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第6話

試合開始前に初代タッグチャンピオン決定トーナメントを再来週に三日に分けて開催することを発表すると、客席から大きな拍手と声援が起き、優勝決定戦が後楽園ホールで行われると聞かされると、声援とえーーっという声が8:2くらいの割合で起こり、さらに上田さんと渡辺さんのタイトルマッチが同じ日に行われると聞かされるとぎゃーっていう悲鳴のような声が聞こえてきました。挑戦するのを選手の自主性に任せた結果、お互いに牽制したり遠慮したりでタイトルマッチの間隔がかなり空いてしまいましたからね、お客さんも待ってました!とばかりに感情が爆発してしまったようです。第一試合が始まる直前までザワザワしてしまいましたから。


肝心の対戦カードはというと

一回戦第一試合、横田さん・松本さんのMFS対九龍城のサクヤさん・ナギサさんのエルマナス・インティライミ

第二試合、宇野さん・堀田さんのラ・トルニージョ対中野さん・山田さんのタップアウト

第三試合、豊田さん・工藤さんの10万パワーズ対萩原さん・立野さんのホワイトハンカチーフ

第四試合、大森さん・私の蹴撃対CRG増田さん・大木さんのローゼンウォルフ

厳選なる抽選の結果、このようになりました。

まず九龍城のサクヤさん・ナギサさんのチーム名ですが、直訳すると太陽の祭り姉妹という何とも賑やかでおめでたい名前ですが侮っていはいけません。試合内容はルチャ・リブレそのままの派手な空中戦と見たことのない合体技を繰り広げていきます。長年一緒に暮らしてきたからこそ、お互いのしたい事、する事がわかっているかのような動きは息があってるとかアイコンタクトでとかでは説明できないくらいの連携で度肝を抜かされます。横浜の大会では残念な結果になってしまいましたが、次こそはと期待のかかる若手のホープといったところでしょうか。


そしてCRGの増田さんと大木さんは何回かドリームファクトリーでも試合をしていますね。特に大木さんは対抗戦の最後に志村さんから直接リングネームを授かったという感動的なシーンが印象的でした。その時のタッグマッチでは何とか私が勝つことができましたが、次はどうなるかわかりません。増田さんの指導のもとメキメキと実力をつけてきたという話も聞いたことがありますので一層注意しなくてはいけません。チーム名はローゼンウォルフ、バラと狼ですかね?バラは所属する団体から、狼は増田さんのイメージでしょうか?なんか神秘的な雰囲気を感じます。


初日に一回戦の四試合を、二日目に勝利チーム同士の二回戦が行われ最終戦のセミファイナルで優勝決定戦です。

しかし、そこでGPWOからお話があったようです。初日はタッグマッチが四試合しかないのは問題があるんじゃないかと。それだけでお客さんは納得するのか、盛り上がりにかけるんじゃないかとなったため、二試合が追加されました。今回のトーナメントに出場しなかったダイヤモンズの北宮さん・宮原さん対CRGの吉岡さん・原口さんのタッグマッチとフェアリーテイルのホワイトスワンこと白鳥さん対九龍城のヘイトさんのシングルマッチが組まれることになりました。これで全六試合となります。そして二日目は負けてしまったチーム同士の対戦と上田さんと渡辺さんのタイトルマッチの前哨戦がタッグマッチとして組まれました。これにはスタッフさんも初日が終わらないと誰と誰が前哨戦のパートナーに選ばれるか、残りの選手をどうするのかとかバタバタしそうですね。



初代タッグチャンピオン決定トーナメントの初日を迎えました。大会開始前にセレモニーと選手紹介と改めて対戦カードが発表されると客席から拍手と歓声が巻き起こります。


いよいよって感じですね、お客さんの期待感が会場中に満たされていくようです。


第一試合、ホワイトスワンこと白鳥さんとヘイトさんの対戦です。この試合はずるいことをするヘイトさんに白鳥さんがどう対抗するかにかかっていると思います。いわゆるベビーフェイスとヒールという勧善懲悪な図式が成り立ちます。

序盤は白鳥さんが華麗で優雅な立ち回りで翻弄していたのですが、何か両手を広げて余計なアピールを邪魔したしたところからヘイトさんがペースを握ります。髪の毛をつかんだりサミングしたり、鼻の穴に指を突っ込んでブサイクな顔をカメラマンさんに見せたりと小さな反則や嫌がらせをしていきますが、そのくらいならインサイドワークの範疇ですね。白鳥さんは途中途中で反撃反撃していますがあまり効果がなかったようで最後は顔面をかきむしった後にラ・マヒストラルで丸め込みヘイトさんの勝利で終わりました。


第二試合は若手の域を出たダイヤモンズの宮原さん・北宮さんとCRGの吉岡さん・原口との対戦です。一見チャレンジマッチの様ですが、ダイヤモンズ側としてはトーナメントに出られなかった分、CRGを破るという実績を積んで優勝したチームに挑戦状を叩きつける様な、ペース配分など考えないような勢いで攻めていきます。ターゲットはもちろん原口さん、ではなく吉岡さん?タッグマッチの定石としては実力が低い選手—この場合は原口さんかな—を狙うと思っていたのですが、場外に叩き落とした後に吉岡さんに攻撃を集中させていきます。レフェリーに止められても反則カウントギリギリまで二人掛かりで攻めていきますが、あるときは正面から、あるときはのらりくらりとかわしたり同士討ちを狙ったりしてやり過ごします。それに焦ったかダイヤモンズの攻撃が雑になってくると原口さんが復活!吉岡さんとタッチするとそれはもうビックリするくらいの大暴れです。ダブルのラリアットを中央突破すると二人同時にフライングボディアタックで潰し、宮原さんを引きずり起こしボディスラムを北宮さんめがけて叩きつけます!再び宮原さんを起こすとコーナーに投げ、そこに北宮さんも投げ、仕上げにご自身で串刺し式ドロップキック!反撃を試みたダブルのブレーンバスターをひとりで投げ返しました!これにはお客さんも大盛り上がりです!最後は宮原さんを腕ごと抱え込んでジャーマンスープレックスホールドで勝利を収めました。



「ただいまより、ドリームファクトリー初代タッグチャンピオン決定トーナメントを開催いたします!第一回戦第一試合、青コーナーより九龍城、エルマナス・インティライミの入場です!」

リングアナウンサーの声が場内に響くといよいよって感じがしますね。颯爽とガウンをなびかせてリングに向かっていきます。小柄な体操選手のようなサクヤさんとガッチリとした体格のナギサさんがコーナーのトップに登りお客さんにアピールをしていきます。


「続いて赤コーナーより、ドリームファクトリー、MFSの入場です!」

曲が変わり横田さんと松本さんがリングに向かってきます。松本さんはちょっと緊張しているようですね。お?今日のガウンとリングコスチュームは前に見たことありますよ?こういうときは必ず新調してくるんですけどね。あれかな?横田さんに優勝するまで新コスチューム禁止令でも出たのでしょうか?ありそうですね…ってうわーっ!サクヤさんとナギサさんがガウンのままプランチャを放ってきました!選手紹介もボデイチェックもまだなのに!先制攻撃で場外戦に巻き込み鉄作や鉄柱に打ち付けていきます!松本さんのガウンを無理やり引き剥がしてリングにあげるとお二人もリングに戻りもう一度お客さんにアピール!ここでゴングが鳴らされました。素早く自分たちもガウンを脱ぐと松本さんをロープに振りダブルのフライングクロスチョップ!続けてブレーンバスター!膝立ちの状態にドロップキック!そしてナギサさんがバックフリップで落とすと直後にサクヤさんのムーンサルトプレス!!!カウント3ギリギリのところで横田さんのカットが間に合いました!間に合った〜〜〜。サクヤさんたちは試合開始前から一気に流れを掴みました。このままだとすぐに試合が終わっちゃいますよ、松本さん頑張って!

さらにナギサさんがサクヤさんをロープを使って投げ、その勢いでヘッドシザースホイップ!一歩間違えたら自爆しそうな危ないことをしてきます。それでもなんとかタッチできても松本さんの疲れを取るだけで精一杯みたいで連携とか合体技とかできません。


横田さんも2対1の戦いをギリギリのところでやり過ごし、ダメージを受けながらも九龍城に傾いた試合の流れを立て直していきます。ほどなくして松本さんとタッチ。疲れは見えますがやる気マンマンです。ですがいきなり捕まりサクヤさんのボディプレス、ナギサさんのセントーン、サクヤさんのムーンサルトプレスは直前で回避しスモールパッケージホールドで反撃するもカウント2で返されます。直後の低空ドロップキックからのフォールは自力で2で返していきます。

この時間帯になって段々と松本さんへの声援が多くなってきました。さっきの場面もカウント2で返したところで「ひーなーこっ!ひーなーこっ!」と会場全体から聞こえてきます。今まで何度もピンチになりながらも諦めずに3カウントを許さなかった粘りが終盤にきてお客さんのハートをガッチリキャッチできたようです。ここが頑張りどころです!

とはいうものの松本さんも満身創痍、スタミナも尽きかけています。

何もできないと思われているところにナギサさんがバックドロップを仕掛けます。何とか投げられないように耐えますが3回目で投げられ...違う、自分でジャンプして後ろに着地、そこからスクールボーイ、全体重を乗せて押さえ込み!ワン!ツー!スリー…お客さんも大合唱でカウントをかぞえます!ギリギリで肩が上がったように見えましたが……

カンカンカン!レフェリーが松本さんの手をあげて勝利を伝えます。その瞬間、会場からは大声援が起きました!ナギサさんがレフェリーに食ってかかり3つ入ってないと猛抗議!サクヤさんもそれに加わりますが判定は覆らず、MSFの勝利が決まり二回戦へと進むことになりました!やった!すごい松本さん!

ひなこコールが鳴り止まない中で何とか立ち上がった松本さんはかなり疲れているようですが、その表情には見たことのない満足したような笑顔が見えました。

次話は10月25日を予定しています

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