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第11話

ゴールデンウィークの最終土曜日、GPWOのスタッフさんに連れられて上田さんと堀田さんとともにやってきました横浜!初めての横浜!しかも九龍城さんの招待でお泊まりあり!さあ、中華街!元町!ランドマークなタワー!動く等身大のロボット,,,はすでに撤去されちゃったけどお仕事であっても楽しみです!時間があったら上田さんに連れてってもらえればなぁ。


車を降りるとほんのり潮のかほり、時代を感じさせるホテルの近くにある九龍城の事務所に向かうのでした。

「このたびはご足労いただきましてありがとうございます…」

「いえいえこちらこそ、お招きありがとうございます,,,」

みたいな感じでパンテーラ会長さんと上田さんが名刺交換をしながらThe・社会人という挨拶を交わしています。会長さんの後ろにはヘイトさんとマリスさんが、上田さんの後ろには私と堀田さんが控えています。


私が言うのも変ですが、お二人ともおとなしくしている姿にちょっとびっくりしています。だってねえ、一ヶ月前の暴れっぷりをみていましたからねえ、あまりのギャップにですねえ。上田さんもあら?みたいに驚いている様子です。


「まあね、ああやってキャラ付けしてあげた方がこの子たちも動きやすかったらしくてね」

ちょっと砕けた感じでヘイトさんとマリスさんのことを話しています。以前はアイドル系の正統派を目指していたようですがなかなか芽が出ず、くすぶっていたところに会長さんからのアドバイスを受け、ある日、試合にならないほどの大暴れっぷりから無効試合になり、次の日の再試合の時に真っ黒なメイクとコスチュームで現れてから一気にブレイクし、GPWOの大会に推薦されるまでになったとか。私もリングネームをつけてからいい感じになってきたのでなんか境遇が似てるような?なんて勝手に親近感を持っちゃったりしました。試合ではラフファイトに反則に暴言のオンパレードだったけどそうじゃない日は普通に常識のある、どこにでもいそうな同世代の女の子って感じなんですよね。


「おかげでドリームファクトリーさんを巻き込むこともできたし、明日の大会のために話題を振りまけたことだし、当初の予定とはちょっと違っちゃったけどうまくいったと思いますよ」

炎上商法みたいなものかな?チラッと堀田さんが私を見たような気がしましたけど気のせいかしらね。


「本当なら立野選手と山田選手に参加してほしかったんだけど、そちらの2人が予想以上に張り切っちゃってくれた

から予定変更したけどね。でも、こちらも面白い試合が見られそうなのはいい誤算だわ」

「確か今回の契約では選手を2人派遣ってだけしかなかったようだけど良かったの?」

会長さんによると、ヘイトさんが優勝したら勝者権限で立野さんと山田さんを引っ張り出すのが当初の予定(マリスさんは初めからヘイトさんのサポートだったらしい)で、私がヘイトさんにレフェリーストップ勝ちをしたのであんな風に因縁をつけたようです。もしスリーカウントで勝ったらリベンジマッチを要求するのが決まっていたようで、どんな結果になっても良かったらしい、というか自然と対立関係が出来上がった良かったらしいです。

それにしても毎回こんな感じで試合を組んだり選手を派遣したりされたり…じゃないですよね?


「今回は九龍城の年に一度の大きな大会だから少しでも話題を振りまいて注目を集めたかったのよ。その方がマスコミも記事にしやすいし宣伝もしてくれるのよねえ」

もしかして最初からそうなることが決まっていたってことなのかしら?


「あなたたち選手はリング上で精一杯試合をしてくれればいいのよ。あとは周りのスタッフがアンヤクするだけよ」

私たちは試合をするだけだけど、大会の準備をするのには会場の準備だけじゃなくてそういうことも考えないといけないんですね。そんな感じで堀田さんに話しかけると

「このくらいの話題作りならトーゼンね。エンタメの世界は注目されないと意味がないのよ。専門誌以外のメディアを通せるともっと良かったんだけどね。あーあ、私のグループにもお仕事を振って欲しかったわよ。そうしたら事務所の方も張り切って宣伝できたのに!」

どうやら感心しているのは私だけだったようです。


その後、試合会場がどんなところにあるのか確認するするのを兼ねて、近くを散策することになりました。

大きな敷地をいくつかに区切ってあるところに行くと、最初に見えてきたのはアーバンスポーツと言われるエリア。自転車とかスケートボードで坂道とか階段とか手すりを使って技を繰り出すアレですね。仮設の客席から大きな声が聞こえてきます。

その隣には炎みたいな柄やラメでキラキラした塗装がされた古めの自動車が並んでいます。中にはアニメかゲームの美少女キャラがペイントされた車も並んでいますがちょっと場違いな感じがします。うわっ!前のタイヤでジャンプしてる!なんでそんなことできるのよ?

その近くにはロカビリーでオールディーズなナンバーでロックンロールな格好でダンスを踊っている団体がいます。なんか古き良きアメリカンな感じですね。


もう少し歩いていくとキッチンカーがずらりと並んでいます。地元の方々でしょうか、見栄えのいいサンドイッチやハンバーガーに、どこどこのコンテストで金賞を獲得したとかB級グルメ日本一とか、なんと豪華な。す、スムージー?直搾りフルーツドリンクぅ?

お祭りのような雰囲気ですが、どこかオサレ感と豪華さを感じるのは土地柄のせいでしょうか。お祭りというよりフェスと言った方がしっくりくるようです。商店街の七夕祭りは庶民的で親しみがありますが、こちらのもなかなかの趣がりますね。


さらに敷地内を見て回ると臨時のテントとレンガ風の外観の建物が見えてきました。

中に入れてもらうと何かコンサートのようなものが始まっているようで、すでに熱気がムンムンとしています。フロアの真ん中に四角い舞台があって、立ち見のお客さんが騒ぐ中、2人の男性がマイクを持ちリズムに乗って韻を踏みながら相手を罵るという器用なことをしています。これがフリースタイル・バトルってやつですか?深夜にテレビを点けるとたまーに見かけることがあったけど、よくわからないのでちゃんと見てなかったのですが、目の当たりにすると全然知らない私にも何か伝わってくるモノがありますね。堀田さんはノリノリで聴いています。その後も世界大会で何度か優勝したらしい人のDJプレイを堪能していると、パンテーラ会長が声をかけてきました。


「どお、楽しんでる?」

「賑やかでいいわね。一般受けするかは微妙だけど好きな人にはとことんハマる魅力があるわね。何というか、パワーとか迫力がすごいわ」

「でしょ?ついでに言うと、明日の試合はここで行われるの。この雰囲気に飲まれないように頑張ってね」

この異様な雰囲気の中で試合をするとなると、ちょっと気後れちゃうかもしれないですね。一ヶ月前は私たちの会場がホームがどうとかいっていたのはこういうのを含んでいたのかと考えさせられますけど、こちらにはお祭り大好きな堀田さんがいますからね、何の問題もないと思います。あ、問題なのは私か。


それにしても気になるんですよね。この建物の壁際にあるステージあって、そこは入場ゲートのようになっています。それと同じ高さに作られた通路が舞台につながっているんですが、その舞台がね、リングと同じ大きさに見えるんですよ。マットを敷いて、コーナーポストを立てて、ロープを張ったらプロレスができちゃいそうなんです。まさか、いや流石にそれは。今日みたいにお客さん全員が立ち見ってことはないですよね。明日は通路もなくなり椅子も並べられますよね。


そのあとは、関係者入場口とか控室からリングまでの導線とか、入場曲の確認とかをして明日の試合に備えるのでした。それが終わったら観光はできるかな?できたらいいなー。

次話は8月5日を予定しています

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