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第15話

昼食が終わり片付けをした後、お昼からの練習までの休憩時間に工藤さんとちょっとお話。工藤さんによると、昨日のもっと厳しくなる、っていうのは練習内容だけじゃなくて他にも辞めていく人がいるとストレスを感じて精神的にも疲れちゃうのを心配していたようだ。まあ白鳥さんのときもそうだったけど、まだそこまで仲良くなってなかった人たちだったのでストレスとかにはなっていない。ただね、私よりスポーツや格闘技の経験がある人がすぐ辞めちゃうのはなんだか勿体無いとは思うけど。でも、もしも工藤さんが辞めちゃったとき、私はどう思うんだろう。


「ならいいんだけどね。立野さんや山田さん、堀田さんたちはそういう中を生き抜いてきただろうから慣れてるかもしれないけど、晴ちゃんはどうかなって思って」

「ご心配ありがとうございます。残念だなあとは思いますけど多分大丈夫です」

「そう、良かったわ。じゃあお昼からの練習も頑張りましょうね」

ハイっと元気よく返事をして午後の練習に向けて準備を始める。工藤さん、いつも心配してくれてありがとうございます。


「はい集合〜、さあ午後からも頑張りましょう〜。体操のマットを用意して〜」

萩原さんの号令で練習の準備に入る。人数が減ったからマットは何枚用意すればいいのかな?


「人数が少ないから贅沢に使っちゃいましょう〜!バンバン持ってきて〜」

バンバンって…3枚なら2人、2人、3人で使えるからいいか。


「それじゃあ首を鍛える運動をするので、まずはストレッチから〜。みんな覚えてる?」

もちろん覚えてるので頭を前に倒したり左右に曲げて押さえたりひねったりする。


「ストレッチが終わったら首を鍛える体制になってね〜」

四つん這いになって、両手の位置を頭と横一直線になる場所について、頭はおでこじゃなくて天辺をつけるような体制にする。

「はいゆっくり曲げて〜、体重をかけて〜、ハイ戻して〜。反対も同じようにね〜」

急に体重をかけると首がグキッとなるのでゆっくりね。

「これは首を鍛えるのと同時に柔軟性を持たせる運動だからしっかりね〜」

前後、左右に首を曲げて伸ばしてを繰り返していると、ふと思ったことがある。このまま鍛えていったら首が太くなって普通の洋服が入らなくなっちゃうんじゃないかな?と。


「次は第2段階ね〜。できない人は第1段階を続けて〜」

この間はできなかったからちょっとだけやってみようかな?確かヒザを床から離して…あーやっぱり無理だった。第1段階に戻してもう少し鍛えてから頑張ってみよう。


「次はブリッジね〜」

仰向けになり両手両足をつけて体を弓なりに反って爪先立ちになる。

「そのまま30秒キープして〜、28、29、30〜。はい戻して〜」

「じゃあ2回目〜、よ〜い、始め〜っ」

休みなくそんな動きを5回繰り返す。そのあとにブリッジをしたまま頭を付けて両手を胸の前で組む。そのまま20秒キープする。


「18、19、20〜。はいオッケー。今度は肩のストレッチね〜」

両手と両ヒザを床につき腰をゆっくり後ろに引いて両肩を伸ばしたり片方の腕を横に伸ばして肩を床につけるようにしてストレッチをする。


「じゃあタオルを引っ張り合うわよ〜」

しっかりと踏ん張って体制が崩れないようにしてタオルを引っ張り合う。1人余った堀田さんは萩原さんとペアになったようだ。何十回か繰り返したあと、タオルからお互いの手を取り合い、クロスさせて同じように引っ張り合う。ちゃんと力を入れてると、肩だけじゃなく体全体の筋肉を使ってるようで、特に上半身から汗が出てくるよ。


「一連の運動をもう1回通してやるわよ〜」

前回より練習量はいくらか増えたのかな、くらいのところで練習が終わり食堂に戻ってプロテインの準備をする。今日は何味にしようかしら?なんて思っていると


「なんだなんだあ?今年の練習生もたった3日で半分に減ったか、根性がないなあ。そんなことでプロのリングに上がれるなんて思ったら大間違いだぞ」

松本さんが独り言のように辞めた人たちに文句を言ってる。そんなこと残ってる私たちに言われても困っちゃうんですけど。


「練習生に合わせて量も少なくしてるってのに何をやってるのかね。ホント何を思ってプロレスラーになろうとしたのかね。まったく、プロレスをナメてるんじゃないの?」

いやいや、そういう人がいたかもしれませんけど私たちに言われても、てか私たちに直接言ってないのかな?どっちよ。いっそ本人に聞いてみようかしら。まあできないけどね。すると


「あれ?あれあれ?もしかして去年の選考会で代表に選ばれなかった立野みづき先輩じゃーありませんか!どーもどーもお久しぶりです!」

ん?何かトゲのある言い方だけど立野さんとお知り合い?


「やっぱりひな子だったか、久しぶりね。プロレスラーになったって聞いてたけど、ここの団体に入ってたんだ」

「ええ、そうなんですよ。それにしても立野みづき先輩のような方がどうしてここに?」

「今、実業団でコーチをやってる本田先輩って覚えてる?今後のことで相談してたら、入団テストのタイミングもあってここがいいんじゃないかって」

「あー本田さんですね、覚えてますよ。まだコーチやってるんですか」

「うん。あの本田先輩って意外と顔が広いらしくてね。他にも格闘技系の団体のプロデューサーとかも紹介してもらったわよ」

「へーそうなんですね。(チッ、私の時はどこも紹介してくれなかったのに)」

「それにしてもひな子と久しぶりに会えて嬉しいよ。ずっと連絡がなかったから少し心配してたのよ」

「私もいろいろと忙しかったものですから。でもこうしてプロレスラーになりましたよ。ここには3年前からいるんですよねえ、立野みづきセンパイ」

「そうか、じゃあこれからは私の方が後輩になるから、ひな子じゃなくて松本さん、て呼んだ方がいいかな」

「そうですね、他の人に示しがつかないからそれでお願いしますよ。あ、あと敬語も」

うわー、途中から主導権の取り合いみたいになってきてなんか嫌だな、こういうの。


「あ、そうか。そうでした。松本さん、練習生の立野みづきです。これからよろしくお願いします」

「いいのよいいのよ、私もこれからそうするのでヨロシクね、立野みづき、せ・・・さんっ!」

言い慣れないようで最後にさんっ!て付けちゃって。前田さんの言うように悪い人じゃないみたいだけど私ずっこけそうになっちゃったわよ。立野さんも今まで後輩だった人にああいう風に挨拶できるなんてすごいね。でも体育会系ってこういうのが日常茶飯事なのかしら?


クールダウンに向かうので立野さんにさっきのこと聞いてみようか。

「立野さん、松本さんとはどういうご関係だったんですか?」

「ひな子は同じ実業団の2コ下で、入ってきた時から面倒を見てたのよ。最初は素直でやる気もあって教え甲斐があったんだけど、だんだん他の先輩選手とかコーチとかに媚びを売るようになったのが気持ち悪くなってね、ちょっと距離を置いたのよ。どうも全員に自分のことを一番に扱ってくれなきゃイヤな性格っぽくてね」

話を聞いてる限りでは、周りからチヤホヤされるのが当たり前な、悪い意味でのお嬢様って感じですね。


「その後ひな子に後輩ができてからは言葉たくみに自分の配下みたいにして派閥を作っちゃってね。後輩からチヤホヤされるようになってからは多少大人しくなってくれたみたいだけど」

うわー、その頃からそういうな性格だったんですね。


「噂でプロレスをやってるって聞いてはいたんだけど、まさか同じ団体とはね。ほら、少し距離を置くようにしたから連絡を取り合うような仲でもなかったし、入団テストの時も見なかったから分からなかったのよね」

「佐藤さんもごめんね、なんか変なことに巻き込んじゃって。あとからちょっかいをかけてくるようなら私が萩原さんとかに相談するから言ってきてね」


そんなことにならないようにと願いながら、その時はよろしくお願いします、と言ってその話は終わったんだけど、前田さん、松本さんて悪い人じゃなさそうって言ってたけど面倒そうな人でしたよ。

あれから11年ですか 長いようで短いようで

いつの間にかあなたの年齢を超えてしまいましたよ 合掌

次話は6月25日を予定しています

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