表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/234

第2話

順番を待っている間に列からちょっと離れて中腰の体制から飛び込むイメージで手を付くところだけ練習してみる。立野さんや山田さん他の皆さんの動きを見ながらこうかな?どうかな?って感じで床に手をつくところまでやるんだけど、ここが怖いのよね。

「目線を前に、手をついたら勢いのままアゴを引いて回転すればそんなに怖くないよ」

「へ?あ、はい。ありがとうございます」

と誰かに声をかけられた気がするので返事をしたものの、誰かが通ったような感じはしなかったんだけど。あれ、本当に声をかけられたのかと心配になってきたよ。


「そろそろこっちに戻ってきて〜」と萩原さんに呼ばれたので列に戻り、練習したイメージとどなたかのアドバイスを思い出して飛び込み前転をすると、お?何か分からないけどうまくできた気がする。飛び込むところも怖さを感じなかったしドスンと背中から落ちることもなくくるっと回転できたんじゃない?忘れないうちにもう一度!ちょっと遠くに目線をやり手をついたと同時にアゴを引いて、体を丸めて変な力を入れずにくるんと回転して勢いのまま立ち上がり両手を広げてハイポーズ!

「はいそこ〜、うまくできたのはいいけどポーズは決めなくていいからね〜」

萩原さんから冷静なツッコミが入りました。


「次はこっちね〜。プロレスの基本である受け身の練習に入る前の練習をしま〜す。」

マット運動を一通り練習したあとに陸上のマットを囲むように集められる。練習に入る前の練習ってなんだろう?


「皆さんは日常で前や後ろに倒れた時、自然と手が出て体をかばおうとするでしょ?プロレスではそういうのはやらずに受け身というのを取って体を守ります。でも手をつかないと怖いよね。だからその恐怖心を取るためと自分の体を守るための身のこなし方を覚えてもらいま〜す。じゃあこれも最初は見ててね〜」

と言ってマットにそのまま前に倒れる。あれ気持ちいいんだよね、バスっていう音と共にマットに沈むのって。

「それができたら次はこれね〜」

と軽くジャンプして体をマットと水平になるようにして着地する。今回は両手を小さくバンザイしたような格好にして着地と同時にマットに叩くようにしている。

「こんな感じでやってみましょう、そっちの方から順番にね〜」

あたりからバスっ、バスっという音が聞こえてくる。これは単に前に倒れるだけだからそんなに難しくないわよね。なんだかちょっとだけ楽しくなったのは私だけじゃないと思う。ジャンプしてからのもさほど難しくはなかった。これは学校の体育の授業で男子がはしゃいで先生が怒るのも今なら分かるよ。


「これは平気そうね。次は後ろに倒れてみましょう」

といってまたお手本を見せてくれる。体をまっすぐにしてそのまま倒れるのと同じようにジャンプしてからのバージョンも見せてくれる。

「ここで大切なのはお尻から落ちないこととアゴを引いて後頭部がマットに当たらないこと。じゃあやってみましょう」

前に倒れる時と違って皆さんちょっと躊躇してるみたい。いくら柔らかいマットがあると言っても、後ろに倒れるのは怖いかもね。時たまキャっ!とか聞こえてくるけど恐怖心を取るための練習なんだよね。特に私はジャンプしてからの倒れるのはお尻の方がキュッとなっちゃうのよね。それでも何度も繰り返すうちに、マットが柔らかいのもあってか怖いのも少なくなってきたかもしれない。


そんなこんなで午前の練習をしていると「どお、やってる?」と前田さんが再び現れた。そろそろ昼食の準備かな?

「は〜い、午前中の練習はここまで〜、食事の準備をする前にこっちに来て〜」

と萩原さんの一言でマットを片付け合宿所の厨房へ向かった。行った先には牛乳とハチミツと人数分のフタ付きのコップと大きなレトルトパックのような物が置かれていた。


「は〜い、みんなには朝の練習のあとコレを飲んでもらいます。今日はみんな一緒にするけど次からは各自で準備してね」と何かを作り始める。

レトルトパックの中から大きめのスプーンに粉状のものを取り出しコップの中に入れる。メモリのところまで牛乳を入れフタをしてシェイカーのように上下に振る。これってもしかして…

「そう、プロテインだね。練習が終わったら30分以内に必ず1杯飲んでちょうだい。飲んだことない人には飲みづらいかもしれないけど体づくりのためだから頑張って飲んでね。ちなみにバニラ味、イチゴ味、ココア味があるからそこはお好みで、飲みづらい人はハチミツを入れてもいいからね」

へえ〜これがプロテインか。私は飲んだことないのでどんなものかと興味があったので萩原さんと同じものを作ってみる。初めてのプロテインはちょっとトロッとするような粉っぽいような。味はまあ美味しくもなくまずくもなく?でもハチミツを入れた方が飲みやすくなるかもね、ってことで早速やってみる。うん、さっきよりは飲みやすくなったかも。


「プロテインなんていちいち味わって飲むもんじゃないんだからすぐに飲んでこっちの準備しちゃうよ」

これから毎日飲むものなんだからちょっとは味わってもいいと思うんだけどなー、あっそうか、他の人たちはすでに飲み慣れてるのか。


その後プロテインとコップを片付け、厨房で手洗い専用の洗剤で手のひら、指の間、手の甲、手のひらの皺から手首と肘の中間のあたりまで、それはもう丁寧に丁寧に洗う。使い捨てのペーパータオルで拭いたあとはアルコールスプレーで消毒してからやっと調理に取り掛かれる。これは前田さんからの指導で「人様の口に入るものを作るんだからこのくらいは当たり前」なんだとか。食堂を経営してる前田さんらしい方針なのでその通りにやってます。面倒ではあるんだけど、万が一「お前らの作ったご飯でお腹壊した!」なんて言われたくないもんね。

次話は2月15日を予定しています

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ