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第2話

緊張しないためにどうすればいいか。

自分だけではなんともならなさそうだったので、いつもの練習の後の雑用が終わってゆっくりしている頃に同期の皆さんに聞いてみることにしました。次の公開スパーリングまでにちょっとでもヒントが欲しいですからね。


「あのすみません、人前に出た時に緊張しない方法ってありませんかね」

「「「「………」」」」皆さんお互いに顔を見合わせていますよ?なんか言い方が間違ったかな。もう一度聞いてみようかな。


「えーとすみません、緊張しなくなるにはどうすれば…」

「あーごめん、ちゃんと聞こえてたから大丈夫よ。ちょっと私の時はどうだったか思い出してたのよ」

立野さんがそう言ってくれたのでひと安心です。皆さんは人前に出るのは日常茶飯事だったでしょうから何かいいことが聞けたらいいな、きちんとしたことじゃなくても参考になればありがたいんだけどな。ドキドキしながら待ってるんだけど、何か皆さん、首をひねったり遠くを見たり眉間に指を当ててみたり相当考えてくれてるようですが、お互いに目を合わせて両手を軽く広げて肩をあげるジェスチャーをしています。え、えーと…?


「佐藤さん、ごめんなさいね。私たちにはそういうのって分からないっていいましょうか、ほとんど覚えてないかもしれません」

「そうなのよ、なんていうか小さい頃から競技会みたいなのに出てたから人前に出るのが当たり前だったから、緊張するっていうのがよく分からないのよ」

「晴ちゃん、私もだわ。人前に出ても緊張するっていうよりもあんな相手に負けるんじゃないぞっていう周りからのプレッシャーの方が強くて…なんかごめんね」


そ、そんなぁ。子供の頃から人前に出るのが当たり前の人生だったなんて、それが当たり前だったから緊張することを意識していなかったなんて。皆さん予想を上回る壮絶な幼少期を過ごしたいたんですね。

じゃ、じゃあそんなことがなかった(と思う、そうであってほしい)だろう堀田さんはどうでしょうか。


「え、私?私はほら、自分からアイドルになるくらいだから人前に出るのは大好きよ?地元のお祭りのカラオケ大会とか芸能関係のオーデションやそれ以外のとかもいろいろ受けてたもの。そりゃあみんなよりは緊張するけど貴女みたいにガチガチになったこともないわね。どちらかというとワクワクが止まらなくてもっと私を見て!注目して!って思うかな」


そうでした。堀田さんはまだ正式にデビューしてないとはいえ芸能人でしたね。たまにこちらの練習に出てないときはあちらのレッスンを受けてるんでしたね。ちょっと口が悪い感じがする時があるけど、自分に自信があるのと夢に向かって突き進むだけの努力をしてるからなんだろうなーと思ったりします。


「そうしたら、リングの上で緊張しなくなる方法ってありますか?」

ともう一度聞いてみました。皆さんの話をまとめると慣れるしかないみたいです。さいわいに公開スパーリングを続けていればプレデビュー戦までには多少はマシになってるとのことらしいです。マシになってたらいいなー。あと、堀田さんが言うには緊張しそうになったら大きな声を出すといいらしいです。試合前に声を出すのはなんか気合いが入って良さそうですけど練習前にそれはどうかなって思ったけど、一度やってみてもいいかもしれないですね。次回やってみようと思います。


皆さんに相談したんですけども、自分でももう一度調べてみようとスマホで検索してみました。すると緊張しないための五カ条とか七カ条とか出てきました。これは役にたつかもしれないっていくつか見てみると…

① 事前に準備をしておく

② 人は誰でも緊張すると思う

③ 無理矢理ボジティブに持っていく

④ 緊張してるって口に出してみる

⑤ 失敗するのは当たり前だと思う

⑥ 病気かもしれない


こんな感じらしいです。まず①、これは指導してくださっている先輩たちから言われているんですけど、お客さんを気にするとどうしてもそちらが気になってしまうんですよね。

②は4人中3人は緊張してるのを感じたことがないらしいですよ?

③それができたらこんな苦労してませんよ。

④緊張してるって言ったからってその緊張がほくれるものじゃないと思うんですけど。

⑤そんなの自分自身が一番分かってますよ。そんなの毎回ですよ。

⑥これはもう私だけじゃどうにもなりませんね。


っふ〜〜〜。なんと言いましょうか、調べれば調べるほど分からなくなってしまったのでそっとスマホの画面を消すのでした。

皆さんの言うように少しずつ慣れていって、堀田さんのアドバイスの練習前に大きな声を出すっていうのをやってみようと思いました。自分で調べるのも大切だけど経験者がやってきたことだから試した方がいいですもんね、私に合うかは分からないけど。そういえば堀田さんに「プロレスもそうだろうけど、ライブではお客さんの反応を気にしながら次に盛り上げようとかしっとりしようとかしなきゃいけないんじゃないの?」って言われちゃったんですよね。確かにそうかもしれないんですけど今はまだ待っててほしいと思います。さすがアイドルさんですね、そういうところに気づくんですから。


そんなことがあって、次の週の公開スパーリングでは横田さんが指導してくれるようです。それはいいんですけど、なんかお客さんの数が増えてませんか?


「はい、今日の課題は引き続きお客さんのことを気にすることなく動けるように、それと今日は打撃技を受けて痛みに慣れるのと耐えられるようにしていきましょう。打撃技は基本的に鍛えてるところに攻撃するんだけど、下手に避けて当たりどころが悪くすると冗談抜きで大ケガに繋がるからね。お客さんに気をとられないように緊張感を持って練習しないといないとダメよ?」

「はい!よろしくお願いします!!」


とうとう来てしまいましたこの練習。セコンドの時も見てたんですけど胸元にチョップが当たるところとかモモの辺りを蹴られるとかすっごく痛そうなんですよね。受け身の痛みはなんとか耐えられるようになったんですけど直接叩かれたり蹴られたりってどうかなー。そんな経験、小さい頃にお兄ちゃんと喧嘩したとき以来かもしれません。


「よし、いい返事ね。今日も頑張っていくわよ!じゃあこれから胸にチョップを打ち込むんからね。怖いかもしれないけど目を瞑らないでしっかり見てて、叩かれる瞬間に胸を反って力を入れるように。最初だからせーのでいくわよ。いい?いくわよ、せーのっ!」

トレーニングウェアを着てるのに肌を直接叩かれたようにバチンと音がしたと思うと一瞬叩かれたところが熱くなりすぐに痛みが伝わってきます。うわー、これ絶対跡が残るやつですよ。


胸をさすりながら痛みに耐えていると

「どうかしら、叩かれた時ちゃんと力を入れられた?」

はい、なんとかできたと思います。それよりも叩かれたところがじんわりと熱くなってます。それほどすごい衝撃だったんですね。トレーニングウェアがなかったらどんな風になったか想像したくありませんよ。


「次いくわよ。今度は背中にやってみましょうか。一応合図はするけど本当ならないからね。じゃあ力を入れて、せーのっ!」


ドシンという音とともに体の中から痛みが伝わってきます。骨というか内臓というか、とにかく体の中が痛いんですよ、もちろん叩かれた背中も痛いんですげど。叩かれるところを見てるのも怖いですけど見えないのも怖いですね。


それから何度か胸元と背中をチョップで叩かれて、痛いのを我慢したり我慢できなくて痛みを散らそうと体を動かしてみたりしながら繰り返していきます。打撃技を受ける練習はこれが初めてですぐに慣れないのは分かってますけど、これって本当に耐えられるようになるんですかね?

次話は12月5日を予定しています

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