第7話
「以上をもちまして、ドリームファクトリー七夕大会の全試合が終了となりました。お帰りにの際にはお忘れ物などないよう今一度ご確認をお願いします。なお、こちらのビアガーデンは午後9時まで営業しております。引き続きお食事等を楽しむことができますのでぜひご利用くださいませ。また正面のスクリーには本日の試合のダイジェストや過去の名場面から厳選した映像を用意しておりますのでこちらもお楽しみください」
試合が終わってすぐに他の催しを楽しもうと席を立つお客さんやそのまま残って食事や余韻を楽しむお客さんが3:7くらいでしょうか。試合後の感想をお連れの方たちと「あの試合が今日のベストバウトじゃね?」とか「いやいや、そっちも良かったけどこっちでしょ」とか「あの練習生可愛かったなー、新人かな」なんてお話してるんでしょうかね。私の場合はいつも反省会になってしまうので、いつかはそういう風にやってみたいなーなんて思ったりします。
西田さん、長谷川さん、百合奈ちゃんもお疲れ様でした。セコンドの仕事はどうだったでしょうか。今日が本格的なセコンドでしたけど良かったと思いますよ。後片付けが終わった後、私たちと新人の3人とで軽くお疲れ会をした時に今日の感想を聞いてみたところ「本番前にシミュレーションさせてもらったっすけど思った以上にやることが多かったっすね」「選手たちの動きが想定以上に激しくてびっくりしました」「場外で乱闘した時にお客さんにぶつからないように避難させるのが大変でした」などなど盛り上がったり反省したりありましたが、一番はやっぱり「先輩たちの迫力が凄かった」だそうです。
3人とも裏方仕事初めてだったようですが、こういう仕事があっての表の華やかな場面が作られているってことを知ってもらえたかな?それを含めて大変だったけど楽しめたようなら良かったんじゃないでしょうか。
先輩たちは各自でお祭りを楽しんだり休んだりしているようですが、上田さんと萩原さんは当然のように商店街の皆さんとお話したりCRGとダイヤモンズの皆さんをおもてなししたりと忙しそうでした。
次の日、お祭り二日目。午前中だけで合同練習を終わらせると見回り班、本部待機(迷子センター)班、ドリームファクトリーの売店班、お祭りを楽しむ班に分かれローテーションでお手伝いをしていきます。
長谷川さんはちょっとお子さんは苦手のようで、連れてこられたびにどうしたらいいかオロオロしてばかり。それを見かねた婦人会の皆さんからあやしかたを教えてもらったようです。最初は目線を合わせて優しくゆっくり話かけ、おうちの人すく来るからもう少し待ってようねーと安心させ、折り紙やお絵描きで興味を引かせるということでした。最初はうまくできなかったようですがなんとかなったのかな?何事も経験ですから。
西田さんはのんびりマイペースなところがお子さんを落ち着かせるみたいで婦人会の皆さんも感心していたようです。本人いわく、昔から動物と子供にはなつかれやすい体質だったようで、特に話しかけるわけでもないのにお子さんが安心したり、それまでギャン泣きしていたお子さんがいつの間にか泣きやんでたりしたそうです。
百合奈ちゃんはお子さんが大好きらしく、進んでお世話をしていたそうです。優しく話しかけたりおもちゃを使って一緒に遊んだりして迷子になったことを忘れさせてあげていた様子に婦人会の皆さんはびっくりしていたそうです。ちょっと構い過ぎかな?っていうところもあったようですが。そして保護者さんが現れるとまだ遊ぶーと泣かれたとか何とかあったようです。
ただ、この3人が本部にいると用もないのに青年部の人たちがやってくるらしく、それをさばくのに婦人会の皆さんが困っていたようです。迷子センターで一緒にいたことですっかり仲良くなり、自分たちの娘として扱うようになり、仕事をサボってまでやってきた青年部の人を悪い虫がつかないようにと追っ払ってくれたそうです。あとで会長さんにこっぴどく怒られたとか。ただ百合奈ちゃんだけは商店街の百合奈ちゃんだし、まだ高校生なのでそんなことにはならなかったようですけど。でも見回りの時やお祭りを楽しんでいる時はどうだったんでしょうね。やっぱり声をかけられたんでしょうか。
そんなことがありつつもメインステージでは地元の中学校、高校の生徒さんによる吹奏楽部や軽音楽部の演奏会、ヒップホップ教室のダンス発表会、夜になって商店街主催のカラオケ大会などがが行われ、それなりに盛り上がっていたようです。
最終日、ステージ上では地元のテレビ局とFMラジオ局がお祭りの模様を中継しています。テレビやラジオで活躍してる芸のじんが会場を見て回りながらインタビューしたり屋台の食レポのやり取りをしています。それが終わるとステージ上で慌ただしく作業が進められるといよいよ最後のイベントが始まります。
「ピカッ!ゴロゴロー、ドドッドッシャーン!!!」
ナレーション)様々な困難を乗り越え、最後のボスモンスター、パワー・ササーキ・ウォーリーアーの住まうブラックダイヤ城にたどり着いた勇者一行。全てをかけて最後の戦いに挑みます。
これはCRGが中心となってダイヤモンズの皆さんとで国民的RPGを題材にしたアクション劇始まります。あの有名なゲームがどんな風になるのか楽しみです。あ、ダイヤモンズの皆さんが出てきました。赤と黒の全身鎧姿、顔にもペイントが施されていますね。中島さん、宮原さん、北宮さんも同じような格好で勇者たちを待ち構えているようです。
そこへやってきました勇者扮するCRGの皆さん。勇者は志村さん、伝説の剣と鎧と盾を装備しています。増田さんは魔法使いですね、ローブ姿に自分の背丈くらいある杖を持っています。その先には大きな宝石を咥えるドラゴンの頭部が装飾されています。続いて原口さんは格闘家の格好でしょうか、動きやすそうな鎧と両手に少し短い剣を持っています。最後は大木さんは僧侶のようです。真っ白なコートに背の高い帽子、魔法使いとは違う真っ白な杖には天使のような女神様のような装飾がついています。
うわー、ゲームの設定どうりの格好に小物まで完璧、最強の武器や防具じゃないですか。まさに本物、ゲームの世界から出てきたように見えます。さすがCRG、ゲーム会社の許可も受けて細部までこだわって仕上げてきました。
「わーはっはっは!よく来たな勇者ども!わざわざやられるためにやってくるとはご苦労だな!」
「何を言うかパワー・ササーキ・ウォーリーアー!貴様の命もここまでだ!正義の力を思い知れ!」
照明が点滅し最終決戦にふさわしい重厚でアップテンポな曲が流れ始めると、まずは僧侶の魔法で味方全員の力・スピード・防御力が上がる魔法を唱えると魔法使いが炎系の最大魔法、続けて格闘家の二段攻撃が効果音とともに炸裂!しかし、パワー・ササーキ・ウォーリーアーは虫に刺されてような態度で
「ムハハハーっ!そんなものか!効かぬ、効かぬぞ勇者ども!今度はこちらからだ!お前らやってしまえ!」
中島さんのモンスターAが勇者たちの魔法を打ち消す魔法を唱え、宮原さんのモンスターBが毒・麻痺・眠りの効果がある息を吐きかけ、北宮さんのモンスターCが体当たりで攻撃!それに続くように佐々木さんのパワー・ササーキ・ウォーリーアーが身体中のトゲトゲを発射し勇者たちにダメージを与えていきます。
ここで勇者の神様の怒りをハンマー状にしたような雷魔法!凄まじい音と稲光で反撃!
実際にはそういう風に見せているだけど、本当に剣と魔法で戦っているような迫力に私もお客さんも手に汗を握り見守っています。
勇者が斬りかかる直前にササーキが体当たり!剣が手から離れ勇者がステージから落ちるハプニング!そこへモンスターBがステージ上からラ・ケブラーダ!続けてモンスターAがトペ・スイシーダ!こんなところでプロレス技を出さなくても!でもお客さんは大盛り上がりです!もみくちゃにされながらも勇者が逆転、モンスターたちを捕まえると格闘家のダイビングボディアタック!すぐに立ち上がりモンスターをボディスラムで投げ捨てると僧侶のムーンサルトフットスタンプ!本当に皆さん何やってるんですか皆さん!
って、もしかしなくても最初のハプニングってハプニングじゃなかったんですね。なんでステージのすぐそばにマットが敷いてあると思ったらそういうことだったんですね。もう、びっくりしちゃいましたよ。
最後は勇者とパワー・ササーキ・ウォーリーアーの一騎打ち!勇者の攻撃にだんだんと動きが鈍くなるササーキ、勇者の攻撃で伝説の剣で体を貫かれるとバシッバシッ!ゴゴゴゴーとなにかが砕ける音とともにササーキが力なく倒れ、勇者たちが勝利を納めました!
「よし!みんなの力でパワー・ササーキ・ウォーリーアーを倒したぞ!これで人類の平和を取り戻せるだろう。さあ、このパワー・ササーキ・ウォーリーアーを倒した証拠を持って国へ帰り王様に報告だ」
ステージから勇者たちがいなくなるとお客さんから大きな拍手が送られ、そのタイミングでどこからか花火が打ち上げられました。まるで勇者の勝利をお祝いするような演出にも見えました。
こういうことって続くんですかね
謹んで西村修選手のご冥福をお祈りいたします
次話は3月15日を予定しています




