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第11話

次の試合はシングルマッチ、大森さんと宇野さんの対戦だ。

大森さんの入場曲はR&Bっていうの?なんていうかゆったりとしてて手拍子とかしづらくてお客さんと一緒に盛り上がりづらい曲。でも大森さんがその曲で試合にのぞむならそれなりの思い入れがあるんでしょうかね。水色のメッシュが入ったショートカットに青と水色のホルターネックのセパレートタイプのコスチュームと同じデザインのアームガードがカッコイイです。ガウンとかは着てなくてそのまま入場してくる。大森さんも中島選手が使っていたすね当てがついたシューズを履いているっていうことは蹴りが得意なのかな。

「青コーナー、130パウンドー、大森ー、ゆー、う〜〜〜」


対する宇野さんはアニメのオープニングソングのようなどこかで聞いたことのあるような曲で、明るく元気って感じで会場を盛り上げながら入場してきた。ちょっと癖のある濃い茶髪をポニーテールにして、オレンジと緑のワンピースタイプのコスチュームはお尻を隠すようにスカート状になっているフリルが可愛らしい。

「赤コーナー、120パウンドー、宇野ー、まー、な〜〜〜」「レフェリー西中シュウ」


試合が始まるといきなり大森さんが蹴っていく。前の試合で見た中島選手の蹴りと比べると、大森さんのは速く鋭く蹴った場所を削るような感じで中島選手のはドスッと重いというか体の奥までダメージが届くような感じだったから、例えていうなら大森さんの蹴りが鎌とかシャベルだとすると、中島選手のそれは鍬とかスコップっていうのかな?農機具で例えちゃったけど分かるかな〜、たぶん分かんないだろうな〜。


パシン、パシンと胸元やモモのあたりを蹴られるたびにぐわっ、とかぶおっ、とか痛いのを我慢せずに声を上げる宇野さん。さっきまでの試合ではそんな声を出す選手がいなかったからちょっとびっくり。それでも逃げずにいるんだもん、すごいよね。って胸を押さえながらリングの外に転がっていっちゃった。


胸元を押さえながら「痛いよー、なんだよあいつ」ってセコンドの堀田さん(大森さんには工藤さんがついた)や一番前の席にいるお客さんに話掛けてもどうしようもないと思いますけど。


リングを半周くらいして中に入ると今度は真ん中あたりで組み合い、腕を取り合ったり背後に回ろうとしているうちに、何をどうしたらそうなるのか、いつの間にか宇野さんが大森さんを倒して首と左手を持って体を反らせたり、首に足を引っ掛けて脇の下から大森さんの右腕を左手で掴み、自分の体を絡めるような技で攻めているようだ。なんで攻めているようだって?大森さんがロープの方に動こうとジタバタしているから、多分宇野さんの方が攻めてたんだと思う。「ブレーイク」


かけた技をレフェリーにほどかれると、ロープを掴んでいた大森さんの足を持って無理やり引きずるようにリングの真ん中まで戻り、うつ伏せにしてから背中や腰を踏みつけたり自分の体重をかけて攻めていく。そして大森さんの両足を畳むように折り曲げて右手で持ち、両ヒザを腰に乗せて左手でアゴを持つと、そのまま後ろに倒れるようにして大森さんを持ち上げる。これはヒザが支点となって腰を攻めているようで、宇野さんがヒザの反動をつけながらグイグイと手に力を入れると大森さんがだんだんと苦しい表情になっていく。「大森、ギブアップ?」「ノー」

宇野さんが技を解いてから覆いかぶさる。「フォール、ワン、ツー」カウント2で大森さんは肩を上げそのままリングの外に出る。


一旦リングの外に出た大森さんは首を左右に動かしたり腕を回したり腰に手を当てたりしてからリングに戻る。そこに待ち構えていたように近づいてきた宇野さんのお腹をヒザをぶつけて動きを止めてから胸元を蹴る。3回蹴ったところで宇野さんが倒れた。ポニーテールの結び目を掴んで無理やり立たせると、同じように蹴ってからコーナーに向かって宇野さんを投げる!えっ、ロープじゃなくて?コーナーに直接背中をぶつけるなんてなんて荒っぽいんでしょう。


コーナーにぐったりとよりかかっている宇野さんに向かって走り込み、足の裏を使った蹴りを顔に当てる。すぐに両足を広げるように宇野さんを無理矢理座らせると反対側のコーナーに移動しながらお客さんにアピールするように手拍子をする。お客さんもそれに合わせて手拍子をすると、コーナーから走り込んで宇野さんの顔めがけて両足ジャンプキック!ギャーっ!痛い痛い!さっきのポニーテールを掴んだのも痛いけどこれもさらに痛いよ。

そこからの大森さんの攻めは凄かった。宇野さんを立たせると顔や首元を両手で交互に何回も叩き、間髪入れずに一回転してチョップ、そのまま遠心力を利用して蹴り、フラフラになっている宇野さんに自らロープに向かって走り、戻ってきたところで顔に自分の体ごとヒザをぶつける!全部顔のあたりに当たってるんですけど!宇野さん大丈夫ですか!そこから覆いかぶさるも宇野さんはカウント3ギリギリで返す。


すると大森さんは親指で自分の首を切るような動作をしてから宇野さんを肩に担ぐように持ち上げるとお客さんも「おおー」っと盛り上がる。なに?これ以上一体何をするっていうの?自分の体を上下に細かく動かし勢いをつけて宇野さんをさらに持ち上げようとした時、宇野さんがその勢いを利用して大森さんに肩車のように乗っかる。なんでそんなことができるの?って思っているうちに宇野さんはさらに体の向きを変えてモモで大森さんの顔を挟むような状態になるとすぐに後ろに倒れると大森さんも宇野さんの動きに引っ張られるように前転するように倒れる。すると、いつの間にか大森さんに宇野さんが乗っかってるじゃないですか!

「フォール、ワン、ツー、スリー!」「カンカンカン!」「18分23秒、18分23秒、高角度後方回転エビ固めにより宇野愛菜選手の勝ち」


「わ〜い、勝っちゃった勝っちゃった!」

なんて無邪気に喜んでいるけど私は見ていたよ。上に乗っかった時に大森さんの顔を押さえつけているのを。そしてバタバタと暴れている大森さんの片足を掴んでそれ以上動けないようにしていたことを。「勝っちゃった!」なんて明るく言ってるけど、偶然ではなく狙ってたんですねきっと。


レフェリーに向かって指を3本見せて胸ぐらを掴みながら何か抗議をしている大森さんをよそに、お客さんに向かって手を振って声援に応えている。抗議しても勝敗が覆されることもなく肩を落としてリングから降りる大森さん。控え室に戻る途中で鉄の柵を蹴飛ばしていた。そこに八つ当たりしたのはいいけど、後から蹴飛ばした足が痛くなるんだろうなあ。


そんな中、改めてレフェリーに勝ったっことを宣言され、リング上で右手を上げられ勝ったことをアピールする宇野さん。そのあとおじぎをしてからリングを降りて、退場する通路でお客さんとハイタッチしながら控え室へ帰っていきました。それにしても、スリーカウントを取るのに色々なやり方があるんだなあ。

次話は11月25日を予定しています

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