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第3話

お昼はしょうゆ味のちゃんこ鍋と鮭のムニエルに蒸したカリフラワーと人参の付け合わせ、あとお鍋用の薬味とタレを用意する。朝のうちに準備しておいたのでさほど時間はかからずに準備ができた。


準備が終わっても私たちがすぐに食べられる訳でもなく先輩たちが来るのを待っている。ムニエルのバターの匂いが食欲をそそる中、先輩たちが練習を終え食堂にやってきた。前田さんの指示のもとご飯をよそいちゃんこ鍋を器に盛り先輩たちの分を配膳して私たちはその後ろで待機する。先輩たちは特に会話もなく黙々と食べているので大きな食器に入れたご飯とちゃんこ鍋がどんどんなくなっていくよ。


「おかわり」

ご飯のどんぶりを差し出したので近くにいた人が受け取る。

「さっきと同じくらいで」「はいっ」

よそってきたご飯も残さず食べちゃうなんてすごい食欲ですね、さっきまでずっと激しい運動をしてたのに。


「おかわり」

私の近くで食事をしていた先輩がどんぶりを差し出してきたので「どのくらいですか」とちょっとドキドキしながら私から聞いてみた。

「さっきより大盛りで」「はい」

どんぶりを渡し自分が元いた場所に戻る。それにしてもあれだけ動いたすぐ後なのに、なんでこんなに食べられるのかしら。

そんなこと考えていると、さっきの先輩が自分でお鍋のおかわりを取ろうとしていたので私がやろうとすると「こっちは自分でやるからいいよ」と言われたのでその場から離れる。


先輩たちが食事を終えた順に席を立ったので、食器を片付けテーブルを綺麗にする。全員が食べ終わったら次は私たちの番だ。私たち用に分けておいたお鍋を温め直してる間にご飯の準備をする。目の前にはやはりというか予想通りというか、どんぶりいっぱいにご飯が盛られている。


「いい〜、昨日も前田さんが言ったけど体を作るにはしっかり練習してしっかり食べること。このくらいのご飯を食べられないんじゃ逆に痩せちゃうからね〜、それではいただきま〜す」

練習生の私たちに付き合ってくれる萩原さんの号令のもと食べ始める。大量に作ったからなのか具材の種類が多いからなのか分からないけど、家で食べるより美味しく感じるのよ。この量を食べるのは大変だけど薬味を使って味をちょっと変えればそれなりに食べられるのね。食べ始めは家との違いを楽しみながら味わい、後半はひたすら胃の中に流し込む作業みたいになっちゃった。本当にこれでご飯の量が1/3、せめて半分だったり体を大きくするとか考えなかったら美味しくいただけるんだけどね。


他の人たちより少しだけ食べ終わるのが遅くなったけどなんとか食べ終わり、食器の後片付けや洗い物、掃除を終わらせる。

「それじゃ午後の練習は14:00から始めるのでそれまでは休憩ね。何をしててもいいけどちゃんと体を休ませておいてね。この後の練習があるんだからね〜」

ええ、よく分かっていますとも。マット運動しただけなのに身体中に何か違和感というか痛みというか普段使ってないところが張ってるというか。休憩中はストレッチやマッサージしておいた方がいいかもしれない。


それにしてもさっきのはなんだったんだろう。私たちがプロテインを飲み終わってお昼ご飯の準備をしようとしてた時のことでした。

一人の先輩が厨房まできてプロテインの準備をしながら「いいなあお前ら、先輩よりも先にプロテインなんて飲めるなんて。私が入団した時はそんなことできなかったんだよなあ、ホント羨ましいわ〜〜〜」

そんなに大きな声じゃなっかんだけど近くにいた私にはしっかりと聞こえてしまった。でも誰に言ってるわけでもなく独り言にしては声が大きいしなぜか気になっちゃったのよね。他にも何人か聞こえたみたいだけど何も言い返さなかったから私も黙ってたけど「どうする?何か反応した方がいいかしら」みたいな目線を送りあったいた。そんなこっちのことを気にすることなく自分の用事を終えてすぐいなくなっちゃったけど。


まだ問題にするほどでもないと思ったけど、ちょっと気になったので前田さんに「こんなことあったんですよ〜」と暗めの緑っぽい髪をショートカットにした、私より小さくて可愛いというか幼い感じの特徴を前田さんに伝える。すると「ああ、その子はきっと松本ひな子かしらね」と教えてくれた。そういえば今日の朝挨拶した時に小さ可愛い先輩だなあって思ってた人か。

「あの子はあなたたちの3年先輩でね、後輩が入って来なかったり入ってきてもすぐ辞めちゃったりで掃除とか食事の準備とか一人でやらなくちゃいけなかったから色々苦労してきたのよ。そんなところに10何人も入ってきたもんだから、羨ましいのと嬉しいのと先輩っぽくしたかったのとどう接していいか分からなくなってそんな風になったんじゃないかしら。でも悪い子じゃないから気にしなくともいいと思うわよ。ちなみにショウ子さんが団体を作ってからはそんなことなかったからね。多分もっと、それこそショウ子さんがデビューするよりずっと昔の話よ」


自分のことじゃないのに武勇伝や昔の苦労したことを話して私すごいでしょって思わせたい人なのかな?もしそうなら逆効果だと思うんだけど。ただそれだけテンパってたって考えたら、もしかして可愛い人なのかもしれない。ただの面倒くさい人じゃないと思いたい。


まあそんなことがあったけど、食事の時以外はあんまり先輩方と接触しないだろうから午後の練習に向けてちょっとでも休憩してストレッチしておいた方がいいわよね。次はどんな練習をするんだろう。腕立て伏せとか腹筋とか、入団する前にコツコツと自主練してきたことが活かせますように。

次話は2月25日を予定しています

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