイプ椅子が綺麗に並べられている場所があります。あの時一緒に合格した人は〜、あ、いたいた。あれ?スーツを着てる人は私しかいないよ?他の人はちょっとキレイ目くらいのカジュアルな服装なんですね。


「あ〜ら佐藤さんおはよう、二ヶ月ぶりね。あら、スーツなんて着ちゃって気合入ってるわね」と工藤さんが駆け寄ってきた。

「いや〜あはは」と苦笑いするしかないわね。

「おはようございます。工藤さんはいつこちらに来たんですか?」

「私は昨日ね。遠くから来る人は前日から寮に泊めさせてもらえたのよ」

へえ、そうだったんだ。「寮の雰囲気はどうでした?」これから住むところなので少し気になるので聞いてみた。

「う〜ん、ちょっと古いアパートみたいな感じ?でも掃除は行き届いてたわよ。まあこんなものじゃないかしらね」

スミマセンそれじゃよく分からないです。そのあたりは実際に見てからのお楽しみってことにしよう。

「ちなみに一部屋を二人で使うみたいだからね」

「それなら寂しくならなくて良さそうですね」

「自宅にいるようなプライバシーはなくなりそうだけどね。でもテレビで見たことあるけど相撲のお弟子さんは大部屋に何人も一緒に住んでたからそれよりはマシかもね」

それはそれで修学旅行みたいで楽しそうだけどね。


「ほら、立野さんたちが奥の方にいるから顔見せてきたら?」と工藤さんに言われて気づき向かうことに。

「皆さんおはようございます。今日からよろしくお願いします!」

「あ、おはよう」

「よろしくね〜」

「あら、来たわね演劇部」

「何よスーツなんて着てきちゃって」

演劇部って何ですか、園芸部ですよ。自己アピールが変な方向に広まってなければいいけど。


「ところであちらの方々はどちらさんか分かります?」と立野さんに聞いてみた。

「ああ、私たちとは別の日に合格した人たちよ。5人だって」

「じゃあ同期は全員で11人てことになりますね」


今日のために色々やってきたけどスポーツ経験者じゃないのは多分私だけだろうから頑張らなきゃなー。練習についていけなくて「今すぐ荷物まとめて帰れ!」なんて言われないようにしないと。いや〜これは思ってた以上に気を引き締めて頑張らないといけないかもしれない。ドキドキワクワクしてる場合じゃなかったよ。

次話は10月25日を予定しています。

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