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第12話

実)プロレスの聖地後楽園ホールよりGPWOプレゼンツ、ドリームファクトリー初代タッグチャンピオン優勝決定トーナメント、優勝決定戦をお送りしています。7月も後半に入り連日35度を超える猛暑が続く中、ここ後楽園ホールもそれに負けない熱気をはらんでいます。

これまでの4試合も華やかにそして力強く、セミファイナル・メインを盛り上げるかのような手に汗握る戦いを繰り広げられてまいりました。正直なことを言ってしまうとこの休憩時間がないと我々も集中が切れてしまいかねませんでした。通常の大会でこれだけ盛り上がっていたのは近年記憶にないのですが、どうですか佐倉さん。

解)凄いですよね。私もこうやって解説をさせていただいていますが、なかなかありませんよ。第一試合からメインまでもつかと心配になりましたがちょっと一息つけましたね。

実)場内にも緊張がほぐれたゆるい空気が流れています。では気をとりなおして後半戦の展望を伺いたいと思います。それでは直後の第五試合ですが……



実)今宵、プロレスリング・ドリームファクトリーに新たなクイーンが誕生します。ドリームファクトリー初代タッグチャンピオン優勝決定トーナメント優勝決定戦。8チームの中から熱戦を制し勝ち上がってきました。横田・松本のMFS、萩原・立野のホワイトハンカチーフの両チームで決勝戦が行われます。その栄誉を手にするのはどちらか!


「青コーナより、MFS、横田未来、松本ひな子選手の入場です!」


実)スポットライトを浴びながら松本選手から現れました。今日は新しいコスチュームのようです。トーナメントの2試合はいずれも同じ物を着用していましたが、この決勝に向けて新調してまいりました。おおーっと、横田選手も!普段は赤や黒を基調とした色合いが多いのですが、珍しく松本選手と揃えてキュートなピンクのフリフリです。大変個人的な感想になりますが、可憐な横田選手も個人的にはいいと思います。


そのSMFですが、なんといっても注目は松本選手の粘り強さでしょうか。戦前の評判としては優勝候補に挙げられていませんでしたがここにきて覚醒したか、逆転勝利を繰り返してきました。パートナーの横田選手はこの大会を通して厳しいトレーニングをさせるかのようにすぐにカットには入らずに見守ってきて、それに応えるかのように粘り強く戦い、決勝戦まで勝ち上がってきました。


「赤コーナより、ホワイトハンカチーフ、萩原未来、立野みづき選手の入場です!」


対する萩原、立野の両選手が現れました。高々と白いハンカチを掲げると、客席からもハンカチが振られています。この光景は選手にとっても大きな励みになることでしょう。ゆっくりとリングサイドまでやってまいりました。優勝決定戦という重圧がかかる中、リラックスした表情でリングに上がりました。ホワイトハンカチーフは一回戦では優勝候補の一角とされていた10万パワーズを、二回戦ではCRG、ローゼンウォルフをレスリングの技術を生かし安定した戦いで相手を破り、順調に勝ち上がってまいりました。


「これより、ドリームファクトリー初代タッグチャンピオン優勝決定戦、時間無制限一本勝負を行います!」


リング上は松本と立野が残りゴングを待ちます。ん?松本が何か差し出しました。これはハンカチでしょうか?すぐに胸元にしまいました。一体どういうことでしょうか。


「レディー、ファイっ!」


実)時間無制限一本勝負が始まりました。解説は月刊プロレス副編集長の佐倉さんです。よろしくお願いします。

解)よろしくお願いします。


実)さて、先ほどの松本選手の行動ですが、あれはどういうことなんでしょうか。

解)そうですね、二人は同じ実業団に所属していた時、階級は違いますが立野選手が先輩、松本選手が後輩という関係だったと記憶しています。そしてドリームファクトリーでは立場が逆転し松本選手が先輩になりました。しかし立野選手が頭角を現し注目も集めて松本選手を追い抜いてしまいました。このタッグトーナメントのチーム分けの際には最後まで松本選手が指名されず横田選手が手を差し伸ばしチームを組んだという経緯があったそうです。その時の悔しい気持ちを糧に勝ち上がってきたと思います。それであのハンカチですが、ここまで追いついたぞ、先輩後輩関係なくぶっ倒してやってやるぞ!というアピールではないかと思います。


実)なるほど、そういったことがあった分けですね。さてリング上では場所を入れ替わりながらバックの取り合い、まるでレスリングのような試合が続いています。松本の片足タックルは潰されバックを取られるとローリング、さらにローリングはは耐えている模様です。松本が手を伸ばしロープブレイク、いったん離れます。緊張感のある立ち上がりです。両者とも休むことなく一進一退の攻防を繰り広げられています。レスリングの試合では3分間戦うと30秒のインターバルを取りまた3分間戦いますが、かれこれ5分を越えようとしていますが一向に止まる気配がありません。凄まじい集中力とスタミナです。

解)お互いに負けられない意地とプライドがぶつかり合っていますね。松本選手が白いハンカチを見せたことで立野選手も必要以上にレスリングて対応しているようです。ここまで派手な技などは出ていないのですが見入ってしまいますね。立野選手もそうですが松本選手の評価がこの試合から変わってきそうです。


実)松本が片足タックルをフェイントにバックを取る、ジャーマン!いきなり仕掛けてきましたが流石に耐える立野。今度はバックドロップ!これも耐える!さらに体を入れ替えてサイドヘッドロックからホイップ、ヘッドシザースで返しお互いに距離をとりました。


「ひな子!」


実)声がかかり松本がコーナーに下がりタッチ。労うように肩をたたくと横田選手がリングに入ってきました。赤コーナーもこのタイミングで萩原選手が入ってきました。

さあロックアップから横田のエルボー!ロープに走ってジャンピングエルボー!倒れない萩原が組み付きフロントスープレックス!バランスを崩しながらも着地!いきなりヒートアップ!

解)松本選手、立野選手が素晴らしい試合をしていましたからパートナーの二人も負けられないとばかりにぶつかり合っていますね。


実)再びロックアップから横田のヘッドロック、ロープに飛ばし横田がショルダータックル!倒れない!角度を変えてもう一発!これでも無理か、さらにもう一度!うまく躱し萩原のスリーパーに持っていった!横田自ら後ろに下がりロープブレイク。しかし赤コーナーに近く場所が悪かった。萩原と立野が悠々とタッチ、立野とエルボーとチョップを交互に入れてからコーナーに戻りました。

フライングメイヤーからスリーパーへ、スタミナを奪う作戦でしょうか、横田の足がロープにかかりブレイク。その背中にサッカーボールキックを入れて萩原に変わります。ふてぶてしいですね。

その萩原、引き継ぐようにスリーパー、そしてカバー、カウントは2。横田を起こしてロープへ、うおっ!横田の高い打点のドロップキックが顔面にヒット!萩原を連れて青コーナーへ、松本とタッチ。ダブルのブレーンバスター、股裂き、低空ドロップキック!松本のカバーはカウント2、横田がコーナーへ戻ります。

松本が萩原の左腕を痛めつけます。ストンピングからアームブリーカー、キーロックと繋げます。基本に忠実に攻め立てる松本、苦渋の表情で耐える萩原はロープに逃れます。

ここまでの攻撃がはまっている松本。ヘッドロックからフライングメイヤー。萩原がスリーパーを切り返してハンマーロック。そこへヒザを落としていきます。そこから首を狙いますが切り返され逆にハンマーロックの体勢に。一旦外すと萩原が松本の腰にエルボードロップ!ヒザを落とすと足をたたみ、アゴを持って弓なりに絞っていきます。松本はアゴの手を振りほどきロープへ。そこから赤コーナーに引きずり込まれてしまいます。立野が入りコスチュームを掴んで腰にエルボー!ボディスラムからハーフボストンクラブ!松本の動きが止まってしまいました。

解)試合開始から全力で戦ってきた分スタミナが切れてしまったかもしれません。このトーナメントに向けてハードな練習をしてきたとは聞いていますが、実際の試合となると練習と違ってスタミナの消耗が激しいですからね。ちょっとこれは厳しくなってしまいました。


実)ローンバトルが続いていますが横田は簡単にカットに入りません。時折声をかけますがギリギリまで松本に任せているようです。立野が胴締めスリーパー!勝負を決めにきたか?ここで横田がカット、流石にこれは危ないと見たのでしょう。


「ほら、しっかり!一発返してこい!」


実)一声かけてコーナーに帰ります。さあ立野が松本をロープに振ってスリーパー、これを切り返しバーックドロップ!ようやく一発返して横田とタッチ成功!入ってきた横田は立野にエルボー!コーナーの萩原にもエルボー!突っ込んできた立野にボディスラ…ツームストンパイルドライバー!!!カウントは2!滅多に出さない大技を持ってきました!孤軍奮闘!形勢逆転!萩原にもう一発お見舞いすると一声吠える!この体勢は…タイガードライバー!返した!ギリギリで立野返しました!

解)決まってもおかしくない一撃でしたが意地で立野選手も返しました。ものすごい粘りです。


実)もう一度タイガードライバーを狙うが萩原がカット。ダブルのブレーンバスターから立野のジャーマン!これを必死の形相で松本のカットが間に合いました!その松本に萩原がジャーマン!投げっぱなし!萩原に横田がリバースフランケンシュタイナー!横田に立野が予選スラム!立野に松本がバックドロップ!四選手ともリングに大の字に倒れてしまいました!

解)いやー、終盤でこの動きができるとは。全身全霊をかけてこの決勝戦に挑んだ両チームだけあって決まりそうで決まりませんね。


実)最初に立ち上がるのは…松本です。横田を呼びなんとかタッチ。立野と雌雄を決するか。チョップとエルボーが入り乱れる打撃戦!徐々に松本が押し込んで立野をロープに振ってドロップキック!耐えた立野はなんとスピアー!首を掻っ切るポーズからジャーマンスープレックス・ホールド!ギリギリ2で返す!グロッキー状態の松本の腕を掴んで引っ張り上げると必殺の予選スラム!これは返せないか!カウント3つ入ってしまいました。

解)最後はあっけない幕切れになった思っている視聴者もいるかと思いますが、それまでの戦いが凄まじかったですから仕方がないことだと思います。しかしこの決勝戦の勝者は初代チャンピオンにふさわしい戦いだったと思います。


実)おっしゃる通りです。この結果により初代タッグチャンピオンはホワイトハンカチーフの萩原未来、立野みづき選手となりました。今日の試合が今後の指標になりそうです。客席にも白いハンカチが揺れています。いやー凄かった。

高橋奈七永選手が引退を発表しました 「五体満足でリングを降りないといけない」とても重い言葉だと思います

次話は12月25日を予定しています 次話こそは日を跨がないようにしたいと思います

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