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第15話

第五試合は横田さんと萩原さんの対戦です。どちらも経験を積んだベテラン選手で、道場では1・2を争うほどお世話になっています。この試合の頃には立野さんと山田さんも復帰してきて、それぞれセコンドについています。


「本日のメインイベントー、30分1本勝負を行いますっ!」


試合開始、萩原さんがロックアップからサイドヘッドロックへ、そこから横田さんが萩原さんをロープへ、返ってきたところにショルダータックル、ロープワークから再び攻撃をしようと待ち構えているところに萩原さんのドロップキック!両者とも一旦距離を取り様子を伺います。という、いつも練習したりセコンドで見慣れている動作なわけですが、動きのひとつひとつが清廉されていてとてもスムーズで、同じ動作をしているとは思えません。基本的なことでも極めればここまで素晴らしいものになるのかと思っちゃいますね。


とか思いながらこのお二方の対戦てどこで見たんだっけかな?同じ団体の選手だからどこかで何回も見たことあると思うんだけど、なぜか印象に残ってるんですよね。あ、私たちの為にわざわざ本番さながらの試合を見せてくれて、それに合わせてセコンドの練習をさせて頂いた時の組み合わせだったじゃないですか。あの時は何かあるごとに松本さんが指示を出してたんだよなー。


そんなこと考えてる間も試合は進み、萩原さんはロックアップかと思ったら意表をついていきなり腕を掴み、捻りながら背中側に回ったり、急に倒れたかと思ったら相手の足を自分の足で挟んで倒した(※1)ら自分のと横田さんの腕を絡ませたような技(※2)をかけたりなど、基本的は動作だけじゃなくて練習でもあんまり見ない動きが加わり、シンプルだからこそのスムーズな動きにこれは見逃してはいけないと目が離せないでいますが、セコンドの仕事も疎かにできないしこれは問題です。


横田さんがロープブレイクから場外に出ると萩原さんが追いかけてきて横田さんを鉄の柵に投げようとすると、体を入れ替えられて逆に萩原さんが鉄の柵に投げられます!ガシャーンという音が響きぐったりする萩原さんに向かって足の裏を使って蹴り(※3)、そこからボディスラム!そこはリングのマットと違って衝撃が直に来るんですから!背中に手を当てて苦しむ萩原さんを無理やりリングに押し上げてからもう一度ボディスラム、続けてブレーンバスター!そしてフォール

「ワン、ツー」カウント2で返されると背中から腰にかけて踏みつけたりヒザを落としたりと一方的に攻めていきます。


確かあの時の試合も横田さんが大きな技を使って一気に攻めて萩原さんは腕とか足を中心に技をかけていたような気がします。あの時は横田さんの大きな技の迫力に圧倒されていたけれど、今日は萩原さんの何かを狙っているかのような攻め方がわかる気がします。それに気がついただけ少しは成長できているのかもしれないですけど、何を狙ってるかはわからないんですよね。


腕を中心にコツコツと攻めている萩原さんも横田さんの一回の大きな技を受けると立場が逆転されちゃうんですよね。それが歯がゆいというかうまくいかないというか、その度にお客さんも、ああー(萩原さんのファン)とかよし行けっ!(横田さんのファン)とかの声が聞こえて来ます。


「20分経過ー、20分経過ー」


疲れが見える萩原さんにチャンスとばかりに横田さんが攻め立てていきます。ロープに投げてからジャンピング・ニーアタック!カウント2で返されるとバックドロップ!これもカウント2で返されます。3つ入っただろ?みたいに確認してるけどレフェリーは肩をあげるジェスチャーをしてVサインのように指を突き出してます。一息ついてから「よし、キメるぞー!」と萩原さんを立たせてロープに投げ、返ってきたところにラリアーッ…萩原さんはその腕を掴むと自分の体重をかけて前に倒れようとします(※4)。横田さんは倒されないようにちょっと抵抗するも前のめりに倒れそうになりながら前転、すると萩原さんはとっさに腕ひしぎ十字固めに!反対側の腕を伸ばして十字固めをされている腕を掴もうとしたり足をバタバタさせて体を刎ねあげるながら必死にロープに逃げる横田さん。


ロープに足がかかり技を解くと萩原さんはすぐにその腕を引っ張りリングの中央までいくとすぐに十字固め!横田さんは予測してたかブリッジのように体を反って自分の体を反転させ萩原さんに覆いかぶさると、技を決められたまま反対側の腕を使って萩原さんを頭の高さまで持ち上げるとマットに叩きつけました!(※5)それでも離さない萩原さんをもう一度持ち上げようとしたとき足を外し技を解いたかと思うと、今度は腕と首を挟んで締めつけていきます(※6)顔が真っ赤になりながら萩原さんをまだ持ち上げようとしますがなかなか持ち上げられず、とうとう萩原さんのヒザのあたりとパシパシとギブアップ合図をしました。


「24分54秒、24分54秒ー、ギブアップにより萩原香澄選手の勝ち」


最後は見事に逆転して萩原さんが勝ちました。レフェリーに手を上げられるところを見ると本当に疲れてるようです。それでもあんなに動けるなんて。横田さんもそうですよ、技を決められているのに大人1人を持ち上げられるなんて!なんてパワーなんでしょうか、本当にびっくりしました。プロレスラーってホントにすごいですね。


※1 カニバサミみたいな技だと思ってください

※2 チキンウィング・アームロックみたいな技だと思ってください

※3 ビッグブーツみたいな技だと思ってください

※4 カウンターの脇固めみたいな技を狙ったと思ってください

※5 パワーボムみたいな技だと思ってください

※6 三角絞めみたいな技だと思ってください


「じゃあお疲れ様です、デビューおめでとうございます、ではカンパーイ!」

山田さんの音頭で堀田さんと工藤さんのデビューをお祝いします。今回は立野さんがお酒を、私がおつまみを買いに行きました。前回の買い物で特に注意されなかったので今回も同じようだけどちょっと種類を変えてみました。

立野さんは恵比寿様のマークの色違いの缶ビールを、山田さんは男性の二頭身キャラが描かれたハイボールを、工藤さんはリンゴ一個分の果汁を使用したという物を、堀田さんは定番蜂蜜レモンって書いてある甘そうなサワーをそれぞれ手に取り飲み始めました。私は期間限定瀬戸内レモンサイダーで乾杯です。


「それよりあの動きはなんだったのよ!」

「あれの練習のためにこっちの方を休んでたの?」

立野さんと工藤さんが堀田さんに詰め寄るように質問してきます。

「へっへーん、サプライズ成功ってね。あれのことは知らなかったみたいね、内緒にしてて良かったわー、あれはね...」

「メキシカンスタイルのプロレスですね、ルチャ・リブレ?でしたかしら」

今から自慢げに説明しようとしている堀田さんより先に山田さんが言っちゃいました。

「ちょっ、ちょっとー、なんでこれから言おうとしていること言っちゃうのよ!せっかく発表しようと思ってたのに!」

「ごめんなさいね。だって、もったいぶるんですもの。それでどうなんですか?」

「そ、そうよ。ルチャよルチャ。せっかく驚かしてあげようと思ったのに!」

「十分驚いたわよ。よくあの動きが週一の練習で身についたわね」

ここで立野さんも話に入ってきました。興味あるのかな?

「まあね、そこは私だから?人並み以上のセンスと身体能力とバランス力と、ここで鍛えたプロレスの動きを合わせれば大概のことはやってみせるわよ?」

堀田さんが自信家なのはわかってたけど本当に遠慮とか謙遜とかしないんですね。じゃあ私も気になったことを聞いてみようかと思います。

「でもコーナーの上からとかリングから外に飛び出すとか怖くなかったんですか?」

「まあ練習の時はマットや補助があったから平気だったし、いざ本番となると興奮してアドレナリンが出てるから怖いっていうよりも、よしやってやれって感じだったかなー。女は度胸よ、ど・きょ・う」

練習よりも本番で力が発揮できるタイプなんですかね、さすがアイドルさんです。

「それよりも!中野さんがああいう絞め技をしてきたのにはこっちが驚いたわよ!本来なら私が使うはずだったのに!それで中野さんからデビュー戦勝利を狙ってたのに!」

えーーー、幾ら何でもそれはないんじゃないですか?まさか本気で狙ってたんですか。それにしても堀田さんの見たことない動きをテクニックで封じた中野さんてどうなんですかってことですよ。

「あれはルチャ・リブレの複合的な絞め技とか関節技を称してジャベって言うんですよ。日本ではメキシカン・ストレッチっていう方がわかりやすいかしら」

山田さん、なんでそんなことまで知ってるんですか?

「そうよ、そのおかげて私の見せ場が減っちゃたわよ。ルチャといえば華麗な空中技を思いつくかもしれないけど、うちのと同じように基本はグラウンドなのよ。もう!せっかく練習してきたのに!まあでも?まだ見せてないのがいろいろあるから?次の試合から驚くがいいわ」


その後もいろいろな話がでて、堀田さんが調子に乗ってまだ見せてない技をかけようとして怒られたり、工藤さんはあの戦い方は迫力があって見応えがあったけど、体を壊しやすいから気をつけなさいとか注意されたりとかありましたが、楽しくお二人のデビューおめでとう会を終わらせて各部屋に戻るのでした。


工藤さんみたいな戦い方は無理かもしれないけど、渡辺さんの戦い方は参考になるかもしれないし、大森さんみたく蹴ったり叩いたりもあったり堀田さんみたいなのもすごかったし、プロレスっていろいろな戦い方があるんだなーって思いました。私にはどっちのプロレスがいいんでしょうかね。

『いろいろあっていいんだよ、どっちがじゃなくてどっちもプロレス』


部屋に戻ると工藤さんからこんなことを言われました。

「晴ちゃんのデビューの話が出なかったけど個人的に何か聞いてる?」

「いいえ、私は何も。でも大丈夫ですよ、皆さんよりデビューが遅くなるのは最初から覚悟してましたから。気にしてないって言ったらちょっとは気にしてますけどがっかりはしてませんよ。おじいちゃ…祖父からは最低一年は我慢しろって言われてましたからまだ平気です。でも一年以上経っても声がかからなかったら焦っちゃうかもしれないですけどね」

「そう、ならいいけど。何か思いつめてたような顔してたからね」

「ありがとうございます。早く皆さんに追いつけるように頑張ります」


そういえば今日は上田さんの試合がなかったけどどうしたんだろう。堀田さんたちのデビュー戦が決まってたし、クリスさんが来れなくて一人足りなくなったから、この間に商店街の皆さんとの会合とかGPWOで何かあったとかHoney or Trap の用事とかあったのかな?

社長さんとか団体の代表を兼ねてるとそれだけ忙しいのかもしれませんね。

次話は10月15日を予定しています

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