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第3話

松本ひな子は何かカン違いをしている

みづき先輩たちがデビューしてから私の立場は下がるばかりよ。コスチュームを変え、ファイトスタイルをシリアスからコミカルに変え、永遠の妹でアイドルキャラを築いてきたものの、キャラが丸かぶりの晶(しかも本物のアイドルじゃない!)に商店街の妹でもある百合奈がやってきたてからは私の人気は右肩下がりよ。しかも実力もあっという間に並ばれて私より先にタイトルを取られてしまった(タッグのタイトルだけど)。まあ、みづきさんはプロレスでは後輩になるけど実業団にいた時は先輩だったからしょうがないところはあるけれど、綾はとうとう上田さんとのタイトルマッチにこぎつけたのよ。綾が負けるのはわかっていたけど、上田さんに普段出さない技を出させるまで追い込んだのには驚くしかないと同時に先を越されたと言う悔しい思いが今でも拭えないのよ。

タッグチャンピオンを決めるチーム分け時、誰からも指名されなかった後は自分でも褒めてあげたいくらい奮闘したものの…どうにかしないと思いながらも何もできずにモヤモヤを新しいコスチュームを作ってお客さんにワーキャー言われるのを喜んで憂さ晴らししていただけだったのかもね。

そんな私の前に現れたのが今回のプリンセス王座の開設!もしかして私のために用意されたものじゃない?どっちかって言うと私ってクイーンていうガラじゃないと思っていたのよね。威厳とか象徴とかのクイーンの王座は上田さんや豊田さんに任せて、よりプリティでエレガントでキューティーな私にはプリンセス王座の方が似合うわよね。なんか”時は来たっ!”って感じかしら。どうせタッグはトルニージョの二人が狙うだろうから私はシングルに狙いを定めていくしかないわね。きっとベルトの方から私に巻かれたがっているわね。待っててね、プリンセスのベルトちゃん、いつも以上にプリンセスらしいコスチュームで迎えにいくからね!


堀田晶は滾っている

よーし、これで私たちの本当の実力が発揮できるというものよ。そもそもの話、対戦相手との体格差がありすぎだったのよ。ボクシングだって柔道だって体重別の階級があるじゃない。それなのになんで無差別級みたいな試合をしなくちゃいけないのよまったく!まあでも、これで正当な評価と脚光を浴びることになるわ。宇野さんも同じように考えていたことだしプリンセスタッグはほぼ私たちで問題ないわ。でも一応ライバル的なタッグもいるかチェックしておかないとね。まず、うちからは萩原さん、大森さん、松本さん、晴子ちゃんと百合奈ちゃんあたりも入ってくるかもしれないわね。この中でタッグを組むとしたら大森さんと晴子ちゃん?ちょっと読めないわね。あと他団体のことも頭に入れておかないといけないわね。CRGからは増田さんと大木さん、パンテーラ会長のところのタッグも出てきそうだし顔合わせは少ないけどフェアリーテイルやフリーの選手からも来そうね。うーん、こう並べてみると、どう見ても私たちが優勝候補でしょ。うふふふ、イケるイケるわ、もうベルトを掲げてお客さんからの声援を浴びている姿が想像できるわ!いいわいいわ!これでアイドル活動にも箔が付くっていうもの。あとは宇野さんと相談してこれからのことを考えておかないと!


大森悠は狙っている

なんかね、うちの選手って上田さんの影響か知らないけど半分以上は大型選手なのよ。こっちがチクチクダメージを与えててもショルダーとかバックドロップとか一発で流れを持っていかれちゃうのよね。まったく、体が大きいってだけで武器にもなるし防具にもなるんだもん、困ったものよ。それの対策としてキックを中心に試合を組み立てるようになってからは多少は勝てるようになったけどまだまだ足りないわ。

そんな時にプリンセス王座が発表されて、これまでの苦労が報われると思ったわね。同じような体格同士だったらチャンスが広がるわ。豊田さんや工藤をぐらつかせることができた私のキックなら3発4発と繋げなくても1発でダウンさせられるわ。大型の選手にはあんまり効果がなかった技もきっと効くはずだし、密かに準備していた技が当たればノックアウト間違いないわ。新たな必殺技に昇格して私といえばこの技!みたいになってくれるかもしれない、なんて考えてたら体を動かしたくなっちゃったじゃない!よし、この練習が終わったらサンドバックを蹴って蹴って蹴りまくって初代プリンセス王座を手に入れてみせるわ!


宇野愛菜は静かに燃えている

よし、プリンセスタッグは私たちのもので間違いないわね。うちの出場メンバーを予想すると、蹴撃も何たらかんたらも揃いそうだけどひな子と悠はシングルを狙ってきそうだから実質私たちだけじゃない?相手は他団体のみかもしれないわね。とすると、CRGからは体格がちょうどいい選手がいたから、きっとあの2人かな。確か団体のベルトがないから狙ってくるわよね。それとダイヤモンズはどうだろう。北斗さんはクイーンの体格だし、そういうと北宮さんと起田さんもクイーンのほうか。残りの中島さんと宮原さんはタッグでは来ないような気がするのよね。

あとはフェアリーテイルとフリーの選手なんだけど、詳しくないからわからないわ。九龍城のタッグがくるかなと思ったけどあそこは独自のベルトがあるから今回は出場してこな…いや、いきなり二冠をなんて、あのパンテーラ会長なら考えてるかもしれないけど、今の私たちならなんとかできるでしょ。っていうかそのくらいの試練を乗り越えられない訳がない、乗り越えてこその初代プリンセスタッグ王座よね。晶も乗り気だから負ける要素がないってものよ。よし、今から連携の確認をしておかないと!


横田未来は思い出している

これでドリームファクトリーを旗揚げしてからの目標の半分は達成できたわね。ショウ子と香澄と私で前の団体を離れてから不安はあったけど、同じくらいの情熱と夢があったわ。その当時はどこどこの社長さんがプロレスに脅威があると聞いてはスポンサーのお願いに駆けつけたり、土地や建物が安く借りられるように交渉したりあちこち走り周ってプロレスどころじゃなっかたわね。そのほとんどはショウ子の知名度と顔の広さのおかげだったけど。

今、思い返してみるとコネも協力者もなく一から探すよりはだいぶ楽ではあったんだけど、ビジネスマナーすらわからない中での交渉なんてよくできたものよ。話も聞いてもらえず門前払いが当たり前だったもんね。それでもなんとかここの商店街の会長さんに出会えたことでドリームファクトリーができたわけだけど。場所が決まったらそれで大丈夫かと思ったらリングやら運動器具やら、設備のことなんて何も考えてなかったわね。そんなことも知らないで突っ走ってたんだもんね。これもショウ子と会長さんのおかげでなんとか環境を整えることができたんだけど、今度はお客さんをどう呼べばいいとかチケットの販売とか、場内で飲食業をするときは保健所の申請がどうとか製造責任者の講習がこうとか、いち選手だったらやらなかった苦労や経験をしてきたわねー。

こうして団体が軌道に乗ってお客さんにも業界の人にも注目されるようになって、GPWOのサポートも受けられるようになって選手も増えて新人もデビューさせられるまでできるようになったからこそ言えるけど、人として成長できたかもしれないけど、今までの苦労はいい思い出よねー。そんな苦労したくなかったわよ。

でも、そろそろ私にもご褒美があってもいいと思うのよ。他団体から誰が出てくるか知らないけど、うちの中だけでいったら大森、松本、佐藤、宇野、堀田、木村かな?このうち宇野と堀田はタッグに回るでしょうからあとは4人ね。松本と木村は別として大森と佐藤には注意が必要になるかもね。特に佐藤、普段はパッとしないのにこういう大事な試合になるほど人が変わったようにファイトスタイルが変わるのよ。いつもの動きとはかなり違ってくるから対策の立てようがないのよ。どうする?でも決勝で当たらなかったらなんとかないそうな気がするのよね、根拠はないんだけどそんな気がする。大森はキック主体の組み立てになるだろうからそこだけ注意しておけば佐藤より戦いやすいかも。

他団体からはまだ誰が出場するか発表されてないけど、そろそろ事務所には届いてもいいんじゃないかな?幹部特権で見せてもらえないかなー、でもそんなコスいことしないと勝てないなんて思われたくないからやらないけどね。


木村百合奈は遠慮している風に装っている

えー?デビューしたばっかりの百合奈が出場してもいいんですかー?皆さん百合奈よりも先輩だし強いし経験も豊かだから勝てる訳ありませんよー。でもちょっとくらいは出場してもいいかなーって思っています。苦しい練習を続けてデビューしたんですから、それからどのくらい強くなってるか知っておきたいですもんねー。それに百合奈がリングに上がるとファンの皆さんが百合奈のこと応援してくれるんですよ。それはもう有名人になったみたいに楽しくて嬉しくて頑張っちゃうんです。負けても負けても応援してくれるファンの皆さんにかっこよくて可愛い姿を見てもらいたい、なんて思ったりし始めています。でもちょっと怖いかもです。普段練習とか試合とかしている先輩以外に他の団体からも出場する選手がいるんですよね。そして百合奈ことを知らなくて軽く見ているでしょうけど、そんなことしたら百合奈のバックブリーカーとジャベで背中をポキンポキンにしちゃんだから。


佐藤晴子は...何も考えていなかった

次話は11月15日を予定しています

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