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第3話

入団テストが終わった次の日にも朝のミーティングがありました。あら珍しい、いつもは週に一回なのに、何でしょうね。

「はい、集まってくれてありがとう。今日のお知らせは、なんと、タッグ王座を設立し初代チャンピオン決定トーナメントを開催することになりました!」

おおー、とうとうタッグのチャンピオンも決めることになりましたか。プロレスといえばシングルのチャンピオンとタッグのチャンピオンは必要ですもんね。他の団体だと体重別のジュニアヘビー級とかクルーザー級とか、年齢別のアンダー30とか3人組のタッグチャンピオンとかあるようですけど、そういうのはたくさんの選手がいる大きな団体ができることで、うちくらいの規模だとそこまで増やしたら選手の半分は何かしらのチャンピオンになっていしまいますね。


「そこでなんだけど、今回のトーナメントには私と芹香、クリスとジャスミンは不参加になります。せっかく新設されるのに私が出ちゃって勝っちゃったら、いきなりベルトを独占することになってちょっと面白くないでしょ?クリスとジャスミンはスケジュール的にね」

そうかー、上田さんと渡辺さん、クリスさんとジャスミンさんがが出ないとなると、残った選手は12人、6組でトーナメントですか。そうすると2組がシードで試合数が少なくて有利不利が出てきそうですね。そんな不利な状態から優勝したらそれはそれでお客さんは盛り上がりそうですけどね。そうなるとチーム分けが大事になるかもしれませんね、どうするんでしょうか。


「今回はGPWOの認定を受けることと6組だと試合数的に盛り上がりに欠けそうということで、他団体から2チームが参加します。クリムゾン・ローズ・ガーデンから1組、九龍城から1組参加することが決まりました」

おおー、これまた他の団体から参加ですか。これで8チーム、優勝するまで3回戦うことになり、試合数の有利不利がなくなりますね。クリムゾン・ローズ・ガーデンさんも九龍城さんもどなたが参加してくるのか楽しみです。


「それでチーム編成なんだけど、今回に限ってはある程度実力差が出ないようにして欲しいのよ。例えばエツ子と香澄が組んじゃうと誰から見てもここが優勝じゃん、って思われるのがね、面白みにかけると思うのよ。だからなるべくキャリアのある選手とそうでない選手と組んで、どのチームが優勝するか予想しにくくしたいの。ついでにタッグマッチの面白さ、難しさを教えてあげて」

これまで何試合もタッグマッチをやってきましたが、優勝するとかベルトをかけて試合をするとなるとまた違う試合運びとかあるのでしょうね。教えてあげて、ということは私たちのようなキャリアの浅い選手はまだ上田さんが納得できるまでに至ってないってことなんでしょうかね。


「それで、トーナメントの日程なんだけど、優勝決定戦は7月の最終日曜日、場所はGPWOが後楽園ホールを押さえてくれました!」

それを聞いて、おおおーと拍手が巻き起こりました。やっぱりプロレス・格闘技の聖地言われるだけあって先輩たちや格闘技経験者にとっては特別な場所だったりするんですね。私は今のところ、へえ〜、としか思うことができないんですけど、いずれそこが特別な場所と思えるときがくるのでしょうか。


「全くねー。去年、タイトルマッチを七夕祭りでやったのが相当悔しかったみたいで、この話を持って行ったら〝場所は任せてください〟って張り切っちゃってね、たまたまキャンセルが出たところを押さえちゃったのよねー」

おっとっと、あの時のことを根に持っていたみたいでしたか。無料でタイトルマッチをしたことはお祭りを盛り上げることに大成功だったけどGPWO側としてはプロレスの大会として成功させたかったんでしょうかね。でも、そのおかげで新人さんが入ってくれるきっかけになったんだから良かったと思うんですけどね。もしかしたら入場料とかグッズ売り上げとかの業績?のことを考えてのことかもしれませんけど。


「さて、そこでみんなにお願いなんだけど、今日中にチーム分けをして欲しいのよ。マスコミへの発表とか諸々の関係で来週中には資料を提出しないといけなくなっちゃってね。急な話で申し訳ないんだけどよろしくね」

「晴ちゃん、もしかしたら先輩たちから声をかけられるかもしれないわね」

ボソッと工藤さんから言われましたけど、そうですか?って感じです。優勝を狙うには私だと少し実力不足だと思いますけどね。

「何言ってるのよ、ブローテで優勝して九龍城の大会でも勝ってて、同期の中で一番わかりやすい実績を残してるのは晴ちゃんなのよ?それで選ばれないなんてないんじゃないの?」

そ、そうですか。でもこの後には練習もあることですし、今日中にって急すぎますよね、他の先輩たちもザワザワしています。


「んー、急には難しいか。じゃあこうしましょう。キャリアの長い選手の上から6人がそれ以外の6人を指名していきましょう。くじ引きでいいかな?そんな訳で未来、香澄、エツ子、香織、悠、愛菜はこっちに来て」

上田さんがクジを用意するのにその場を離れると、どうしようかーと話し合いが行われているようで、そのうちにジャンケンでいいんじゃない?ということになっていきます。まあ6人もいるのですぐに決着はつきませんけどね。そんなこんなしているうちに上田さんが戻ってきました。あー良かった、ジャンケン自体が白熱してきて声が大きくなり、なかなか決まらないもんだからと実力行使でって雰囲気になってきましたからね。


「あなたたち、何サツバツとさせてるのよ。はい、これで決めちゃおう」

持ってきたものはクジというより筆記用具と箱でした。一体、何が始まるんでしょうか。そんな複雑なことしなくてもいいと思うんですけど?


「今から配る用紙にパートナーにしたい選手の名前を書いて、終わったら私にちょうだい」

くじ引きで決めるって言ってたのに何が始まるんだろうと首をひねりながらも用紙に記入しているようです。


「全員分集まったわね。ん、んん…。これより、初代タッグチャンピオン決定トーナメント、パートナー選抜会議を始めます。横田未来、第一巡選択希望選手は…山田綾」

へえー、横田さんは山田さんがいいと思ったのか。確かに山田さんや立野さんには指名が早くきそうですよね。

「萩原香澄、第一巡選択希望選手は…立野みづき」

「豊田エツ子、第一巡選択希望選手は…工藤江利花」

その後も大森さんは私、中野さんは山田さん、宇野さんは堀田さんを指名しました。意外と指名が重ならないなーと思っといたら、山田さんは横田さんと中野さんと競合してしまいましたね。

豊田さんと工藤さん、宇野さんと堀田さんは師匠と付き人みたいな間柄だったので、もしかしたら他の先輩たちは空気を読んで遠慮したのかもしれません。私も大森さんに蹴りやローリングソバットを教えてもらったのでちょっとは関係あるのかもしれませんが、そして誰にも指名されなかった松本さんは…触れないであげたほうがいいかもしれません、相当ショックを受けているようです。


「では、横田選手と中野選手はこちらへお越しください」

この会議を始めた時から急に淡々とした話し方に変えたのってあれですよね、野球のドラフト会議のをマネしてますよね?

「こちらの封筒をお取りください。そして中を確認してください」

ゴソゴソ……よっしゃーーーっ!と中野さんが〝交渉権確定〟とハンコが押されている用紙を高く掲げてガッツポーズをしているところまで再現しなくてもいいと思うんですよ。皆さん、というか一部の先輩たちだけですね、そのネタがわかっているのは。


「ん、んん…。決まったようね、あとはそれぞれチーム名を考えておいて。まあこっちは今週中でも構わないわ、じゃあお疲れさ…ってまだ練習もやってなかったわね」

ど、どうしましょう。ネーミングセンスのない私にとって難しい問題です。でもこういう時は先輩にお願いしちゃいましょう。大森さーん、チー「どうする晴子、なんかいいアイデアある?」い、一緒に考えましょうよ、ね?

最終的にチーム編成は、横田さんと松本さん、萩原さんと立野さん、豊田さんと工藤さん、中野さんと山田さん、大森さんと私、宇野さんと堀田さん、以上のようになりました。


「そうだそうだ、ひとつ忘れてたわ。優勝決定戦がある日のメインで私と芹香のタイトルマッチがあるからみんなで盛り上げていきましょう!」

そう言って上田さんは筆記用具を片付けて去っていきました。




「ひな子、ショックを受けてるのはしょうがないけど、これが今のひな子の団体内の評価、現実だってことを受け止めなさい。ガウンやコスチュームに力を入れてお客さんに受けるのもいいけどそれだけじゃダメだってわかったでしょ?悔しかったらこのトーナメントでその評価を覆してみなさい。ここからは落ち込んでいる暇はないわよ?」

「はい、見返してやりますよ!未来さん、稽古お願いします!」

虎ハンターこと小林邦昭さんが膵臓がんのため亡くなられました

謹んでご冥福をお祈りいたします

次話は9月25日を予定しています

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