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第3話

「只今より本日の第2試合、タッグマッチ30分1本勝負を行います!」


大森さんの着替えを控え室で手伝ってからリングまで急いで戻りますちょうど第2試合の入場が始まるところなのですが…ん?この曲聞いたことがないんだけど。洋楽のラップみたいなズンズンズンズンと低音がリズムを刻んでいます。そうするとクリスさんと豊田さんがなぜか同時に入場してきました。あれ?順番が違いますけどいいんですか?それにしてもお二人とも黒い革のベストのようなコスチュームとアメリカンな警察の帽子にワンポイントのゾンビメイクできましたよ。豊田さんはいつもの黒地に紫のコスチューム、クリスさんは青を基調にしたものだったので事前に揃えてきたかのように見えます。しかもクリスさんはスリット入りのミニスカです、ミニスカートポリスです。もちろん下は見えてもいいやつですよね?なまめかしいオミアシが同性の私にもグッときてしまいます。


リングに上がり鉄砲を構えるポーズをお二人で決めると記者の皆さんが一斉にシャッターを押して、パシャパシャとフラッシュが眩しいです。お客さんからも声がかかりリングの四方に向かってポーズを決めていきます。クリスさんは堂々と、豊田さんはちょっと恥ずかしそうです。ちょっと涙目になっている表情がこれがまた同…以下略。


「赤ーコーナー、145パウンド〜、豊田〜、えつ〜こ〜〜〜!140パウンド〜、クリスー・フォーク、フィ〜ルド〜〜〜!」


次は松本さんの入場です。いつもの曲に合わせて手拍子をしながらリングの周りを歩きながらリングサイドのお客さんとハイタッチをしていきます。いつもと違うフリフリのガウンが可愛いです。可愛いんですけどクリスさんと松本さんかー。今回はタッグマッチだけど前回がアレな試合(ご興味があれば、デビューするまでの話 その2 第9話を参照してください)だったから今日はどうかなー、ちょっと心配です。


「青ーコーナー、110パウンド〜、松本〜、ひな〜こ〜〜〜」

ガウンを脱ぐと元号が一つ前のスクール水着のような色と型のコスチュームにごくごく一部のお客さんから悲鳴のような歓声が上がります。しかも胸には「3-A ひな子」って手描きのゼッケンが付いてます。なんてマニアックな!なんてあざとい!


続いて中野さんの入場です。中野さんもいつもと違った裏地が紅の黒いフード付きのマントを身につけてゆっくりとリングに上がります。フードで顔がよく見えないところで名前を呼ばれフードを取ると、赤いコンタクトレンズに牙のマウスピースです、ドラキュラか!でもコンタクトって激しい運動してる時大丈夫なの?いつかの野球選手のように試合中に落としたりしないのかな?


「青ーコーナー、118パウンド〜、中野〜、かお〜り〜〜〜」

ボディチェックを受けて誰が先に試合をするか中野さんたちが相談していると、赤コーナーからは豊田さんが先に出てくるようです。すると中野さんがリングに残り試合が始まりそうです。すると松本さんがクリスさんに向かって走り出しリングの外へ。そこでゴングが鳴り豊田さんと中野さんで試合が始まりました。ロックアップからヘッドロック、ヒップトスと。こっちではこうだけど場外ではクリスさんと松本さんがやりあってて!どっちを気にすればいいのよー!イヤーな予感が当たっちゃったわよ。


一緒にセコンドをしていた工藤さんの指示を受けてクリスさんたちの方を気にする事に。場外ではクリスさんが有利なようで、力任せに松本さんを鉄の柵にぶつけていきます。途中で体を入れ替えられないようにギリギリまで離さない徹底ぶりです。3回ほど繰り返してから赤コーナーに戻っていきました。松本さんが背中を押さえながらぐったりしているところを気にしながら鉄の柵を直していきます。


リング上の豊田さんと中野さんは一進一退の攻防を繰り広げていたようですが、体格で勝る豊田さんが中野さんを捕まえて赤コーナーに戻りクリスさんとタッチ。するとクリスさんは松本さんを挑発するように中野さんを攻め立てて豊田さんにタッチ。豊田さんはレフェリーに、松本さんが邪魔しないように注意するよう指示しながら中野さんを攻めてすぐにタッチ。クリスさんがリングに入って来るタイミングでお腹にヒザをぶつけてからやっと松本さんとタッチできました。


松本さんはクリスさんの胸元に3発、4発とエルボーを打ち込んでいくもハンマーパンチ1発返されただけで攻守が入れ替えられてしまいます。それでもめげずに真正面から攻めていくもすぐに返されてしまいます。何回もやられても反撃しかえす姿は、いつもは場外やリング内で半分ふざけてるような戦い方と違うぞ?と思い始めたお客さんがだんだんと松本さんを応援し始めます。


クリスさんが豊田さんとタッチすると松本さんをロープに投げ二人掛かりでショルダータックル!続けてブレーンバスター!お客さんのブーイングやレフェリーの制止を無視して、ふらふらになった松本さんにサンドイッチ式ボディアタック!!「痛そうだけど技を受けてみたい」なんて声は聞こえません!


「フォール!ワン、ツー、ス」

カウントギリギリの2.9で肩をあげる松本さん。髪の毛を掴まれて立たせられてもそれを振り切ってエルボーを3発、ぐらついたところにドロップキックを放ったところでなんとか中野さんとタッチ。中野さんは豊田さんのモモやヒザの裏を蹴って倒すと、その足をワキに抱えて体をひっくり返し、体をまたいで腰を落とし体を反らせます(※1)。豊田さんは腕の力だけで必死にロープに逃れようとしています。そこにクリスさんが邪魔に入ろうとしたところを技を解いてドロップキックで場外に落とすと豊田さんをリングの中央まで引きずり戻すとボディスラムのように持ち上げて片ヒザ立ちになると同時に体をご自身のヒザの上に落とす!(※2)腰から背中にかけて踏みつけたりエルボーを当ててから両足をワキに抱えて背中を反らせる(※3)腰を落としてグイグイと力を込めていますが、豊田さんはなんとかロープに逃れます。


「香織さーん!香織さーん!」

と松本さんがコーナーから身を乗り出すようにタッチを求めています。それを見た中野さんは豊田さんを何度か踏みつけ、青コーナーに引っぱってきてタッチ!そこから二人掛かりで起こしてロープに投げてショルダータックル!倒れたところに続けてエルボードロップ!そこから立たせてブレーンバスターを狙います。お客さんからも「上げろ!上げろ!」と声援が聞こえてきます。が、豊田さんはなんと!二人とも持ち上げてブレーンバスターを返しました!なんというパワーでしょう!場内に二人分のマットに落ちた音が響きます。中野さんは転がり落ちるようにリングの外へ、豊田さんはクリスさんとタッチ。


松本さんはすぐに立ち上がり、クリスさんにがむしゃらにエルボーを打ち、自分からロープに飛んで勢いをつけモモからふくらはぎ辺りを当てるようにジャンピングキック!(※4)倒れたクリスさんに奇声を発して倒れこみながらヘッドバットを何回もぶつけていきます(※5)。こんな松本さん見たことないよ、今日は一体どうしちゃったんだろう。お客さんも声援を送っています。


フォールをカウント2で返されて客席を見渡しながら力を溜めるようにこぶしを握りしめ、立ち上がってきたクリスさんを低い体勢だけど早いスピードのブレーンバスター!(※6)

「フォール!ワン、ツー」カウントは2.5。クリスさんが立ち上がるのを待ってからロープに飛んで勢いをつけます。しかし、何か技を出そうとうする前にバシーンという音とともにクリスさんがラリアットをぶつけました。一回転して倒れた松本さんを荒っぽくすぐに立たせるとロープに投げてクリスさんも走ってきてジャンプしながらヒザをぶつけます(※7)そしてフォール!

「ワン、ツー」

途中で中野さんが体当たりで邪魔に入りカウントを途中で止めます。すると豊田さんが中野さんを外に出し、リングに上がれないように後ろから掴みかかっています。それを見たクリスさんは松本さんを立たせると後ろから抱えてバーックドロップ!覆いかぶさってそのままフォール!

「ワン、ツー、スリー!」「カンカンカンカン!」「22分50秒、22分50秒、体固めにより豊田エツ子、クリス・フォークフィールド組の勝ち」


中野さんが駆け寄り松本さんの様子を伺います。私は氷のうを首から後頭部のあたりに当てます。なんとか意識はあり動けるようなのでゆっくりとリングから降ろしていきます。


控え室に戻る時、氷のうを当てながら松本さんに聞いてしまいました。

「今日はどうしちゃったんですか?せっかくのガウンもコスチュームも関係なくなっちゃったじゃないですか」

「ん?ああ、自分でもよく分からないけど気がついたらあんな風になってたのよ、不思議ねえ。何かが取り憑いたんじゃないかな」

『そうかもね』

「え、そういうのやめてくださいよー、怖いじゃないですか」

「なんてね。それよりも客席の方はどうだった?盛り上がってた?」

「はい、それはもう。途中から松本さんを応援している声も聞こえてきましたよ。聞こえませんでしたか?」

「…そうか、盛り上がってたならいいのよ。楽しんでもらえたならね」


そう言ってから疲れた体を引きずるようにしてシャワー室に向かうのでした。


※1 ハーフボストンクラブみたいな技だと思ってください

※2 シュミット式バックブリーカーみたいな技だと思ってください

※3 ボストンクラブみたいな技だと思ってください

※4 ゼロ戦キックみたいな技だと思ってください

※5 クレイジーヘッドバットみたいな技だと思ってください

※6 低空式ブレーンバスターみたいな技だと思ってください

※7 ジャンピング・ニーパッドみたいな技だと思ってください

お恥ずかしい事ですが、5月3日に菊地毅選手が引退してたのを少し前に知りました

ご本人より大きな選手にも果敢に攻めた「火の玉小僧」ファイトっぷりにいたく感動したものでした

遅くなりましたが長年の選手生活お疲れ様でした。って、え?引退じゃなくて首の治療に専念?

と、とにかく今はゆっくりしてください

天龍選手、本間選手に勝るとも劣らないダミ声キャラとしてのご活躍も期待しています

次話は6月18日か6月25日を予定しています

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