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第11話

ちょっと勘違いというか調子に乗っちゃったというか、ネックスプリングは今はできなかったけどこれから練習していけはいいだけなんだから落ち込まずに次の練習を頑張ろう!


「はい次ね、このマットをそっちのマットの上に並べて。あとあなた、倉庫からパイプ椅子を二つ持って来て」

持って来た椅子をマットの横に並べると、座るところとマットの高さがちょうど同じくらいになった。こんなに近くに並べてどうするんだろう?


「今日はこの椅子に乗った状態から前に倒れてみましょう、じゃあ二人ずつ始めて」

皆さん普通に椅子に乗って倒れようとすると、急に止まって椅子から降りたり足やヒザからマットに降りたりしてしまいました。


「ちょっと、それじゃ練習にならないでしょ」

誰もやろうとしないので私が椅子に乗り、乗ったところで気がついた。昨日までの動作はマットに倒れたというよりも飛び乗っていた感じだったのでそこまで気づかなかったけど、椅子に乗ると急に高さを感じるようになった。だいたい40センチくらいの段差が怖く感じるよ。


「どうしたの?できないなら次の人に場所を譲って」

ここで降りちゃうと練習にならないし、ちょっと怖いけど痛くないから思い切って!いや待って。でもこんなところでモタモタしててもしょうがないのでいざっ!やっぱりちょっと待って。バラエティ番組でバンジージャンプをしなければならない芸人さんやこれから発売する楽曲のヒット祈願をするアイドルさんはこんな心境だったのだろうか?なんてことが頭をよぎったけど今はそれどころじゃないのよね。では改めて!

ドスッという音とともに体の前面に衝撃を受ける。顔は最後マットが迫ってくるのが怖かったので横を向いちゃった。ちょっと痛かったけど怖かったのは最初と最後だけでなんとかできたんじゃないかと思う。おっと、次の人のために早く起きて場所を空けなくちゃ。


一人ができたのを見ると次の人もやりやすいようでどんどんマットに倒れていきます。最初は足やヒザから先にマットに着地してた人たちもだんだんと体から倒れるようになってきました。私も何回か繰り返していくうちに恐怖心が少しだけ薄くなったと思う。


「まあまあできてるわね。次、できる人はジャンプしてマットに倒れてみましょう」

それはちょっと待ってください。もう少し慣れるのに今の練習を続けさせてくださいな。でも、ちょっとやってみようかしら?

結局私は好奇心よりもジャンプする恐怖心に勝てず、最後の方につま先でちょっとだけジャンプするくらいしかできなかった。


「今度は後ろ向きに倒れてみましょう」

これはさすがに怖いんじゃないですか?と思ったけど、さっきの前に倒れるときと同じように思ってるほど怖くないのかもしれない。ここはもう思い切って!両手を胸の前でクロスさせてそのまま倒れてみる。少しだけお尻が先にマットについて痛みが強かった。後ろに倒れるのでマットが見えないから、その怖さがあったんだろうな。それ以外はなんとかできたんじゃないかしら。お尻とおへその奥の方がキュッとなっちゃうのはしょうがないけど。


他の人たちも前に倒れるときより時間はかかってたけど、一度やってみるとなんだかんだでコツみたいのを掴んだらしくそれ以降はスムーズにできています。私はたまに肩とか後頭部をぶつけちゃうのに。こういうところがスポーツ経験の有無の差なんだろうね。あ、工藤さんもちょっと苦労してるみたい。お相撲は後ろに倒れる動作がないから私と同じくらいかそれ以上に怖いのかもしれない。


「じゃあ後ろ向きでもできる人はジャンプしてみましょうか」

私はまず肩や後頭部をぶつけないような倒れ方ができるようになってからね。そう思いながら練習していると

「余計な力が入ってるわよ。もっとリラックスして。それと倒れる前に顎を引いておへそを見るようにしてやってみたら?」

と横田さんから直々にアドバイスしていただきました。その通りに何回かやってみるとあら不思議、ちょっとぎこちないけど肩や後頭部をぶつけることがなくなってきたよ。その後も続けていくうちになんとなくジャンプしても大丈夫じゃないかな?なんて思っちゃうくらいになってきたのでやっちゃいますか!


『ちょっと待って。さっきやったネックスプリングの時と同じよう調子に乗っちゃってるんじゃない?ここではやめておきましょうよ』


『でもさー、横田さんのアドバイスでできるようになったじゃーん?大丈夫大丈夫、今度のはうまくできるって』


『何を言ってるのよ!そんなことやってまたお尻とか背中を痛めるわよ。今はまだ早いから基本的なところがちゃんとできるようになってからにしましょうよ』


「はいお疲れ様、午前の練習はこのくらいね」

…っあ!何やってるのよ私!頭の中で天使と悪魔が言い争ってるあいだに練習時間が終わっちゃったじゃないのよ。もう私のばかばかばか!


な〜んか変な気分になっちゃったけど、それは済んだことでどうしようもないので食事をして後片付けして午後の練習までには気分を元に戻さないとね。


練習が始まる少し前に道場に集まると、ん?何人くらい少なくなってない?

「集合!練習始めるわよ」

あれ?横田さんじゃないんだ、どうしたんだろう。


「えーと、横田さんがちょっと野暮用ができたので、代わりに私みんなの練習をみることになった豊田エツ子です。じゃあマットを用意してください」

この先輩は確かダンベルとバーベルの違いを教えてくれた人だ。

「あのすみません、練習生が何人かいないんですけど」

「あー、横田さんはその件でこちらに来られなくなっちゃったのよ。でも任せておけば大丈夫だからこっちはこっちで練習しましょう」

なんか納得いかない気がするけど私がどうすることもできないのでひとまず練習の準備に取り掛かりましょう。そうすると豊田さんはごそごそとメモを取り出し

「最初はシットアップなのでストレッチから始めましょうか」

また知らない用語が出てきたよ。


床に足を伸ばした状態で座り、右足を左足の上に組む。次に左手のヒジを右足のヒザにかけて上体を右にひねる。その時右手は体が倒れないように後ろに伸ばして支える。グーっとできるだけ回転させて20秒キープする。その後反対側も同じように行う。

「その時上体はまっすぐ伸ばして下を見ないようにね」

お腹がよじれるのが分かるのと背骨がボキボキって鳴ったよ。


次はつま先を伸ばしてうつ伏せになった状態から両手を床につき、上半身だけを起こしてそのままキープする。おーこれはお腹の筋肉が伸びるのが分かるね。

「これも下を向かないように前を見てね」


その次は同じ体制で体を少し横にひねる。おーこれはお腹の横が伸びるのね。

「この時はヒジを曲げないように気をつけてね」


今度は仰向けになって両手を広げ、上体はなるべくそのままに体をひねって右足を左足の外側の床につけるように出す。そしてそのままキープ。反対側も同じようにする。これもお腹の横が伸びるよ。


「ストレッチも終わったところで始めましょう。仰向けになって両足を広げてヒザを立てて、腕は胸の前で組んじゃいましょう。そこから反動をつけずに上体を持ち上げて。私の号令に合わせて10回、では始め!」

なんだ、ただの腹筋じゃないですか。あれ、でも足は押さえなくていいの?


「よし次、両腕を頭の後ろに組んで同じように10回、始め!」

腹筋もいくつかバリエーションがあるんだね。


「今度は手を組まずに耳のあたりに添えるように、そして起き上がったら右手で左足のつま先を触って。1回終わったら次は左手で右足のつま先を触ります。それを交互に連続で20回、混乱しないようにね」

号令の代わりに右手〜、左手〜って言ってくれたから混乱はしなかったけど、ひねる運動が入ると腹筋に余計な力がが掛かってくるね。


「最後に腕と足を伸ばして両手で両足のヒザあたりを掴むくらいまで上体と足を起こして」

いわゆるV字腹筋ってやつね。

「体の反動をつけないで、8、9、10〜はい終了です。これを1セットとしてあと2セットします、それでは用意、始め!」


足を押さえなくていいのって思ったけど、なんかこのやり方の方が腹筋に効いてるみたいでちょっときついかも。そして腹筋をしている途中で「止まれ」なんて号令が掛かるし、しかもその止まれが出ると30秒くらい解除されないから予想以上にキツかったよ。

ジャンボ鶴田のナチュラルパワー強化バイブル(ナツメ社)を参考にしています

柔軟性のレベルにあわせてポーズが選べる!コンディショニングストレッチ(西東社)を参考にしています

次話は5月15日を予定しています

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