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第8話

そんな心配をしていたけれど、プロテインを飲んで先輩たちの昼食を準備していたらいつの間にかお腹が空いてきました。今日はお味噌のちゃんこ鍋、この匂いはたまらないわぁ、お腹がギュルルルーって鳴っちゃったよ。


先輩たちと私たちの食事が終わり後片付けを済ませてソファのところでスマホをいじりながら一休みしてると、松本さんがまた何か言いながらふら〜っとやってきた。

「いいなあお前ら、私が練習生の頃は休憩中は合宿所の電話番をしたもんだけどなあ。呼び出し音が鳴ったら3回以内に取らないと怒られたもんだよ。そして私がトイレに入るといたずら好きの先輩がどこからか見張ってて合宿所に電話してくるんだよ〜。そういうのがなくてホント羨ましいよ〜」

いやいやいつの時代の話ですか、もしかして元号が二つくらい前じゃないですか?私たちとそんなに年齢も変わらないのに何でそんなこと言うんだろう。って言うか誰に言ってるんですかね。気にしててもどうにもならないので午後からの練習に向けてもう少し休憩しようっと。


「じゃあ午後の練習を始めましょう。その前にストレッチをするので私のやる通りにやってみて」

立ったままで両腕を伸ばして腰の辺りで両手を組み、ひじを曲げないように両腕を伸ばしながら上げていき胸を張った状態にする。ちょっと痛いくらいかなってところでそのまま20秒ほどキープする。

次は床にうつ伏せになり、つま先を伸ばして腕立て伏せの状態になる。そこから顔を上げてお尻を引っ込めるようにすると胸とお腹が伸びてくるのでその状態でキープする。

というのを3回繰り返したところで

「ストレッチが終わったところでプッシュアップをします。みんなは頭が中心にくるようにまるく集まって。最初はこうね」

と言って私たちが集まったところで横田さんは普通に腕立て伏せを始めた。何だ、プッシュアップって腕立て伏せのことだったのか。

「ここで大事なのは背中から足まで体を曲げないこと、ひじは胸が床につくまでしっかり曲げること。とりあえず10回やってみましょう」

え、10回でいいの?そんなの簡単じゃないですか。他の皆さんもキョトンとしてますよ。まあそれでいいんならそうしますけどね。…8、9、10、はいできました。

「そうしたら次は両手をくっつけて揃えて。その状態で10回やってみましょう」

ですよね、10回だけなんてことないですよね。早速両手を揃えてっと。おお、これは何という窮屈な腕立て伏せなのよ、しかもさっきとは違う筋肉を使ってる気がする。

「今度は両手を最初の時より大きく広げて指は外側になるように構えて。そこから10回やりましょう」

おおお、これはこれでまた違うところが鍛えられてる感じかするよ。

「じゃあ最初のプッシュアップの体勢に戻して。今度はひじを曲げる時にわきを閉めて体と平行になるように、それで10回ね」

これもやりづらいなあ。でもこれは腕よりも胸の方が鍛えられてるような気がする。

「最後にまた両手を大きく広げて、さっきのとは逆に指先は内側に向けて。それで10回ね」

腕立て伏せってこんなにも種類があったなんてちょっとしたカルチャーショックです。私が知ってたのは指を立ててするのと手をグーのままのやつと片手のやつだったのにそれが入ってないんだもの。しかも全部の種類が違うところを鍛えられてる感じがする。腕立て伏せって奥が深かったんですね。


「というのを1セットとして、あと2セットやりましょうか。じゃああなたから号令を10回ずつかけて時計回りで交代して。ではよーい、始めて」

え〜と最初に5種類あったのを10ずつやったでしょ、それを2セットだから100回で、全部足すと合計150回!でも大丈夫、自主練でやってきた回数と変わらないから。1セットが終わるごとにちょっと休憩が入るだろうから何とかなるよ。


手をつく場所を変えるとき以外は続けて50回腕立て伏せをして、終わるとちょっと休んでまた腕立て伏せをする。1セット目は何とかクリアしていくも、2セット目の後半あたりまで回数を重ねていくと「そこのあなた、お尻が突き出てるよ、しっかり体は伸ばさないと!」とか「誤魔化さないでもっと深く腕を曲げなさい、やり直しさせるわよ!」とか「号令、もっと大きな声でテンポ良くして、だんだん遅くなってるよ!」なんていう横田さんの声が聞こえてくる。それは私じゃないよねって思いながら、ただ懸命にひたすら繰り返す。


途中で動きが止まったり号令に間に合わなかった人がいたけど、私は最後まで遅れることもなく2セットを終わらせることができた。腕、肩、胸辺りの筋肉が結構鍛えられた感触はあるけど、なぜか腹筋と背中の筋肉がプルプルしてるんだよなあ。体を起こそうにもうまく腕に力が入らない状態になってるけど、何とか体をひねったりして床に座る体勢をとることができた。


「次の練習が始まるまで10分休憩」

それを聞いてほとんどの人がその場に倒れ込み動かなくなった。休憩を挟んだとはいえ、いきなり腕立て伏せ150回はきつかったと思う。そんな中「いやー、今日はいつもより頑張っちゃったかなー」くらいしか疲れていないようなそぶりをみせている立野さんと山田さんはさすが世界を知っている女性ってところかしら。さっきの腕立て伏せをいとも簡単にこなせたってことは、もっと厳しい練習をしてきたんだろうなあ。なんてことを考えながら手を組んで腕を上に伸ばしたり、ぐるぐると回したり、左右に広げたりしてさっきまで使ってた筋肉をほぐすようにしていると、そろそろ休憩時間が終わるようで横田さんがやってきた。


「じゃあ次は背の低い順に並んで」

横田さんを正面に一番前は堀田さん、真ん中ぐらいに立野さん、やや後ろに私と山田さんと工藤さんが並んだ。


「少し間隔を広げて輪になって。そうしたら馬跳びを始めましょう。馬になるときは自分の足首を持って、頭は輪の中心に向けてね」

横田さんの手拍子に合わせてリズミカルにピョンピョン跳んでいき、跳び終わったら馬の体勢をとる。今回は何の変哲のない普通の馬跳びだ。馬になってるときは少し休めると思ったけど私より体重が重い人が来るとしっかり支えないと馬が崩れちゃうのでそんなに休めなかった。そして跳んでるときは手拍子に合わせないといけないし、縄跳びもそうだけどジャンプの連続ってあんまり息ができないから結構キツいね。しかも輪になってるからだんだんと目が回ってくるよ。


「今度はあなたから逆方向に跳んで行って」

と堀田さんに指示を出した。これなら目も回らなくていいわね。でもそういうのを何周も繰り返していくと息がだんだんと荒くなってくる。


「はい終了、一旦息を整えましょう」

どのくらい跳んだか分からないけど、多分今までの体育とか遊びの時の分を合わせた以上の馬跳びをしたと思うよ。両手をひざについて何とか息を整えようとしていると


「次行くわよ、準備して」

ちょっと待ってくださいよ〜、もうちょっと休ませてください。


「はいペースが遅れてきてるよ!」「後ろがつっかえてるよ、もっとテンポよく!」

これ、いつまで続くんだろう?腕立て伏せの時は回数が決まってたけどこの練習はいつ終わるのか分からないから余計に不安になってくる。もう限界かもしれない、苦しくて何も考えられなくなってきたよ。


「苦しいと思ったところからが本番の練習だからね、ペースを少し速くして!」

私の思ってることを見透かされちゃったようだけどやるしかないよね。でもやっぱりキツいわ。


「はい終了、今日のところはこんなものかしらね」

関西の背の小さい師匠が言いそうなセリフを横田さんが言って練習が終わる。同時にみんなその場にゼーゼーいいながらどっと倒れる。さすがの立野さんや山田さんも限界だったようだ。という私も心臓がバクバクして仰向けになっている。やばい、これは我慢しないと戻しちゃいそう。

10年くらい前のことだったでしょうか 後楽園ホールでご一緒にプロレスを見た記憶があります と言っても私は南側B席、あなたはスペシャルリングサイドでしたけど 中島選手とKENTA選手の蹴撃戦はすごかったですね

謹んで志村けんさんのご冥福をお祈りいたします


ジャンボ鶴田のナチュラルパワー強化バイブル(ナツメ社)を参考にしています

次話は4月15日を予定しています

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