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第9話

試合の様子を主人公(ど素人)目線で行なっていますので読みにくいかと思いますがご了承ください

本編下に使用した技名を表記しています ご参考までに

ロビーも会場内もざわざわとしてきている中、そろそろ試合の開始時間がくるというところで

「じゃあ私、準備があるからあとはよろしく」

と松本さんが控え室に向かう。ギリギリまでグッズ売り場にいて大丈夫かなとか思ってはいたけれど手伝ってくれてありがとうございます。このあと私がセコンドに付くのでしっかり応援しますよ。頑張ってください!


これから入場してくるお客さんやロビーでグッズを見ているお客さんも少なってきたし、試合開始の時間も迫ってきたのでスタッフの皆さんに後のことをお願いしてセコンドの準備に取り掛かる。


「大変長らくお待たせいたしました。プロレスリング・ドリームファクトリー、只今より試合を開始いたします」

お客さんも席につき、アナウンスとともに会場が暗くなり照明の演出もあっていよいよって感じですね。


ゴングが5回打ち鳴らされてから松本さんの入場テーマが流れる。「本日の第一試合、30分一本勝負を行います!」

アイドルのヒット曲のようなポップな入場テーマに合わせて松本さんが入場する。それに合わせて私も一緒にリングに向かう。


松本さんはピンクと白を基調にしたフリフリの可愛いゴシックロリータみたいなワンピースタイプのコスチュームにレースのパラソルを持ち、同じデザインのボレロを着ての入場です。リングの周りを必要以上に歩きファンとコミュニケーションを取ってます。これはお客さんとの間に私が入っちゃってもいいのだろうかと思ったけど、松本さんから始めたことだしあんまり邪魔になるようなことはしちゃいけないのかな、と遠慮しながら横についていく。

そんな私を気にすることなく、松本さんはカメラを構えられると手を振ったり投げキッスやウインクをしてファンの応援に可愛らしく応えていく。応えていくのはいいんだけど、レフェリーが呆れて早くリングに上がるように促してるんですけど?そろそろ入場曲が終わっちゃいませんか?先にリングに上がってロープの間を広げて待ってますよ。

でもちゃんと曲の一番いいところでリングに入ったので計算だったんですね。それと同じタイミングで松本さんのコール。

「青コーナー、110パウンド〜、松本〜ひな〜こ〜〜〜」


コールに合わせてピンクと白の紙テープが投げ込まれる。うわー、ちゃんとコスチュームの色に合わせてあるんですね。って感心してる場合じゃないや、ボレロとパラソルを控え室に持っていき、急いでリングまで戻る。セコンドについていない立野さんや工藤さんと一緒に紙テープを回収する。


そうそう、気になってたパウンド〜っていうのは重さの単位なんだって。日本では使わないから知らなかったわよ。1キロが大体2.2パウンドらしいので、松本さんだと50キロくらい?直接何キロって言われなくてもちょっと恥ずかしいわよ。


階段と紙テープを片付けていくと、何年か前に日本でも流行した洋楽ポップスを、ギターの音が激しいロック調に変更した曲が流れてくる。クリスさんの入場曲だ。

クリスさんはいかにもアメリカンっていうような赤・青・白のセパレートタイプのコスチュームに同じデザインの襟のついた燕尾服のようなベストを着て入場してくる。セコンドは山田さんだ。撮影会の時と違ってポロリの心配はないけど、お胸とお尻がとても主張してますよね。


クリスさんは最前列のお客さんとハイタッチをしながらリングを周る。山田さんはちょっと困ったような表情でクリスさんの横にいるけど、その気持ち分かりますよ、昨日こんなことなかったですもんね。

リングに上がるときにお尻をロープにこすり付けるような動きのセクシーなアピールをすると男性のお客さんが声を上げる。もう、男の人って。


「赤コーナー、140パウンド〜、クリスー、ホーク〜、フィ〜ルド〜〜〜」

クリスさんがコールされ紙テープが投げ込まれたところで松本さんが突然襲いかかる。ちょっと、いきなり何しちゃってるんですか!まだ紙テープの片付けも終わってないのに!


松本さんはクリスさんのお腹にヒザをぶつけると髪の毛を持ってリングの外に放り投げる。紙テープが絡まったままのクリスさんがリングの下に落ちると、松本さんが襲いかかり何回も踏みつけていく。松本さんてこんな乱暴なことする人だったんですか?

「ゴング」「カーン」このまま試合が始まっちゃうんですか?


そうこうしているうちに松本さんがクリスさんを無理やり立たせて首根っこを掴み、鉄の柵やリングの端っこのところにクリスさんの頭をぶつけていく。ギャッ!それは危ないですよ!そのあとは柵の外に出て会場内の壁や客席に向かってクリスさんを投げつける。その度に私も山田さんも松本さんのいく方向にいるお客さんに注意したり避難させたり大忙しよ。


「お下がりください!お下がりくださーい!大変危険です、選手に近づかないでください!」

そんなアナウンスをよそに松本さんとその周りのお客さんは異様な盛り上がり方をしている。変な一体感が生まれてます?すでに場外カウントが10になってるんですけど。


「はい、はい、はい、はい!」

椅子の上に立ち手拍子をして周りにいるお客さんを煽り何か技をかけようとしたところに、クリスさんが松本さんのお腹を数発叩き、椅子から落ちて蹲ったところを背中に力任せに腕を振り下ろす!

それをきっかけにクリスさんの反撃が始まった。同じことをやり返すように客席の中を髪の毛を持って引きずり回してリングの方へ向かっていく。私と山田さんもお客さんを避難させたり謝ったり倒された椅子を元に戻したりしながらリングの方へ戻る。場外カウントが18になったあたりでクリスさんはリングまで戻り、一旦上がったかと思うとすぐに降りてきた。そして床に敷いてあるマットのところに松本さんを持ち上げてそのまま落としていく(※1)。一瞬こっちにも振動が伝わってきましたよ。そのくらいの衝撃を受けて転がるように痛がる松本さんを踏みつけてコスチュームのベストを脱ぎながらアピールするクリスさん。かなりひどいことをしてると思うんだけどなぜか凛々しくて格好良く見えてしまった。お客さんもクリスさんの行動が正しいかのように拍手をしている。はっ、私は松本さんのセコンドだからこっちを応援をしないと。でも最初にやったのは松本さんの方だからやり返されたのは仕方ないと思いますよ。


クリスさんは一人リングに上がり赤コーナーに寄っかかって息を整え、松本さんはリングの下でぐったりしている。場外カウントは13まで数えられている。


「松本さん!大丈夫ですか、クリスさんはリングに戻ってます!」

私は松本さんの近くで声を出し必死に応援しながら今の状況を説明していると、松本さんが「おみず…」というのでリングの下からペットボトルを持ってくる。すぐ飲むと思ったので口を少し緩めて松本さんに渡す。松本さんは口を開け、首元と後頭部を濡らした後に少し飲んでからリングに戻る。


リングに松本さんが戻ると試合はクリスさんのペースで進められていく。身長も体重も負けてる松本さんに容赦なく叩いたり蹴ったり攻撃をしていくクリスさんはさっきの場外のやられたことにとても怒ってるのかもしれない。


クリスさんが松本さんをロープに向かって投げて、返ってきたところ松本さんが逆に両足ジャンプキック(※2)で攻撃をやり返した。私もここぞとばかりにマットをバンバン叩いて応援する。すぐにクリスさんを立たせて頭を脇に抱えてそのまま倒れて頭を打ち付ける技(※3)を2回繰り返してフォール。カウント2で返された後にクリスさんをなんとか持ち上げて背中からマットに落とし(※1)「よし行くぞー、はい、はい、はい、はい!」とお客さんを煽りながらコーナーのロープの一番上に登っていく。一番上に登り、クリスさんが立ち上がるのを待ってそのまま体ごとぶつけて(※4)…と思ったらクリスさんは松本さんを受け止めて自分のヒザの上に落とす(※5)。そこからさらに顔とヒザをぐいぐい押さえて松本さんの腰を攻めていく。技を受けたのは私じゃないのに背中や腰が痛くなった感じよ、思わず手で押さえちゃったじゃないの。


クリスさんはすぐにマットに落としてフォール、カウント2で返される。さらに立たせ松本さんの頭を抱え、腕を自分の首にかけ、上方に持ち上げてから後ろに倒れる(※6)。

「フォール、ワーン、ツー、スr」カウント3ギリギリで肩を上げる松本さんを見て、クリスさんは立ち上がり右手を頭のあたりでクルクルと回し出した。それを見たお客さんが「ぅおーーーっ!」と盛り上がる。え?一体何が起きるの?


クリスさんは倒れた松本さんの足元から近づき、両ヒザの後ろあたりを抱えて持ち上げる。と、そのまま回転しだした(※7)よ?

「いーち、にー、さーん」ぐるぐると回転しだしたクリスさんがさらにスピードを増して回転していく。

「はーち、きゅうー、じゅうー」

回転はまだまだ止まる様子がなく、お客さんから自然と拍手が起きる。あれってクリスさんも絶対目が回ってるよね。松本さんはさっきまで頭を守りように抱えていた手がぐったりと伸びきってしまう。

「じゅうさーん、じゅうしー、じゅうごー」

15回転でクリスさんが手を離し、よろめきながら松本さんに覆いかぶさる。

「フォール、ワーン、ツー、スリー!」「カンカンカン!」「12分20秒、12分20秒、体固めによりクリス・ホークフィールド選手の勝ち」


クリスさんの入場テーマが流れる中、私は松本さんのところに駆け寄り氷のうで首筋を冷やしたり腰や背中に冷却スプレーをかける。いくら鍛えてるとはいえ、あんなことされちゃって本当に大丈夫ですか。


レフリーが松本さんの目を見たりほっぺを軽く叩いたりして何かを確認した後、私に松本さんをリングから下ろして退場するように言ってきたので、クリスさんが足元をフラフラさせて勝ち名乗りをあげているところを何とかリングの外まできて肩を抱えて控え室まで連れて行った。


「やー、久しぶりに目が回ったよ、あんなに回さなくてもいいじゃないねー」

ねーって言われても。試合直後の、頭に氷のうをあてた格好でそんな軽口を言える松本さんに私はとてもびっくりしたよ。


※1 ボディスラムと思ってください

※2 ドロップキックと思ってください

※3 DDTと思ってください

※4 ダイビングボディアタックと思ってください

※5 バックブリーカーと思ってください

※6 ブレーンバスターと思ってください

※7 ジャイアントスイングと思ってください

次話は11月5日を予定しています

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