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第3話

五番勝負と奉納プロレスの準備をしていきます。私は基本的な動きの再確認と受け身の練習、首を鍛えるのにプラスしてキックの練習をしていくことにします。


キックといっても相手の太ももから下あたりを狙うローキックというのと胸元までの田高さのミドルキック、頭を狙ったハイキックの他にクリスさんが得意としているフロントキックなんてのもあるみたいですね。

いろんな種類をいっぺんに練習をしても、多分私には身に付かなさそうなのでローキックとミドルキック、宇野さんの勧めでサイドキックというのをやっていこうと思います。ローリングソバットのことは一旦忘れてください。


合同練習の後、ひとりで黙々とサンドバックに向かいパスパスっと蹴っていきます。大森さんの真似てみたりキックの得意な選手の動画を見たりと自分なりに勉強してきたのですが、いざ自分で体を動かしてみると思ったようにうまくいってないみたいです。たまに手応え(足応え?)がいい時もあるのですがそんなことは稀で、本当にこれでいいのかわからないんですよね。最初だから仕方ないのですが、成果が出ないようなら上田さんに相談して空手やキックボクシングのジムを紹介してもらわないといけませんね。商店街に格闘技系のジムってあったかなー。


「晴子サーン、力が入りすぎデスヨー」

なんてジャスミンさんが見かねて声をかけてくれました。でも力を入れないと相手に当たってもダメージが入らないんじゃないですか?


「力を入れるはやめて早く回転するがイイデスヨー」

なんと、力よりも回転するのがいいんですか。あれか、遠心力とインパクトの瞬間に力を入れるってやつですか。そういえば前にそんなこと言われたような気がしますがキックの時もそうなんですかね。アドバイスをいただけたので早速やってみます。おおー、さっきまでのパスっていう情けない音が、バシッとなって威力が出たような気がしますね。でも足の甲が痛いです。


「そこが痛いは違いますヨー。当たるはココデスヨー」

スネですか。サッカーボールを蹴るみたいにするんじゃなくてスネで蹴るんですね、だからキックを多用している選手はスネ当てをしてるのかー。そうしたらもう一歩くらい踏み込んだ方が距離的にいいんですかね。

それから何度となくサンドバックに向かっていきます。ただ蹴っていたのと比べて体を回転させるのを意識すると手応え(足応え)が安定して良くなってきますね。そうなってくるとローキックもミドルキックも段々といい感じになってきたようです。


いい感じになったところで今度はサイドキックの練習に取り掛かります。おじいちゃんが大好きな香港のアクション俳優が出演している昔の映画を一緒に見て、見終わった後は必ずアクションを真似て遊んでいたんですよね。だからローキックとかよりもうまく出来るんじゃないかなーなんて思っているんですよ。

サンドバックの前で軽くステップを踏みながら大きく踏み込んで体を倒すように足の裏で蹴ると、サンドバックが大きく揺れました。これはなかなか良い感じですね。


「それだと相手と距離がひらけて次の攻撃に繋がらないデスヨー」

いい感じだと思ったのですが、ジャスミンさんが見るとちょっと違うみたいですね。悪くないけど実戦では使えない、体のバランスが崩れてダメージが入らないなどダメなところを言われてしまいました。見栄えだけはいいんですけどネーですって。


「構えはそのまま、もーすこし近くでしてください」

最初の立ち位置だと離れすぎていたようです。少し前に出ます、え?もっと前ですか?これはだいぶ近づいちゃいましたね。

「相手の手が届かない、自分の足が届くがいいところデスヨー。そしたら後ろの足の先を前の足のかかとに早く動かすしてから前の足を出しますヨ。ココじゃなくてココで蹴りますヨー」

説明しながら自ら動きを見せてくれて、かかとで太ももというよりヒザの高さを蹴ります。振りかぶるような動きがないし前足をさっと出すような感じだったので意外といけるんじゃないですか?


「これで相手の動きが止まりますネ。はい晴子サン、いきますヨー」

ジャスミンさんの言う通りに動きますが、思っていたよりも難しいですね。全体的に後ろ足からの力を前足に移動させるように心がけるといいらしいんですけど。


その後もタイミングがあったり合わなかったりしながら時間と回数を重ねていったときのことです。

「いい感じになりましたよネー、今度はミドルにいきますヨー。また見ててくださいネー」

場所を譲ってから見やすいところに移動していきます。


「後ろ足を寄せたら前足のヒザを胸につけるくらい上げて、そのまま踏むデスヨー。そして蹴るが終わたら元に戻しますネー」

ドスーンとサンドバックを蹴った音はびっくりするくらい迫力がありますね。


では私も。胸元までヒザを上げてそのままドーンって感じでサンドバックを蹴っていきます。胸元でヒザをいったん止めると蹴りやすいかもしれません。そんな風に何度かやっていくと


「あー、晴子サン、それは止めないで流れるように蹴るのがよろしいヨー」

何と、止めたらいけないんですか、それじゃあ蹴る方の足が大忙しですね。次からは流れるようにを意識しながら蹴り続けていきます。でも、流れを意識すると動きがギクシャクしてしまいますね。


「慌てないでいいですヨー。蹴り方が身につくまでゆくりでいいですヨー」

それは良かった。テンポを少し遅くしてミドルキックの練習を続けていきます。


「よくできました。晴子サン、今日はこのくらいで勘弁しましょう。毎日練習していけばきと大丈夫ですネ」

はい、ありがとうございましたとお礼をして今日の練習を終えたのでした。これがうまくいったら上田さんと渡辺さんに新技の報告ができそうです。



「却下」

その後練習を重ねてサンドバックから聞こえる音がいい感じになったところで上田さんと渡辺さんに見てもらったらこんな風に言われてしまいました。その結果が「却下」という素っ気ない答えです。ガーン、あんなに練習したのに、ドボチテドボチテ。


「晴子、ジャスミンから教わったそのサイドキック、特にローは相手のヒザを壊す恐れがあるからそのまま使うこと

に対して許可はできないわね。そうじゃなくても故障しやすい場所に、そんなものモロに食らったら大怪我で長期欠場ってことになるかもしれないわ。晴子は相手にケガをさせてもいいの?」

落ち込んでいる私になぜダメなのかをきちんと教えてくれました。私もケガをさせたくて技を教わったんじゃないので納得できます。ってかジャスミンさん!なんて危ないことを教えてくれたんですか!


「まあ、武術としてはいいんでしょうけどエンターテイメントとしては良くないわよね、特に見栄えが」

渡辺さんに話しかけると相槌を打って話してくれます。お二人がダメってことは封印しなくちゃいけないのか。そろそろ試合で使ってみようかなーってところまで身についたと思ってたんですけど、誰かをケガさせなくて逆に良かったのかもしれません。


「落ち込む気持ちもわかるわ。だから少しアレンジして使えるようにすればいいのよ。せっかく練習したんだもんね、もったいないわよ」

「例えばだけど、相手のローをブロックするのに使えないかしら?」

私の気持ちを考慮してくれてか、上田さんが励ましてくれて渡辺さんがアイデアを出してくれました。ローキックに合わせて私のローキックを出すことで威力を相殺できないかっていうんですけど、そこまでの技術と器用さがあればいいんですけど。試合の時はサンドバックと違って相手は動いてますからね。でも封印しないでいいなら練習のしがいがありますね。


「あと、ローもそうだけどミドルでもかかとで蹴るのは危ないわね。当たりどころが悪ければそれで試合が終わってしまうかもしれないわ」

「そうですね、みぞおちとか頭を下げた時にアゴ先にでも入ったら、下手すると一発K.Oってこともありますね。狙ったわけじゃないのに相手が倒れたら何かしらのアクシデントって思われてしまいますね」

ノックアウト勝利というのもありますが、それがボクシングで言うところのラッキーパンチ的な感じで急所に当たって勝利しても嬉しいような嬉しくないような。勝った本人もどうしたの?ってポカーンとして勝利に浸れなくなっちゃいそうですね。


「でも、完全に忘れろ!なんて言わないわよ。万が一、相手が相当のラフプレイやルールを無視してこっちを潰してやろうなんていう相手にはガツンと食らわしてもいいからね。甘く見てると後悔するぞっていうのを身をもって知らしめてあげなさーい」

おおう、上田さんのダークなサイドが垣間見えたような気がします。


「そうね、踏み込んで体重が乗った時にヒザを狙ってみると面白いことが起きるかもねっ」

かもねっていう渡辺さんの笑顔が逆に怖いんですけど。これは絶対に面白いことじゃない気がしますね。

YouTube ワンインチチャンネルを参考にしています

次話は10月5日を予定しています

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