表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
159/228

第8話

先週の豊田さんとの一戦は、10分少々という試合時間ながらも工藤さんの力を全部出しても結果的にはビクともしなかったということでしたが、お客さんからは「見応えある玉砕っぷりが良かった」とか「自分の持っている全てを出して負けたんだから次に繋がる」なんていう感想もあり、戦い方としてはおおむね受け入れられたようです。


ということで今日は第二戦目、相手は宇野さんとなります。体格的には工藤さんが大きいんですけど、勝敗としては経験と実績と、なんと言っても予想もつかない動きをする宇野さんの方が有利になるかと思います。


今日も満員の会場、試合前になるとワクワク感が漂ってくるのは先週より工藤さん目当てのお客さんが多いのかな?もしかすると工藤さんが勝つところを期待しているとかでしょうか。

さて、工藤さんが曲に合わせて青コーナーに入場してくると「吹っ飛ばせー」とか「ぶっ潰せー」とか物騒な声援が聞こえてきます。まあ豊田さんが吹き飛んだのはお客さんにも衝撃的だったらしく、私も今だに忘れられません。

対する宇野さんは飄々とした雰囲気で入場してきます。赤コーナー側のロープを広げて待っている堀田さんをどかすとトップロープを掴み飛び越えてのリングインは相変わらず格好いいですね。


両選手の紹介とボディチェックを受けている最中の工藤さんからは何かやってやろうという感じがビンビンと伝わってきます。豊田さんとの試合を経て自分に自信が付いて今日は勝てる、絶対に勝つって思っているようです。

リング中央で握手を交わしそれぞれのコーナーに分かれると試合開始です。


「レディー、ファイっ!」

ゴングとともにリング中央ででんと構える宇野さんにちょっとびっくりしたような工藤さん。宇野さんは体格差を考慮して回り込んだり素早い動きでくるかと思っていたようですが、ここは先輩の意地でしょうか。あ、両手を前に出して力くらべをしようか、みたいな構えを取り出しました。工藤さんと真正面からぶつかっていくようです。これはさすがに無謀で危ないと思うんですけどね。

ここからロックアップするとズルズルとロープ際まで押され、そこでクルッと体を入れ替えて工藤さんをロープに押し込みブレイク。ススっとリング中央まで戻るともう一度ロックアップ、すぐにサイドヘッドロックをかけると工藤さんはロープに向かって投げます。返ってきてショルダータックルは工藤さんの勝ち、宇野さんをまたいでロープに走ると宇野さんのドロップキック!倒れない工藤さんに二発目!まだ踏ん張る工藤さんに三発目…はフェイントでサミング!顔を手で覆ったところに三度目のドロップキックで工藤さんを倒すと勝ち誇ったようにガッツポーズでお客さんにアピールしています。

それを見た工藤さんは宇野さんに突進するもひらりと躱されてニュートラルコーナーに激突してしまいます。振り返ったところに宇野さんが工藤さんを踏み台にした空中後ろ宙返り(※1)さらに突進してきた工藤さんをアームドラッグで投げてアームロックに繋げていきます。あらら、宇野さんにいいように遊ばれちゃってますね。でも、工藤さんはアームロックをかけられているのを気にする事なく体をひねって力ずくで技を外すと一気に抱きかかえフロントスープレックスのように後ろに投げてからその場跳びボディプレス、そしてフォールはカウント2!宇野さんは胸元を抑えながら転がるように場外へ逃げていきます。力ずくで技を外したのが悪かったのか、ちょっと腕を気にするそぶりを見せる工藤さんはひと息入れてから宇野さんを追いかけて場外に降りていきます。


うずくまっている宇野さんを鉄柵に向かって投げる、背中を痛打して倒れる宇野さんをもう一度鉄柵へ、これは切り返して工藤さんが鉄柵へ胸元から打ち付けられてしまいます。うわー、何度見ても痛そうですけど工藤さんがぶつかった方は少し曲がっちゃったじゃないですか。すごい衝撃、工藤さんは大丈夫でしょうか。


「5分経過、5分経過ー」


場外カウント16くらいで宇野さんがリングに上がりそれを追いかけるように工藤さんもリングへ近づきます。そこへ宇野さんのプランチャが炸裂!うおーっと盛り上がるお客さんに両手を振って笑顔で答えるなんて、相手とか五番勝負とか関係なしにやりたい放題って感じですよ。

工藤さん、このままだと宇野さんだけが目立って終わっちゃいますよ?あれだけ練習してきたものが出せてませんよ?これが現在の実力差なのかもしれないですけど、少しはやりかええしてやりましょうよ!という意味を込めて工藤さんの近くまできて手を叩き声を掛けていると、そんな私を押しのけた宇野さんが工藤さんを起こしてリングに上げます。


すぐにフォール、カウントは2で返されると、宇野さんはコーナーポストの一番上まで登り工藤さんが立ち上がるタイミングでフライングボディアタック!これを踏ん張って捕まえると宇野さんが飛んできたコーナーにダッシュしてぶつけると対角線側のコーナーに!そして赤コーナー、青コーナーとオクラホマスタンピート!普段は1回2回しかコーナーにぶつけないのに今日はなんと4回も!いつもより多くぶつけていきます!リング中央でボディスラム!すぐに起こしてブレーンバスター!さらにその場跳びボディプレス!がっちり片足を掴んでフォール!お客さんもレフェリーに合わせてカウントを大合唱するもカウントは2で返されてしまいます。うおーっ!から、ああぁーというお客さんの声から勝負かつかなかったことへの残念さが聞いて取れます。持ち味の体格を生かした工藤さんもすごいけどそれを返した宇野さんも凄すぎです!あんな小さな体にどれだけの力が入ってるんでしょうか想像もつきません。


それでもダメージは相当なようでなかなか立ち上がることができません。工藤さんも今までのダメージと疲れがあるのか、すぐに次の技をかけるのも厳しそうです。でもここでもう1回2回技を出せたら勝てるかもしれません!というのを察したお客さんから「休むなー、いけーっ!」なんて声が聞こえてきます。そうですよ、今が一番無理をするところです!手が痛くなるのも忘れてマットをバンバン叩いて応援していきます。


やっと立ち上がった工藤さんは宇野さんをロープに振ると舞い上がるような高いショルダースルー!マットに叩きつけられます。きちんと受け身を取っても息が詰まっちゃいますよ!

宇野さんが立ち上がるタイミングを見てロープワークを開始、スピードが乗ったところでショルダータックル!これは宇野さんがよろめいて躱されてしまいます。不意を突かれて工藤さんはロープに走っていくも勢いがなくなりロープで一旦ストップ、起き上がってきた宇野さんにそこからショルダータックル!今度はうまくぶつかることができました。ロープの近くまで吹き飛んだ宇野さんにフォール!返す力がないのかカウント進みますが2で止まってしまいます。宇野さんの足がロープに掛かっていたようです。ゆっくりとリング中央まで宇野さんを引きずっていくとお客さんに持ち上げるぞーという必殺技のアピールをするとお客さんも盛り上がってきます。


工藤さんが宇野さんの髪の毛を掴んだ途端にスモールパッケージホールド!カウント2。さらにスクールボーイはカウント2。さらにさらに工藤さんの両手を取って一回転させたかと思うと宇野さん自身が前転しながら工藤さんの両足を捕まえるとそのまま回転エビ固め?(※2)なんですかこれは?もがく工藤さんを押さえ込んでカウント3が入ってしまいました!してやったりの宇野さんにカウント3入ってないだろうと抗議する工藤さん。最後の方の勢いは良かったんですけど全部宇野さんに持って行かれてしまいました。これが経験の差というものなんでしょうか。惜しかったんですけどね、レフェリーの判定は覆らなかったようでトボトボと私と一緒に控室へ戻るのでした。試合時間は13分ちょうどでした。


※1 サマーソルトキックみたいな技だと思ってください

※2 チョココロネみたいな技だと思ってください

次話は11月25日を予定しています

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ