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第3話

「すみませーん、タイムー、ちょっとターイム!!」

スパーリングというより一方的に攻められっぱなしなんですけどこれでいいんでしょうか。皆さんに聞いてみたいと思い一旦止めさせてもらいました。


「ん?始める前に言ったじゃない、プラン通りよ。このまま続けるからしっかり耐えてね」

耐えてねって言いますけどね、皆さん完全な本気モードで向かってきますから3分とはいえずっと攻められているのって結構辛いんですよね。反撃するスキもありません。


「晴子さん、私たちの本気なんて先輩たちと比べたら半分にも満たないくらいの圧とキレがあるんですよ。あと1ヶ月くらいしかないんですからそれまでに対処できるようになっていただかないと。そのための特訓なんですから」

そうなんでしょうけど、何か釈然としないんですよね。


「わかってないわねー。あのね、この際だからハッキリ言うけど晴子ちゃんに足りないは自分のことを信じることよ。いい?格闘技経験がないから実力が劣るのはしょうがないけど、みづきちゃんや綾ちゃんの練習についていけるだけでもすごいことなの。合同練習にやっとついていけてるって言うけど私にはそうは見えないな。そろそろ自分に力がついてきてる事を自覚した方がいいわよ?」

ええぇ!なんてこと言うんですか!そんなことないですよ、皆さんの実力に比べたら私なんてまだまだじゃないですか。松本さんとかにたまーに、本当にたまーに勝てるようになってきましたけど同期の中では一番下なのは変わらないんですから。


「晴ちゃん、もうそういう風に考えるのは終わりにしましょう?五番勝負を受けられるっていうことは、上田さんたちが晴ちゃんの実力を認めたっていうことだと思うの。そしてこの試練を乗り越えたらさらに成長するって確信してるからじゃないかしら。上田さんたちが評価しているのにまだまだですって言ってるのは晴ちゃんだけよ?確かにみづきさんや綾さんがすごいからそう思うのは仕方ないけど、これからはもうそういう考え方はやめようよ。私がいうことに信憑性がないかもしれないけど、この中で一番伸び代があるのは晴ちゃんだと思うの。そしてこの五番勝負の過ごし方次第では一気に私たちのことを追い越すかもしれないわね」

いやいや、いやいやいやいや、それは買いかぶりすぎですって。工藤さん、流石にそれはないですよ。入団する前はフツーの園芸部の高校生だった私がたった数年で日本を代表していた方々と同じようにやれるなんてありえませんから。そんな簡単なことじゃないですから。


「そうねー、晴子はある程度追い込んだ方が隠れた才能が出てきそうなのよね。初めてひな子にシングルで勝ったときや上田さんと組んでCRGと対戦したとき、その片鱗が見えたような気がするのよねー」

げっ!あれですか。あの時は不思議な力というか、どこかのおじさんが勝手にやったことだから、私の実力じゃないんですけど。でもそんな話をしても誰も信じてくれないでしょうからね、は〜あ。


「そうですよ晴子さん、みっちり基礎を叩き込まれてきたんですからできないことはないと思うんですよ。それに先ほどのスパーリングは3分間をを4人分、合わせて12分も動きっぱなしでしたのにそんなに息が切れてないじゃないですか。すでに体力的には互角かそれ以上なのかもしれないですね。あとは場数を踏んで経験値を増やすといいですよ。そしてレベルが上がれば次のステージに行くことができますね」


経験値とかレベルってゲームじゃないんですから。そういえばあんまり息が切れてませんね。立野さんとスパーリングをして、終わった時はどうなるかと思ったけど、もしかして回復力も上がったりしてるのかな?

「晴ちゃんはベースになるような格闘技をやってこなかったからプロレスの技術を素直に覚えることができる反面、最初のうちはなかなか芽が出なかったかもしれないけど、ある日突然覚醒するかもね。考えてから動く、から無意識で体が動くようになるための特訓でもあるからもう少し頑張ってみようよ、ね?」

「ほーら、ぐちぐち考えてもしょうがないでしょ。みづきちゃんのテクニックに綾ちゃんの関節技、私の丸め込みやスピード、江利花ちゃんのパワー。私たちの攻撃を耐えていければ五番勝負でも面白いことが起こるわよ。考えるより感じなさいな」


皆さんがそう言ってくれるってことは、自分で思っているより強くなれるのかな?だとしたら嬉しいな。やっとプロレスラーになれたんだし、皆さんも私のことを気にかけてくれているんだからもっと頑張らないとですね。

「それじゃあスパーリングを2セットめ、始めましょー!」




〜 〜 〜 〜 〜 スパーリング中にコーナーで控えている立野と堀田の会話 〜 〜 〜 〜 〜


「で、みづきちゃん、晴子ちゃんのこと本当はどう思ってるの?」

「んー、技術的なこと以外は私たちとほとんど変わらないと思うんだけど、やっぱりハートが弱いというか自信のなさがどうもね。自信のなさからか、これまでの試合でもそこでもうひとつ技を出せてればってところで続かないから歯がゆいというかなんというか」

「まーね、勝負どころで一気にたたみこむとか試合の流れが掴めないのも厳しいわよね。人と競い合う事をしてこなかったからしょうがない部分はあるけど、何回も自力で勝ってるし最後に決める技もあるんだからどうにでもなると思うんだけどなー」

「まあね、そこまで持っていくのがこれからの課題ね。でも今回はスタミナと回復力と耐えることが目的だから、一応は」

「すでに半分は身に付いてたけどね。あとは勝ち方かー、早いうちに手を打たないと惜しかったねーで終わっちゃわない?」

「晴子ももう少し勝つことに執念を燃やしてくれたらこっちも協力のしがいがあるんだけどね。本人はどう思ってるか知らないけど、試合をしました、頑張りました、負けちゃいました、惜しかったです、で終わってる気がするのよ」

「プロレスラーになれて何回か勝てるようになったことで満足しちゃったのかなー。でもさー、ショウ子さんにベルトを見せてもらった時は、おもちゃをもらった子供みたいに目をキラッキラさせながら腰に巻いてはしゃいでたよね」

「欲がないのか優しいのか、勝負事だからもっとガツガツ行ってほしんだけどね。どうすればいいと思う?」

「私に聞かないでよそんなこと。私の周りにはガッついてる連中しかいないからその手のことはさっぱりよ」

「でも芸能界のアイドルの中には、天然って子かいるじゃない。そういう子たちと同じように考えたらいいかなって思ったんだけど」

「いないいないそんなの。ああいうのは事務所のお偉方やマネージャーがこういうキャラで行きましょうって寝ないで考えて作ってるんだから。売り出すためのプロジェクトよ。妖精が見えるとか霊感があるとかポワポワした雰囲気とかなんて全部ウソよ(堀田さんの個人的な感想です)」

「そっかー。じゃあ何かニンジン的なものがわかればなー、わかればそれを目の前にぶら下げるだけなんだよなー」



〜 〜 〜 〜 〜 スパーリング中にコーナーで控えている山田と工藤の会話 〜 〜 〜 〜 〜


「綾さん、晴ちゃん大丈夫かしら」

「どうでしょうか、やる気はあるみたいですけど勝敗のことに関してはあまりこだわってないような気がするんですよね」

「そうよね、松本さんに勝とうって時と比べても今回は負けてもいいからか、そんなにこだわってないわよね」

「負けてもいい勝負なんてないんですけど、晴子さんて私たちと違う世界で過ごしてきましたから仕方がないのかもしれませんね」

「勝ったら何かご褒美ってことにしたら少しはやる気が出るのかしら」

「それはひとつの方法かもしれないですけどね。そういうのでモチベーションを上げるのはあまりいい事と思えないんですよ」

「でも、自分で人形を作って技の練習をしてたくらいだから、やる気がないってわけじゃないのよね」

「あれには驚きましたね。言われたことだけじゃなくて自分で工夫できるんですから、その考えを勝敗の方に振っていただければいいんですけどね。ポテンシャルはまだまだありそうですから」

「綾さんて同期のことちゃんと見てるわよね。ひとりずつ分析してるの?」

「それは勿論です。いずれは私たちだけでドリームファクトリーを盛り上げられるようになって、ゆくゆくはGPWO所属団体の取れそうなベルトを独占したいですから。そのためにも晴子さんには眠っている力を存分に発揮してもらわないといけません」

「眠ってる力?晴ちゃんにそんな力があるの?」

「そうですよ?先ほどもみづきさんが仰ってましたけど、あの2試合だけいつもと違う動きをしてたじゃないですか。あの力を毎試合引き出せたら本気で世界を狙えますね」

「…もしかして、今日からの特訓はスタミナとか耐えるとか言ってても、本当の目的は晴ちゃんの眠ってるって力を引き出そうとしてるの?」

「うふふふ、そうなればいいかな、という程度ですけどね、半分は」

「あちゃー、そんな裏テーマがあったなんて。でも、このスパーリングで追い込んでる最中に眠っていた力が出ちゃって、出っぱなしになったらどうします?」

「…あらっ!私としたことが。そうなる事を考えてませんでした。もしそうなってしまったら、...どうしましょう?」

「どうしましょうって言われても…」

明けましておめでとうございます 本年もよろしくお願いします

各地で被害にあった皆様にお見舞い申し上げます

モンゴリアンチョップの使い手は今何を思っているのでしょうか

謹んでキラー・カーンこと小澤正志さんのご冥福をお祈りいたします

次話は1月15日を予定しています

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