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第2話

さて、いつもと同じような忙しいクリスマスや年末とまったりとした年始を過ごしてから2月のはじめ、今年の入団テストに参加できることが決まりました!といっても会場の設営とか審査をする先輩たちの補助をするだけなんですけどね。そういえば去年はどうしていたんでしょうね、GPWOのスタッフさんがしていたのかな?


そんなこんなで入団テスト当日です。ロープを緩めたリング、座席やウエイトトレーニングのマシーンを壁際に寄せて広く場所を作った道場。入り口付近に準備した受付と手荷物の一時預かり所を設けたロビー。いつもと違う雰囲気にちょっと緊張してきますね。


受付を終えた受験生?テスト生?にゼッケンを渡し控室で着替えてもらい、荷物を預かったり道場へ案内したりをしながら観察していると、緊張でオドオドしてる人、逆に周りを見ながらワクワクしてる人、淡々と準備運動をする人がいる中、スポーツで有名な大学や国旗がプリントされたり企業の名前が付いているジャージを着ている人も何人かいますね。あら、着替え終わった何人かが集まって特定の人に視線を集中させてますよ?おー、山田さんを見ているってことは柔道経験者かな?こちらの集団は立野さんを見ていますね。国を代表するくらいの人物が近くに近くに居たらそうなっちゃいますね。中には先輩後輩の間柄だった人もいるだろうけど、流石に気軽に声をかけるなんてことはしなさそうです。


「さあさあ、体も緊張もほぐしてテストに挑まないとね。実力が出せないうちに終わっちゃったら後悔してもしきれないわよ?のんびりしてないで!深呼吸して!準備運動して!ハイハイハイハイっ!」

手を叩きながらどこかピリピリしていたロビーや道場を歩き回り、特に表情が硬い人たちを気にするように堀田さんが明るく声をかけています。それだけですぐにどうこうなるとは限らないけどちょっとだけ空気が緩んだような気がします。いつになってもテストって緊張しますよね、なるべく平常心で挑んでもらいたいという気配りが素敵です。


私を含め、参加するスタッフ側?はお揃いのドリームファクトリージャージに身を包み、今年の入団テストを迎えます。自分たちも動きやすい格好にしたのは理由がありまして。去年かな?とあるテスト生が「例えばスクワット、この回数を本当にこなせるのか」という意見があったようです。実際にできますよ?とその場で50回を2セットやって見せて、さらにプラスして一緒になってテストを受けた先輩がいたらしいんです。平然と回数を重ねる姿を見て、その意見した人は残りのテスト自体を辞退して(ダジャレじゃないよ)そそくさと帰ったそうです。スクワット100回なんて準備運動でしょうに、と思うのは私がちゃんとプロレスラーとして頑張っているからです。


そんなことがあってか、入団テストが行われる内容が

腕立て伏せ50回、腹筋50回、スクワット100回、背筋50回を1セットとしてこれを2セットプラス縄跳び5分から、腕立て伏せ30回、腹筋30回、スクワット60回、背筋30回を1セットとしてこれを3セット、縄跳びを5分間に変更されました。これには上田さんや渡辺さんが不満を爆発させたようですが、GPWOの方々が「入り口は広く、出口は狭く」という方針にしてなんとか納得してもらったようです。新しい人が入ってこないと今後難しいですし、でも体を守るために鍛えないといけないしで色々あったらしいですけどね。GPWOの人の考えも分からなくはないですけど怪我をしてからじゃ遅いですし、プロレスラーになるために頑張って準備をしてきました!というのも見てみたい気がします。


「これから入団テストを始めまーす!テスト生は集合してくださーい」

バラバラになって準備をしていたテスト生がリングの周りに集まり、ゼッケンの番号順に並んでいきます。今年は19人ということで6人ずつ3列+1で整列していくところに萩原さんがやってきました。


「おはようございます。本日はドリームファクトリー入団テストを受けてくださりありがとうございます。それでは早速始めていきますので周りとぶつからないように広がってください。それと佐藤選手、こちらへ」

え?私?なんだろう、呼ばれてしまいました。

「こちらの佐藤選手が皆さんと一緒に同じメニューをこなしていきます。こちらの号令に合わせて行ってください。途中でキツくなったら無理をせずにその場に座って休んで構いません。準備はいいですか?それでは、よーい、始め!」


1、2、3と1秒に1回くらいのペースで腕立て伏せから始めていきます。まあこれくらいならいつものことなので、なんの苦もなく続けていきます。しっかりとヒジを曲げてアゴが床につくくらいまで下ろして腰を曲げずに。はい30回。次は腹筋ですね。足の裏を床につけてヒザをだいたい90度に曲げて、背中を伸ばしアゴがヒザにつくくらいまで。これもいつも通りにやっていきます。続いてスクワット、背筋と終わらせてちょっと休憩。テスト生も余裕そうですね。


では2セット目、といってもね、合わせてもたかだか60回ですからなんてことないでしょう?と思っていたら、おや?スクワットでよろけそうになる人がいますね。背筋ではペースに遅れてきている人もいますよ?大丈夫かな、あと1セットあるのに。


「それじゃあラスト1セット、頑張っていきましょう!」

そんな掛け声とともに始まった3セット目、休憩も先ほどより長めに取っていたのですが、何人かはペースについていけなくなっていますね。スクワットまで来ると6、7人が脱落しちゃってますね。でもまだ頑張っている人がいます、頑張れ!


「28、29、30!はいお疲れ様、3分休憩します」

背筋が終わってそのまま動けなくなってる人もいますね。息を整えるのにその体勢じゃあと思いながら縄跳びの準備をします。確かリングの下に用意してあったよね、それを持ってきてテスト生に1つずつ渡したり置いていきます。それを見て絶望する人、無表情になる人、私を見てびっくりする人もいますが最後に縄跳びがあることは知ってるはずなんですけどね。びっくりしなくてもいいじゃないですか。


「これで最後!縄跳びは引っかかってもいいのでなるべく続けていくようにしてください、それでは用意、始め!」

ヒュンヒュンと空を切る音と軽快とは言い難いステップの音が響く中、黙々と縄跳びをしています。ちゃんと跳べている人は数人で、あとは跳んでるような跳んでないような人が数人、残りは縄跳びにも手を出さずどこか遠くを見つめています。諦めちゃったようですね。そんなに厳しかったかな?

私たちは今年のテストの倍くらいの回数を終わらせた後にスパーリングとか個別の筋トレとか他の格闘技の道場へ行ったりしてるから当たり前になってたけども、入団当時の同期の皆さんは半分以上辞めちゃったのよね。それが一般的な成人女性の体力だと考えたら、今の私たちの方が異常なんでしょうね。でも、まだまだ上には上がいるんですよ。


「はいやめー、お疲れ様でした」

あら、色々考えているうちに終わっちゃいました。テスト生たちはゼーゼーハーハーしていますが、私は縄跳びを回収して片付けちゃいましょう。手渡されたり使わなかったのを拾ったりしながら集めていきます。


「はい皆さんお疲れ様でした。それで合格者には一週間以内に連絡しますのでそれまでお待ちください。えーこのあと、1時間ほど控室やシャワーを使えるように解放しておきますのでゆっくり体調を整えてからお帰りにください。本日はお疲れ様でした」

ありがとうございますーと力のない返事をして各自帰る準備を始めましたけど、あれ?最後ってこんなでしたっけ?私たちの時はすぐに合格者発表して面接とか自己PRとかしたはずだったのに。合格発表にやり方を変えたのでしょうか。まあ来月には新人さんが入ってくるかもしれないことにちょっと不安もありながらもどこか期待してしまいますね。

次話は5月5日を予定しています

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