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第7話

「……つぅ!」寝返りを打ったところで目が覚めた。前日の思いは通じず体中がだるくて痛い。入団テストに向けて自主練し始めてた時もそうだったけどやっぱり筋肉痛になった。でも、これくらいなら動けないこともかな?マッサージやストレッチのおかげかクールダウンをしたせいか、生まれたての子鹿のようにプルプル震えて立ち上がれないなんてことにならなくて良かったよ。


「晴ちゃん、おはよう。体の調子はどう?」

「あ、おはようございます。ちょっと痛いのがありますけど何とか大丈夫そうです。工藤さんはどうですか?」

「私もちょっとだけ。毎日練習してても普段と違う筋肉を使ったみたいでね」

2人で体を伸ばして眠気とだるさを吹き飛ばしさっと着替えて1階の洗面所へと向かう。時々ピキっと痛みを感じるけど、まあこれくらいなら普段の生活には支障はなさそう。


「おはよう」「おはようございます」

すでに立野さんと山田さんがいたので挨拶をする。

「筋肉痛はどう?」「はい、何とか大丈夫そうです」なんて話をしながら身支度を整えて厨房へと向かう。何だか気を使って声をかけてくれたようでありがとうございます。


「あれ、ちょっと早かったですかね」

誰も厨房にいない。そろそろ集合して朝食の準備をしないといけない時間なのに。

「いないものはしょうがないから私たちでできることから始めちゃおうか」

それもそうですね、と私はお米を持ってきてご飯を炊く準備を始める。工藤さんたちもそれぞれお鍋を準備をしたり食材を取り出したりする。確か朝食のメニューは、練習初日だったのを考慮してお昼みたいなお鍋にはしてなかったんじゃないかな?献立表どこだっけ?

そんなこと考えてると他の皆さんが体を引きずるようにやってきた。


「みなさん、おはようございまー」

「何であなたたちそんなに普通に動けるのよ!」

朝の挨拶をする前にそれはないんじゃないですか堀田さん。他の皆さんもそんな目で私たちを見ないでください。


「やっぱりトレーニング後のクールダウンが良かったんだと思いますけど…」

まあ私以外の3名はスポーツ経験者だから分からないこともないけど、あんたは演劇部でしょっ!て目で見られるのはちょっと面倒になってくる。あなたたちだってスポーツ経験者はいるでしょうに、プロレス団体に入るって決まってから何を準備してきたのよ。今度「なんでー、なんでー」って聞かれたら「何でって?それは、鍛えてるからだー!」って言っちゃおうかしら。てか私は演劇部じゃないし園芸部だし、それに演劇部の人たちだってジョギングとか腹筋とか、役柄や演目によっては山にこもって野生の感覚を掴もうとしたり、人間の動きができないように添え木をして手足を縛ったり、両目・両耳を塞いで一人暮らしをしたり、かなりハードな練習をしてるのを知らないのかしら?まあそんな人は私は1人しか知らないけれど。

なんて言えたらいいなあ。


「はいおはよう、なんか元気そうな声が聞こえてきたけどみんな動けてる?」

なんて言いながら前田さんがやってきた。でも私たちの様子を見て、ああやっぱりねえ、なんて顔をしている。

「じゃあ動ける人は昨日と同じように、動けない人はそれなりに動いて準備しちゃいましょ。ハイハイ、テキパキ動かないと朝食の時間がなくなっちゃうわよ」

あちこちから「あいたたた」とか「いててて」とか聞こえてくるけど、私は声に出すほど痛くなかったのでちゃんとクールダウンしておいて良かったと改めて思ったよ。それと声をかけてくれた工藤さんにもお礼を言わなくっちゃね。


朝食が済むと後片付けをして、昨日と同じように道場の掃除を終わらせて先輩たちをお出迎えをする。全員揃ったところで朝の挨拶をして、それぞれの練習を始める。私たちはリングからすこし離れた場所に集められる。

「今日は私があなたたちの練習を見ます、横田未来です。じゃあ早速始めましょうか、昨日と同じように準備運動をしてちょうだい」

というので他の人たちと間隔を開けてそれぞれストレッチを始める。足の方から背中、腕の方まで順番に伸ばしていく。その度にちょっと体中がピキッて痛くなるけど。


「そろそろマットを用意して。体操用は2枚増やして持ってきて」

昨日と同じようにだから陸上用と、体操用のマットは4枚持ってきて少し間を開けて2列になるよう並べる。

「はい、昨日の練習で上手くできたところを思い出して、同じように動けるように意識してマット運動を始めてちょうだい。今日は2列あるからたくさん練習できるわね」


昨日は私だけスムーズな動きができなかったから上手くできたも何もないんだけど、自分の中にあるいいイメージを思い出して前転から飛び込み前転までを何度か繰り返していく。

「マット運動は基本中の基本の動きだから、意識しなくても上手くできるように体に覚えさせてね。その調子でどんどん続けて」

そういう状態になると体が勝手に動いちゃうってことかな?意識しなくてもってなかなか難しいんじゃないかしら。それともある程度のスポーツ経験者にはそう難しいことじゃないのかな?なんてことを考えながら何度もマット運動を続けていく。これは昨日より多く回っております。おかげでちょっと目が回っちゃいました。


「はい、マット運動はそこまでにして次は受け身の練習に入りましょう」

というので体操用のマットを片付けようとすると

「あ、そのマットは陸上用のマットの上に乗せてちょうだい」

え?マットの上に乗せたらせっかくの柔らかさが味わえなくなっちゃうじゃないですか。あのバスっ、ていって包まれる感じが良かったのになあ。それに痛そうだしまだ後ろに倒れるのちょっと怖いんですよ。


「じゃあこの状態で後ろに倒れてみましょうか。大丈夫よ、昨日と比べて硬く感じるけどそんなに痛くないから」

そうは言いますけどね。特に最初の1回目ができるまではちょっとなあ。女は度胸!なんて思ってたけどやっぱり度胸じゃないです。なんて思ってると山田さんがマットに向かって倒れた。バスっていうのじゃなくトスンという静かな音がして山田さんは何ともなかったよう表情で立ち上がってきた。だ、大丈夫かな?

「そうですね、横田さんが仰ってたように陸上用のマットと比べると硬かったです。でも多分ですけど皆さんが思ってるほど痛くなかったですよ」

というので私も勇気を出して倒れてみる。これができないともっと痛いことに耐えられないし練習の時間も限られてるからね。


結果的には衝撃がうまく分散されたような吸収されたような変な感覚だったけど、お尻から肩あたりまで満遍なくちょっと痛かったくらいでした。これならそんなに痛くないし怖くないし、頭を打つのだけ気をつければ大丈夫そうかも。


そんな調子で練習してたら体中がずっと回転してるみたいで足元がフラフラしてきちゃったよ。この後の昼食の準備ちゃんとできるかな、ちゃんと食べられるかな。

次話は4月5日を予定しています

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