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第16話

そんなことがあったけど、いつまでもプンスカしててもしょうがないので道場内の見学を再開。先輩に「〇〇用意して」って言われても何がどこにあるかわかるようにしておきたいっていうのもあるからちゃんと覚えておかないとね。


2階の窓を開ける通路を堪能した後ロビーに戻ると、立野さんと山田さん他数人が記者さんに囲まれてインタビューを受けていた。やっぱりプロレスをする前は有名選手だったんだろうなあ。せっかくだからプロ野球の入団記者会見みたいなことをすればよかったのに。そうすればさっきの何とかさんみたく間違うこともなかったのに。なんて思ってたら休憩時間が終わりそうなので道場に戻りましょうか。


「では説明会を再開します」

冊子を元に説明会の続きが始まる。お昼のあとか何か知らないけど体が揺れ瞼が重くなる。あ、あれ〜?さっき仮眠したから大丈夫だと思ったんだけどなあ。ボールペンの先を膝のところに刺して眠気よ眠気よ飛んでいけ〜〜〜っ!


「は〜い、少し休憩にしましょう、そして少し体を動かして眠気を吹き飛ばしましょうか」

はっ、ヤバいっ。うとうとしてたのバレてる〜。もしかして私だけ?うわ〜入団早々イメージ悪くなっちゃう〜、やってもうた〜、他の人たちに迷惑になる〜、ごめんなさ〜いって周りを見ると…ってオイ、よだれ垂らしてがっちり寝てるんじゃないよ。私より爆睡してる人いるじゃないの。こっちの人はおでこに冊子の文字がうっすら写ってますよ?休憩にしましょうっていうんだからそろそろ起きません?てか休憩時間だから寝ててもいいのかな?

結果的に私だけじゃなくて良かったってことにして、首を左右に揺らしたり回したり両手の指を組んで上に伸ばしたり耳たぶを引っ張って眠気を飛ばす。そんなところへ上田さんがやって来て「そろそろ始めるわよ」と声をかけてきて休憩時間が終わる。


「皆さん、長い間お疲れ様。もう少しで終わるから頑張ってね、それじゃああらためて入団おめでとう。私たちは皆さんを歓迎します」

最後は上田さん直々に説明するんですか。どんなお話だろう。


「まず、プロレスはエンターテイメントとしてお客さんに楽しんでもらう反面、格闘技でもある訳ですから、真剣に向き合ってもらわないといけません。でないと大きな怪我や体が動かせなくなったり、最悪死に繋がるなんてこともあります。そうならないように体を守る練習をしっかり指導していきますが、万が一があるかもしれないって事を知っておいて欲しいの。これは試合中だけじゃなくて練習中にも起こりうる事です。相手を怪我させないのは当たり前ですが自分で自分の体を守るという事を念頭において練習をしていってください」

いきなり重い話が始まりました。今までの生活や園芸部だった私にはほとんど関係のなかった話です。立野さんや山田さんはそういう気持ちや覚悟はあったんだろうか。


「私たちプロレスラーは一般の人たちより注目される機会が多くなります。有名になれば街中で声をかけられるかもしれません。だからほんの出来心でもトラブルを起こしてしまったらすぐに新聞沙汰になります。一人の迷惑な行動がプロレスラー全員がそうなのかって疑われることになりかねませんので細心の注意をはらって行動してください」

そうね、おじいちゃんも「わしも知らないようなハンパな奴が事件を起こすだけでプロレスラーのイメージがガタ落ちじゃ」って言ってたなあ。おじいちゃんがどのくらいプロレスの人のこと知ってるか分からないけど。


「慣れない団体生活やキツい練習でストレスも溜まるでしょう。だからって自分より弱い相手を探して当たり散らすのはダメよ。どんなに将来有望でも実績があってもそんなことが分かった時点で退団してもらいます。私たちにそんな人はいりません。イジメ・ダメ・絶対。いいですね。そういう感情、抑えらない衝動はリングの上で対戦相手にぶつけなさい。もしイジメの現場を見かけたりイジメられてるかもって思ったら遠慮なく私たちの方へ相談に来てください」

ってことは私が一番狙われやすいのかな?やばい、そんなことになったらどうしよう。我慢しないですぐ相談しちゃえばいいのか。うちの学校は比較的平和だったっぽいからそんな話聞かなかったなあ。


「せっかくうちの団体を選んでくれて入団してくれたんだから、全力でサポートして必ずデビューさせます。今までの経験値や体力の差でデビューするまでの時間が人によって違ってくると思うけど必ずデビューさせます。苦しい時、思うように行かなかった時は相談に来てください。的確なアドバイスかどうか分からないけどきっかけを掴めるヒントになるようなことは教えてあげられると思います。だから練習がキツいからって、痛いからって理由で逃げないようにね。それが私からのお願いです。こんなところかな?私からは以上です」


上田さんが熱く語り「逃げないようにね」ってところは私の方を見ていた気がするけど、もちろんそんなことするつもりはありませんよ。せっかくこのために頑張って来たんだから。でも合宿所に入った後は想像もできないくらい大変なんだろうか。

次話は1月5日を予定しています

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