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第11話

上田さんと渡辺さんの前哨戦はほとんどのお客さんの想像と違った内容になってしまったみたいで、試合が終わってもザワザワとしています。「もっとちゃんとした試合になると思ったんだけどなー」「まさかこんな展開で終わらせるとは」「でも先生らしいっちゃらしいな」などなど、お客さんの声が聞こえてくるなか、セミファイナル、タッグトーナメント二回戦第一試合が始まろうとしています。入場曲が流れるまで落ち着きがない雰囲気から、上田さんと渡辺さんの試合に相当期待していたんでしょうね。こんな結果に明日の試合がどうなっちゃうのか今から心配です。


気を取り直しまして。

青コーナーにMFSの横田さんと松本さんがやってきました。お二人とも気合十分な様子で、いつもは可愛らしいそぶりの松本さんも試合に向けて真剣な表情でコスチュームも一回戦と一緒です。こういう大きな大会とか大事な試合の時はコロコロと変えてきていたのですが、変えてこなかったということはそれだけ今まで以上に真剣に取り組んできたんでしょうね。リングに上がってもそんな感じですから松本さんのファンのお客さんはちょっと戸惑っているみたいです。


そして赤コーナーにはタップアウトの中野さんと山田さんが入場してきます。こちらのお二人も気合十分な様子ですが、MFSのお二人とは違う雰囲気を醸し出しています。なんていうか、武士?戦士?のような凄みを感じさせますね。

おおー、リング上で対峙する両チーム。横田さん、中野さんはキャリアから当然として、山田さんは前の競技で全国レベルの猛者と対戦してきた経験があるからか、お三方の体の中に抑え込んでいる何かが吹き出てきて、髪の毛が逆立って金髪になって変身してしまいそうな異様な雰囲気です。意外といっては大変失礼になってしまいますが松本さんも負けてないですよ!体格的に一番小さいですがやる気マンマンです。


レフェリーのチェックの後リング上に残ったのは松本さんと山田さん。軽く握手をするとゴングが鳴らされました!

にじり寄ってロックアップ。山田さんがヘッドロックで捉えるとすぐにホイップ、松本さんのヘッドシザースを腕ではらうと袈裟固め。どこかが極まっているのか足をバタバタさせてロープに逃げてブレイク。

松本さんは首を気にしながら山田さんに向かっていくと右手を前に出しました。右手、左手と組み合って力くらべ、自分から仕掛けたのにやや押されぎみです。すると山田さんのわきの下に頭を入れてそのまま後ろに投げてブリッジ!カウントは2まで数えられ、お互いに立ち上がると山田さんのロックアップをかいくぐりバックを取ると足を引っ掛けて前に倒し、腕を取りつつサイドヘッドロックを狙っていきます。そういえば松本さんてレスリング経験者でしたね。グラウンドではやや有利な状況を作っています。

サイドヘッドロックからフロントネックロックへ、というところで山田さんがロープに足を伸ばしブレイク。仕切り直しというところでお互いのコーナーに戻りパートナーとタッチ。横田さんと中野さんの対戦になりました。松本さんはコーナーに戻り戦況を真剣に見つめています。


「10分経過、10分経過ー」


だんだんと松本さんが赤コーナー近くで捕まりはじめ、それに耐える時間が多くなってきます。執拗な絞め技にうめき声が聞こえてきます。中野さんと山田さんはテンポよくタッチを繰り返して腰のあたりを中心に痛めつけていきます。ダメージで動きが鈍くなっていく中で一方的に攻められているように見えても反撃の機会を狙っているようで、なんとか一発一発と返していっています。フォールされても横田さんのカットがなくても必死で返していく姿にだんだんとお客さんの応援している声が大きくなってきます。

そして何度目かのフォールをカウント3ギリギリで返したタイミングで「ひーなーこっ!ひーなーこっ!」とひな子コールが起こりました!そこへ中野さんと山田さんのダブルの攻撃からニュートラルコーナーへ投げられ山田さんの串刺し式のバックエルボー、中野さんのフロントハイキック!フラフラになった松本さんをすぐに山田さんに向けて投げるも入れ替わって中野さん山田さんの誤爆を誘発!力を振り絞ってドロップキックの連発で二人をなぎ倒すとやっとの思いで横田さんとタッチしました!これは間違いなくひな子コールのおかげてしょう!

今までコーナーにいた鬱憤を晴らすかのようにお二人を相手に大暴れ!山田さんにエルボーを連発、ロープへ振ってジャンピングニーアタック!フォールを2で返されると髪の毛を掴んで起こし、前から肩車のように飛び乗るとフランケンシュタイナー!カウントはギリギリ2で返されると両手を大きく広げてこれで決めるぞのポーズを取ります!山田さんを強引に起こして再び前から組みつくと、山田さんをコーナーのトップに場外に向かって座らせると肩に飛び乗り、フランケンシュタイナーのように後ろに投げました!!(※1)これは受け身の取りにくい技!返せないかー、おおう!中野さんのカットが間に合いました。その中野さんを場外に蹴落とし「ひな子!」と叫ぶと松本さんとタッチ、山田さんを指差し何か指示を出しました。

ダメージが少し回復してきた松本さんは腰や背中にストンピング、無理やり起こすと山田さんがチョップで反撃するもサミングで黙らせてDDT!再び立たせバックドロップのように持ち上げると山田さんを空中で回転させながら背中から前に叩きつけました!(※2)初めて見る技です!フォールは中野さんのカットが間に合いました。そこに横田さんが「決めろ!」といって中野さんを連れて場外へ。松本さんは山田さんをボディスラムで投げるとコーナーにトップに登り、なんとダイビングヘッドバット!肩口にヒット!懸命に足を掴んで体重を預けて方エビ固め!ワン!ツー!スリー!と大合唱で数えられてカウント3!見事山田さんから勝利を納めました!

見栄えとか可愛いとかが何よりも優先していた松本さんがあんな勝ち方をするなんて…少し前に松本さんのことで心配していた上田さんもこれで安心できることでしょう。MFSの横田さんと松本さんが決勝に進みました。


続いてメインイベントです。松本さんの奮闘が印象に残っている中、青コーナー側にホワイトハンカチーフの萩原さんと立野さんがやってきました。白いハンカチを掲げると堂々とリングに向かっていきます。

対する赤コーナーには唯一の他団体チーム、CRGの増田さんと大木さんがやってきました。こちらも気負うことなく堂々と入場してきます。

リングで向き合う両チームの雰囲気は凄むでもなく緊張しているでもなく、でも何というか近寄りがたい雰囲気にお客さんもシーンとしています。淡々とボディチェックが行われ注意事項を受けて握手を交わすと大木さんがリングに残りました。それを見て立野さんもリングに残りました。


「レディー、ファイっ!」

ゴングが鳴らされて両者リング中央へゆっくりと進みます。そういえば大木さんがドリームファクトリーと対戦するのが決まった時、立野さんと戦いたいとか特別に気にしていたことがありましたね。今回やっと念願かなっての対戦ですけど、思った通りロックアップをせずレスリングみたいに両手を前に出して相手をけん制し片足タックルやバックを狙うようにフェイントを織り交ぜながら細かく動き回っています。お、勢いよく飛び込んだ大木さんですが、立野さんに軽くあしらわれてしまいました。頭を押さえて潰されると上に乗られ首に腕を伸ばされてしまいます。それを躱して立ち上がりもう一度タックル、立野さんの腰あたりに絡みつくも体の体の隙間に腕を入れられ距離を取られてしまいました。立野さんはすぐにバックに回り、持ち上げて前に倒すとフロントネックロック狙いで腕を取りますが逆に腕を取り返されてハンマーロックからサイドヘッドロックを決められてしまいました。

しかし横に回転して大木さんをフォール、これはカウント2で元に戻されるとやや強引に立ち上がりロープブレイク。すると増田さんがタッチを要求、大木さんと代わりリングに入ってきます。立野さんは青コーナーに戻ると萩原さんと何やら会話をし、そのままリングに残りました。


増田さんは片方のヒザがつくくらい体勢で低くして、フェイントを混ぜながらタックルを仕掛けようとしています。立野さんも体勢を低くしてそれに対応するように動いていきます。


試合開始からここまで、ロープワークやドロップキックどころかロックアップさえないスパーリングのような静かな試合ですが、お客さんは固唾を呑んで見守っています。マットに擦れるシューズの音や激しく動き回っている選手の息づかいしか聞こえないのに熱量はムンムンのリング。いわゆる地味な展開なのにずっと見ていても飽きないという不思議な感じです。


立野さんがバックを取られるとそのまま青コーナーまで下がり萩原さんにタッチ。増田さんは捕まらないように急いでリング中央に戻り萩原さんを待ち構えます。やっとここでロックアップ、増田さんのヘッドロックを萩原さんがロープに振ってショルダータックル、萩原さんがロープに走り、増田さんがリープフロックで避けて返ってきたところにドロップキック!大木さんを呼び込んでダブルのショルダータックル、起きあがったところにダブルのドロップキック!大木さんがコーナーに戻ると増田さんとタッチ。青コーナーの近くでフライングメイヤーからスリーパーホールドへ。しかしきちんと決まってなかったか萩原さんが立ち上がると大木さんを持ち上げて横に落とすようなバックドロップ、続けて上半身を反らせるような袈裟固めで締め上げるとたまらず増田さんがカットに入りました。


萩原さんは大木さんを連れて青コーナーへ、クイックタッチで腰回りを中心にヒザを落としたりボストンクラブでダメージを与えていきます。大木さんは必死に赤コーナーに帰ろうとしますがあと一歩のところで捕まってしまい青コーナーに連れ戻されてしまいます。そんなやりとりが何度か繰り返され、足を掴まれた時のことです。大木さんは片足を掴まれたまま立ち上がると延髄斬り!倒れそうな萩原さんにネックブリーカー!前転して赤コーナーに戻ると増田さんにタッチ。立ち上がった萩原さんの後ろに回ると肩車をされるように飛び乗ると後ろに倒れました(※3)頭から真っ逆さま落ちたけど大丈夫ですか?ギリギリカウント2で肩をあげたのでひと安心です。最近の流行なのでしょうかフランケンシュタイナー、色々なバリエーションが楽しめます。おっと、それどころじゃないや。


バックブリーカー、ボストンクラブで腰を攻められると立野さんがカットに入ってきました。増田さんの顔面に張り手をしても技が解かれず、逆に自分で技を解いて立野さんに反撃、エルボーとチョップ合戦に発展してしまいました。ちょっと熱くなってしまったようで萩原さんに気付かずにいるといつの間にか1対2で攻められ劣勢に陥ってしまいました。


立野さんがコーナーに戻ると萩原さんとタッチ、立野さんは増田さんにジャーマンスープレックス!投げっぱなし!追撃をしようとするところに大木さんがミサイルキックでカット!コーナーまで飛ばすほどの勢い!それを見てリングに入ってきた萩原さんにはドロップキックで場外に落としました!おおー大木さんすごい!

増田さんを気遣い赤コーナーに戻るとタッチしてリングイン。倒れていた立野さんを起こしニュートラルコーナーへ投げて串刺し式のダイビングボディアタック!そしてボディスラム!コーナーのトップに登るムーンサルトプレス!これを返されると「よし、行くぞー!」再びとコーナーに登るとひと呼吸してムーンサルトフットスタンプ!食らったらうげってなっちゃう!立野さんは直前で躱し、着地の直後に予選スラム!不意に投げられたからきちんと受け身の体勢になってなかったのか大木さんがなんかぐちゃっとなってしまいました。

そんな大木さんを無慈悲に抱え上げてコーナーのトップに座らせると、立野さんもコーナーに登ります。セカンドロープに立つと大木さんの腕を掴み抱え上げると豪快に後ろに投げてしまいました!(※4)ゴロンとリングに投げ出されて全く動かなくなった大木さんにゆっくりとフォールに入ります。増田さんは萩原さんがカットに入るのを食い止めています。これは返すことなくカウント3が入ってしまいました。

これで優勝決定戦はMFSとホワイトハンカチーフの対戦が決まりました!


※1 コロニー落とし(鈴木鼓太郎版)みたいな技だと思ってください

※2 ブルーサンダーみたいな技だと思ってください

※3 リバースフランケンシュタイナーみたいな技だと思ってください

※4 雪崩式オリンピック予選スラムみたいな技だと思ってください

オープニングマッチの永源遙対百田光雄戦のレフェリングが懐かしく思います

謹んでマイティ井上さんのご冥福をお祈りいたします。マーイティーーーっ!!!

東京女子プロレスの荒井優希選手がSKE48を卒業後、プロレスラーに転身すると発表されました

ご自身も簡単なことではないとおっしゃっていましたが、陰ながら応援したいと思います

次話は12月15日を予定しています

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