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第12話

色々と準備をしている間にやってきました翌週の日曜日!その日は第一試合に堀田さんのデビュー戦、第二試合に工藤さんのデビュー戦、第三試合にはデビュー戦以来の立野さんと山田さんが組んだタッグマッチが行われます。なんか同期の皆さんが連続して試合をするなんて嬉しくも誇らしくもあり、早く私も追いつかないと!と少し焦ってみたり。頑張りますからもう少し待っててくださいね。


お客さんも会場前から並んでいただいてるようです。立野さんたちがデビューしてからちょっとずつですがお客さんも増えてきているようで、堀田さんたちにも期待が掛かってるようです。それだけお二人の試合が良かったんでしょうね、もちろんそれだけじゃないでしょうけど。


立野さんたちと試合開始前のお仕事(今日はデビュー戦のため堀田さんと工藤さんは免除されたそうです)を済ませてから青コーナー側の控え室に向かいます。

堀田さんは白いコスチュームに白い?ヒジあてとヒザ当てとリングシューズ。それにフードのところが鳥の頭のような飾りをつけた、まるでどこかの科学忍者隊のようなポンチョ姿で待っていました。所々に左側に赤、右側に緑でテーピングのように装飾されていたり裾のところが鳥の羽のように形になっています。


「いやー、デビュー戦くらいはもう少しおとなしめにしようと思ったんだけど、ウチの社長がねー」と言ってます。ちょっと困ったテイですがまんざらでもないようです。でもヒジ当てとかシューズって黒じゃなかったでしたっけ?ポンチョと同じような装飾がされています。

「それもね、ウチの社長が特別に作らせたんだって。本当はもっと派手にしたかったんだけど私と上田さんで止めたのよ。それ以上はもっと実績を積んでファンに認められてからの方がいいって言って」

まあ先輩たちはこのくらいで変なこと言わないでしょうけど変に堀田さんにプレッシャーになっちゃうかもしれないですもんね。


「大変長らくお待たせいたしました!プロレスリング・ドリームファクトリー、只今より試合を開始いたしますが、第一試合に出場する堀田晶選手、第二試合に出場する工藤江利香選手は本日がデビュー戦でございます。皆様どうか暖かい声援をよろしくお願いいたします!」

わー、パチパチパチパチー、新人頑張れ!みたいな声が聞こえる中、私は堀田さんをリングに先導するように準備をしていきます。


「堀田さん、が、頑張ってください」

「なんであなたが私より緊張してるのよ。まあ黙って見てなさいよ、今日の私はいつもと違うんだから」

なんていう力強いお言葉なんでしょう、さすがはアイドル!舞台度胸っていうんですかね、堀田さんて緊張してないのかな?なんて思いながら中野さんの入場曲が流れる中リングに向かいます。


リングに入る時、一番下のロープに足を乗せてピョーンとジャンプするようにリングに入るとポンチョを脱いでからお客さんに向かってお辞儀をしていきます。あら、お団子ヘアーに付けているカバーも緑と赤になってるのね。

「晶ちゃーん、頑張れー!」「晶晶晶晶晶ーーー!!!」

あれはきっと堀田さんの事務所の人たちかな?名前を連呼した野太い声はきっと社長さんね。ボディチェックを受けてから青コーナーでたたずむ堀田さんの表情はなんだか凛々しく見えてきます。そして中野さんがリングに入ってきました。


「本日の第一試合、20分1本勝負を行います!青ーコーナー、100パウンド〜、堀田〜、あき〜、ら〜〜〜」

「赤ーコーナー、118パウンド〜、中野〜、かお〜、り〜〜〜」「レフェリー中山マキ」

リングの中央で注意事項を聞き、握手を交わしお互いにコーナーに分かれます。


「レディー、ファイっ!」「カーン」

ゴングが鳴ると相手の様子を見ながらリングを時計回りで動く両者、リング中央でロックアップ、堀田さんがヘッドロックから中野さんをロープへ投げ、返ってくると堀田さんがリープフロックでかわし、また返ってきたところを開脚後転のように中野さんが飛び込み前転のようにかわしてから反対側のロープへ、返ってくると堀田さんがアームドラッグ、ん?なんかちょっと違う?それに構わず今度は中野さんがアームドラッグ。あれ?やっぱり練習したのとちょっと違うかも。倒れた堀田さんに中野さんが覆いかぶさりフォール!カウントワンで返されると堀田さんが中野さんの足を払い倒すと同じようにすぐにフォール!カウントワンで返される。すぐに堀田さんは少し離れてから、中野さんはその場でヘッドスプリングで立ち上がる。一瞬の静寂、そしてため息からの大きな拍手。

っはっ!ほんの数十秒だけど息が止まってたよ、それほどのスピーディなやりとりって初めてかも。あれ、でもアームドラッグってブリッジをしながら腕を巻き込んで回転しながら相手を投げる技だと思ってたけど、お二人のは腕を引っ掛けて相手の勢いを利用して投げてる感じだった(※1)あんなの道場で練習してるところ見たことないんですけど、いつ、どこで練習してたのよ!それなのに、それに対応している中野さんもなんでできるの?あ、中野さんがニヤッとして目が怖いです。


再びリングの中央でロックアップ、腕の取り合いではくるくるとお互いに体を入れ替えながら自分に有利な体勢になろうとしています。中野さんが腕を極めながら堀田をうつ伏せに倒しさらに締め上げていくと、そこから背中の上で体の向きを変えながら首に腕を回していきます。堀田さんはすぐにロープへ逃げました。


三たびロックアップ。中野さんがロープに押し込み堀田さんを投げ、返ってきたところで待ち構えていた中野さんのバックエルボーをかわし反対側のロープへ、そこから戻ってきた堀田さんは中野さんにヘッドシザースホイップでリング外へ。堀田さんはつかさずトップロープを掴み場外へダイビングボディアタック!すぐにリングへ戻りお客さんにアピールします。


今日のためにどこかで練習してきた…はっ、そういえば週に一回道場からいなくなる日があったけど、それってアイドル活動のためじゃなくてこのためだったり?秘密練習をしてたっていうんなら納得です。

そんな秘密にしてた技にすらっと対応している中野さんもどうよって感じです。私だったらあんなアクロバチックなことされたら何がどうなったかわからないまま技を受けちゃってると思うんだよね。


場外カウントが17くらいでリングに戻ってきた中野さんを捕まえるとサイドヘッドロックからフライングメイヤーへ、そこからスリーパーホールドに行こうとした瞬間に腕を取られて堀田が下になります。腕を動かせないように押さえながら背中にヒザを当てて動きを止めると中野さんは堀田のヒザ裏に乗り両手を掴み後ろに倒れこむと堀田さんの体が持ち上がり、まるで中野さんの足で吊りあげられるような格好になりました(※2)腕を持ちながら足をぐいぐいと揺らしていくと堀田の表情が苦痛に歪みます。そこから体を下ろしヒザ立ちの状態にしてアゴに手をかけ体を反らせていく(※3)と、レフェリーが堀田にギブアップを確認に来ましたが、なんとかアゴにあった手をほどきました。中野さんは自分の技を外すと続けて技をかけます。堀田さんの腰あたりにまたがり両肩を自分の足に乗せるキャメルクラッチ!アゴをまた掴み体を反らせます。

両手の自由がきかないから逃げられないし、さっきから背中への攻撃が続いてるからこれはキツい!しばらくして手を離したと思ったら堀田さんの頭を押さえつけ前転をさせるように、そして自分の体を前に投げ出すと足は堀田さんの肩を押さえているじゃないですか(※4)

「フォール、ワン、ツー、スr…!」カウントギリギリで跳ね返します。さっきまでじっくりと腰を攻めてたのに急にあんなことされたら危ないよ、今回は返したけども。


そこからは中野さんは次々と堀田さんを攻めていきます。座った状態で後ろから足を首にかけて腕を絡ませたり、脇の下から足を引っ掛けて体を反らせたりと見たことのない技で繰り出されます。さっきから背中や腰を中心に攻めているけど、同じところばっかりだから堀田もどうにもできないでしょうね。ねちっこいというかなんというか。


そこから堀田さんを立たせて前かがみにさせると、これで終わり!というかのように両手を広げるゼスチャーをすると、堀田さんと背中合わせの大勢になってから両腕を両脇に引っ掛けて体を捻って反転すると上下逆さの状態に持ち上げる(※5)と、体を揺らすと余計に体が反って腰にさらなるダメージが!レフェリーが何度も聞いてくるがギブアップせずにいるとさらに体を揺らしていきます。

堀田さんがその揺れに合わせて暴れると中野さんの腕が外れ、堀田さんは腹筋を使ってなんとか起き上がると肩車をされている状態になり、そこから前転して丸め込みました!(※6)懸命に足を押さえるもカウント2で返されてしまった。それでも諦めずに今度はドロップキックで中野さんをリングの外に落とすと私の方をチラッと見てから両手を叩き「いっくぞー!」と叫びました!これか、控え室で「ちょっと考えてることがあるから、指示を出すから場外の方お願いね」って言われてたのよ。

中野さんを落とした反対側のロープに走り、反動で勢いをつけスピードを落とさずにトップロープを跳び越えて空中で一回転、背中から中野さんに体当たり!(※7)さっきまで背中や腰を中心に攻められてたのにまた無茶なことを。ちょっと顔をしかめながらもそれを感じさせることなく大技を出せるなんて!


場外で倒れている私たちを見てお客さんがザワザワし始めるけど、場外カウント8くらいで堀田さんが起きるとお客さんから大きな拍手が起こりました。両手を上げてそれに応え、中野さんをリングに上げるとお客さんも声援を送ります。私は鉄の柵を戻してからセコンドへ。堀田さんは中野さんを青コーナーの近くでボディスラムをするとコーナーの一番上まで登りリングを背を向けるとそのまま宙返りしてボディプレス!(※8)決まったか!と思った瞬間、中野さんはヒザを立ててボディアタックを阻止(※9)お腹を抑えている堀田さんの首を持って立たせるとリングの中央でボディスラム、すぐにバックブリーカー、間髪入れずにボストンクラブへ。必死にロープへ逃げる堀田さん、あと少しでってところでリングの中央まで引きずり戻されて再びボストンクラブ。シャチホコのように体を反らせると、堀田さんはたまらずマットを叩きギブアップ。「あ〜〜〜」とお客さんの声が聞こえますがこれだけ同じ箇所を攻められたらしょうがないですよ。

「13分32秒、13分32秒、ギブアップにより中野香織選手の勝ち」


勝利の名乗りを受けた後、中野さんは堀田さんに何か話しかけると自力で立つように促します。堀田さんがなんとか立ち上がると、どお、うちの新人よかったでしょ?とでも言いたそうに右手を持ち上げお客さんにアピールします。その後にまた何か話しかけると肩を叩き、リングから降りお客さんの声を受けながら颯爽と控え室へ。堀田さんはリングに残りお客さんに向かってお辞儀をすると崩れ落ちるようにリングを降ります。お客さんからは中野さんに負けないくらいの拍手と声援を受けながら、私は堀田さんを支え腰を冷やしながら控え室に戻ります。


今日の堀田さんはいつもと違ってとても格好良かったです。堀田さんのことは心配だけど、これから工藤さんの試合なんだよなー、どっちも心配です。


※1 アームホイップみたいな技だと思ってください

※2 ロメロスペシャルみたいな技だと思ってください

※3 カベルナリアみたいな技だと思ってください

※4 外道クラッチみたいな技だと思ってください

※5 リバース・ゴリー・スペシャルみたいな技だと思ってください

※6 メキシカン・ローリング・クラッチ・ホールドみたいな技だと思ってください

※7 ノータッチ・トペ・コン・ヒーロみたいな技だと思ってください

※8 ムーンサルト・プレスみたいな技だと思ってください

※9 剣山みたいな技だと思ってください


次話は9月15日に予定しています

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