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第17話

翌日、いつものように準備をして食堂に向かうと立野さんと山田さんと、なぜか前田さんが朝食の準備をしていた。


「みなさんおはようございます」

「おはよう、体の方はどお?平気?」

「はい、ちょっとだるいですけど大丈夫です」

「それは良かった。じゃあ準備しちゃいましょう」


立野さんと少し話した後、前田さんに声をかける。あ、あとからやってきた堀田さんもおはようございます。


「今日はいつもより早いですね。何かありました?」

「こっちの二人にはもう話したんだけど、昨日の夜にまた二人辞めたって連絡があってね。だからそのつもりで作業を進めてね」

えー、またいなくなっちゃったんですか!


「ショウ子ちゃんから昨日の夜に二人辞めたっていう連絡があって朝食の準備が間に合わないかも知れないから手伝って欲しいって。まあこの時期は毎年の事だから用意はしてからいいんだけどね」

「毎年なんですか?」

思わず聞いちゃったわよ。


「練習が厳しくて耐えられないとか合宿所生活が合わないとか、いろいろあって辞めちゃう人は多いわね。今時の若い子は…っていうのはやめとこうか。でもね、もうちょっと我慢できないかなーとか辛抱が足りないなーとか思っちゃうのよ。それにうちの若い子たちなんかは簡単な千切りもできないのに新作メニューを開発したがるし。プロレスで例えたら技術も体力もないままでメインイベントを任せるようなものじゃない。そんなの任せられる訳ないのにね。中途半端なものをお客さんに見せたら恥を掻くのは自分たちなのに、そんなのも分からないのかねえ」

ホントに困ったものよー、とか言いながらもノールックで野菜を切りサクサク〜っと朝食ができあがっていく。そのスピードを一切落とすこともせずに。おお、さすがプロですね。


「ほら、あなたたちも早くしないと練習の時間に間に合わないわよ」

半分以上前田さんに作ってもらった朝食を終わらせて後片付けをしてから道場に集合。


「おはよう〜。あら〜また辞めちゃったんだってね。もうこれ以上はいなくならないでよ?じゃあ今日も頑張っていきましょう〜」


萩原さんの号令でマットの準備を始める。人数も少なくなっちゃったからなんだか寂しいなー。

いつものようにマット運動をしてから受け身のための前練習をしていく。人数が少ないからいつも以上に回数を重ねていけてます。ちょっと目が回っちゃったのはしょうがないよね?


「じゃあ今日も新しいことやりましょうか。本当はもう少ししてから始めようと思ったけど、気分転換も兼ねてね〜」

と持ってきたのは直径100cmくらいの小さなトランポリン。へえーこんな小さいのあるんだ。面白そうね。


「一応言っておくけど、これは練習のためだからね〜。レクリエーションじゃないからね〜」

ぎゃっ、私の顔に楽しそうだなーなんて思ってたの出てました?


「それはともかくとして、トランポリンて一見楽しそうだけど真剣に取り組めば相当な運動量になるのよ。一般的には5分間跳ぶと1キロくらいのジョギングと同じくらいの運動量になるって言われてるわね。しかも見た目と違って全身の筋肉を使うから満遍なく体中を鍛えられるのよ。特にインナーマッスルを効果的に鍛えられるっていうわね」

へえー、そんなことまでできるんだ、知らなかったなー。ただ気軽にぴょんぴょん跳んでるだけなのにね。


「他にもいろいろあるらしんだけど、特に私たちに必要かなって思うのは空中に投げられた時の自分の体がどうなってるか分かるようになる事ね。空中感覚っていうの?」

空中感覚?なんですかね、また新しいワードが出てきたよ。


「プロレスの技でムーンサルトプレスとかトペ・スイシーダとかってあるでしょ?コーナーの天辺から相手に後ろ宙返りして体当たりしたりリングの中から場外の選手に飛び込んだり。あと自分が相手に投げ飛ばされた時、自分の体がが空中でどのような状態になってるか分からないと危ないでしょ?」

その技がどういうものかよく分からないですけど、確かにそれは危ないですね。


「それを鍛えられるのがトランポリンってわけ。じゃあ早速始めましょう〜」

そういうと萩原さんは陸上マットの方にトランポリンを転がしながら持っていく。


「まずは簡単に。トランポリンの上で2回ジャンプした後、マットに前から飛び込んで見ましょう〜」

そう言ってピョーンピョーンと自分の腰くらいの高さまでジャンプした後、バサッとマットに着地する。

「まあこんな感じね。一人ずついってみましょう〜」

陸上マットの上の体操マットがなかったら楽しいんだろうけどね。これも練習、さあやってみよう。


堀田さん、立野さんはいつもと変わらずトランポリンからマットに着地する。椅子よりちょっと高いけど同じようにって思えば難しくないか。私も山田さんも工藤さんも無事にできてると思う。そんな感じで何度か繰り返していると

「なかなかできれるわね、次はこういうのやってみましょう〜」


さっきと同じようにピョーンピョーンとジャンプした後に体を半分ひねって背中から着地する。おお、なんか体操選手みたい。

これも堀田さん、立野さん、山田さんはすぐできてる。私と工藤さんは体をどうひねるのかが分からなくてちょっと時間がかかったけどなんとかできるようになった。ダンスはともかく、柔道とかレスリングとかって普段の練習で体を回転させてるのかな。


「ん〜まあまあね〜。じゃあ最後、できてもできなくても今日はここまでね〜」

そういってトランポリンに飛び乗り、さっきより少し高くジャンプした後に空中で1回転して背中からマットに着地する。おおっ、にゃんと空中1回転!1回転じゃないか、でも凄い!


堀田さんがトランポリンに乗ろうとすると「ちょっと待って〜」と萩原さんがマットに近づいてきた。どうやらもしもの事があってもいいようにと補助をしてくれるらしい。

堀田さん、立野さん、山田さんはなんの苦もなく1回転して着地する。そんな簡単にできるものなの?ってくらサラっとできちゃうのよ。そう思いながらも私もそれなりにできたと思う。練習というより遊び感覚が抜けなかったのが良かったのかな。工藤さんはジャンプはするけど空中で1回転する前に体が動かなくなって変な格好で落ちちゃった。そうよね、お相撲で空中1回転なんてしないもんね。萩原さんも途中でこれ以上は危険と思ったのか終わりにしちゃった。


「やっぱりこれはちょ〜っと早かったみたいね〜。今後こういうのもあるよ〜って覚えておいてね〜。じゃあ午前の練習は終了〜」

「ありがとうございました〜」と挨拶をして練習が終わりました。


昼食を終えた後、ちょっと工藤さんのことが心配になって話しかけてみる事にした。

「工藤さん、トランポリンどうでした?」

「あら晴ちゃん、さっきは失敗しちゃってごめんね。ちょっと心配になっちゃって」

「それはいいんですけど、心配事ってどうしたんですか?」

「あのトランポリンて、多分家庭でダイエットとかちょっとした運動を目的としたやつだと思うのよ」

「そうなんですか?でも大きさはそんな感じですよね」

「私ね、実家にいた頃にああいう感じのトランポリンを壊しちゃった事があったのよ」

こ、壊しちゃったんですか!


「ほら、私のこの体でしょ?一応体重制限には収まってたんだけど、ジャンプしてると体重以上の重さが掛かったみたいでトランポリンを支える鉄パイプが折れちゃったのよ」

ひえ〜、それはちょっと怖いですね。鉄パイプが折れるって相当な事なんじゃないですか?


「まあ古いやつだったから錆びてたし、劣化してたかもしれないってのもあるんだけどね」

一概には言えないですけどね。でも直接壊しちゃった工藤さんは気にしちゃいますよね。


「じゃあさっきのは空中で1回転するのが怖かったんじゃなくて、トランポリンを壊すかもしれないって思って失敗しちゃったんですか?」

「そうなのよ、練習生が備品を壊すってちょっと恥ずかしいでしょ?」

ははは…そうかもしれないですけど。


「じゃ、じゃあトランポリン自体は?」

「そうねー、競技用のちゃんとしたやつなら前にも後ろにも2回転くらいできるわよ?」

できるんですか。みんな凄いなー。

次話は7月15日を予定しています

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