第17話
上田さんの話で説明会が終わり、パイプ椅子を片付けてから合宿所に戻ってリビングのソファで一休み。休憩を挟んだとはいえなんか疲れたなー。でもこれがプロレスラーとしての第一歩かと思うと、不安はあるけど明日からの練習にも身が入るってものじゃないかしら。今日の疲れは体の疲れじゃないから問題ないもんね。さーて、この後は晩御飯食べてお風呂に入って寝るだけ…って自分たちでご飯を作らなきゃいけなかったんだ。
「こんにちは〜、説明会はもう終わった?」
と前田さんがやって来た。合宿所のキッチンまでスタスタスターと迷うことなくやって来てお鍋とか食器とかを確認し始めた。
「ほ〜ら、のんびりするのもいいけど食事の準備があるでしょ。はいはい、さっき買って来たもの出してー」
ソファでぐで〜っとしている私たちを尻目にテキパキとお鍋とかお皿とかを用意し始める。ん?あれどう見てもお鍋だよね、ちょっとくすんだ金色の両手で持つやつ。目の錯覚かな?前田さんの顔がすっぽり隠れる大きさのお鍋なんてあるの?蓋なんてもうシンバルみたいよ。
そんな大きいお鍋や包丁、まな板などを洗い終えると「はい休憩終わりよ〜、ぐずぐずしないで用意しないと晩御飯抜きよ〜」とパシパシ手を叩いて私たちをソファから追い立てる。
「今日のメニューはカレーちゃんこ鍋、ブロッコリーとキャベツとベーコンのホットサラダ、鶏肉のオニオンソテーよ」カレーってカレーライスじゃなくてカレー味のちゃんこ鍋だったのか。
材料はそれぞれ約10人分です多分。
・カレーちゃんこ鍋
白菜1コ、人参2本、小松菜一把、しめじ、舞茸各2パック、豚バラ肉1kg、豆腐2丁
白菜は一口大の大きさにザク切り、人参は皮ごとピーラーで薄く切り、石づきを取ったしめじ、舞茸は手で食べやすい大きさに分ける。鍋に湯を沸かし顆粒だしを入れ沸騰しない程度の温度で豚肉を一枚ずつ入れる。白菜、人参、小松菜の茎の部分、しめじ、舞茸を鍋に入れ少し煮込み、小松菜の葉っぱの部分と12コに切り分けたお豆腐を入れカレー粉を入れる。出てきたアクをすくい取り最後に醤油と塩で味を整えて完成。
・ブロッコリーとキャベツとベーコンのホットサラダ
キャベツ半分、ブロッコリー2コ、ベーコン500g
キャベツは食べやすい大きさに切る、ブロッコリーは小房に分ける、芯の部分は皮を厚めに剥き拍子木切りにしたものをレンジで蒸す。ベーコンは短冊切りにしてカリカリになるまで焼く。レンジで蒸した野菜とベーコンを器に入れポン酢とマヨネーズを合わせたソースと粗びきの胡椒をかけて完成。
・鶏ムネ肉のオニオンソテー
鶏ムネ肉5枚、玉ねぎ3コ
鶏ムネ肉を食べやすい大きさに切る、塩、胡椒をした後フライパンで焼き、火が8割くらい通ったら一度取り出す。玉ねぎは根っこの部分を取り半分に切った後縦にスライス。フライパンで炒めしんなりしてきたら醤油、酒、みりん、おろし生姜で味付けし取り出した鶏ムネ肉を戻し、炒めあわせる。全体的に馴染んだら完成。
「こんな感じで作るわよ。野菜は簡単にザクザク切るだけにしたから難しくないと思うけど包丁の扱いには気をつけてね。じゃああなたはご飯の準備をお願いね。最近のお米は精米技術がいいので軽くこすり合せるくらいで大丈夫よ。一番最初に入れるお水はそこのペットボトルのを使ってね」
なんでもお米がお水を吸収するから最初のお水はいいものを使って、洗うのは水道のお水でもいいみたい。ボールにお米を入れてお水を入れたら指を立ててグルグルグルと数回回して白くなったお水を捨てます。その後お米だけを同じように指を立ててかき回すように洗い、お水を入れて白いお水が半分くらい透明になるまでゆすぎます。お米も結構な量ですよ。炊飯器もこれまた大きいなぁ。うちにある炊飯器の倍くらいあるんじゃない?
炊飯器に洗ったお米とお水を入れてスイッチを入れればご飯の準備はOK。お鍋やおかずの方はどうなってるかな?私がお手伝いしなくても大丈夫かな。
「前田さん、ご飯の準備終わりました」
「じゃあこっちお願いね」
と料理の指導と確認をしている前田さんは他の人の作業を見ながらテキパキと指示を出している。そんな前田さんの指示でテーブルを拭いたり鍋敷きを置いたりお箸や食器の準備を始める。ん?お茶碗もお椀もなんか大きくない?お茶碗なんてほぼ丼だしお椀なんてお蕎麦屋さんが使ってるような大きさよ。
「ま、前田さん、お茶碗てこれでいいんですか?」
「そうよー、しばらくぶりに使うから一回洗っておいてねー」
おおう、この大きさが一人分ですか、残さず食べられるかなー。
次話は1月15日を予定しています